見出し画像

球史に残る「歴史的V逸」

楽天イーグルスの球団創設初の優勝という形で幕を閉じた2024年のセ・パ交流戦。交流戦2位フィニッシュのソフトバンクに迫られながらも最終戦をものにし、見事優勝に輝きました。改めて楽天イーグルスの選手の皆さん、ファンの皆さんおめでとうございます。
ところで、長いプロ野球の歴史にはそんな栄光にあと一歩及ばず、悔しい結果に終わったチームやシーズンがいくつも存在します。
今回は2000年以降で、首位独走から優勝を逃してしまったチームを紹介していきます。


2008年 阪神タイガース

グラフ:no.05

最終成績:2位
82勝59敗3分 勝率.582

この年の阪神はシーズン前に広島から新井貴浩選手、オリックスから平野恵一選手を獲得する大型補強を行い、出だしから好調を維持します。開幕から7月までを連続で勝ち越し、7月9日には50勝に到達。2位の中日、巨人にシーズン最大の13ゲーム差をつけ独走します。7月22日には両リーグ最速で優勝マジック46を点灯させ、阪神の優勝は決定的なものとなりました。
ところが、8月に北京オリンピックが開幕すると流れが一変します。代表メンバーには阪神から矢野燿大捕手、新井貴浩選手、藤川球児投手が選ばれ、オリンピック期間中は戦列を抜けることになります。主力である彼らが抜けたチームは貧打と得点力不足に苦しむようになりました。急激に黒星が先行したチームは8月にはシーズン初となる月間負け越しを喫し、ウィリアムス、藤川、久保田投手からなる勝利の方程式JFKも酷使による疲労で痛打される場面が目立ちます。
阪神のチーム状態が悪い中、一転して巨人が好調な戦いを続け、シーズン終盤の9月11日から破竹の12連勝を記録するなど脅威の追い上げを見せます。1度同率首位に並んだものの、阪神は勝率で上回っていたためその後再び単独首位に立ちますが、もはや戦力層はボロボロでした。
9月3日、日刊スポーツは阪神の優勝を前祝いする内容の雑誌である「Vやねん!阪神タイガース」を発売。この時点で最大13あった巨人とのゲーム差は5にまで縮められていたため、阪神ファンからは不安の声が上がりました。
10月8日、阪神は東京ドームでの巨人戦に3-1で敗戦しシーズン初の首位陥落と同時に巨人にマジック2が点灯。2日後の10月10日に阪神は横浜に敗れ、巨人がヤクルトに勝利したため2年連続となる巨人の優勝が決定しました。このシーズンの逆転劇はのちに「メークレジェンド」「Vやねん」の名で知られるようになり、13ゲーム差の逆転優勝は現在でもセ・リーグ史上最大です。

2010年 読売ジャイアンツ

グラフ:Baseball freek

最終成績:3位
79勝64敗1分 勝率.552

原辰徳監督のもと前年までリーグ3連覇を成し遂げた巨人はこの年、開幕から好調を維持し、6月まで2位阪神に5ゲーム差をつけて首位を独走していました。しかし7月以降は投手陣が崩壊し、先発、リリーフ共に痛打される場面が目立つようになります。この間にも着実に白星を積み重ねる阪神と熾烈な優勝争いを繰り広げる中、前半戦で大きく差をつけていた中日がここに来て一気に調子を上げ、三つ巴の優勝争いが展開されるようになります。巨人は7月、8月を連続で負け越して3位に転落しますが9月に入ると持ち直し、引き分けを含む14勝11敗と勝ち越しに成功。しかし勝率わずか1厘差で上を行く阪神を越えられず、前半戦を首位で独走したものの終わってみれば3位で、優勝した中日とは、阪神と並びわずか1ゲーム差という悔しい結果に終わりました。

2011年 東京ヤクルトスワローズ

グラフ:Baseball freek

最終成績:2位
70勝59敗15分 勝率.543

前年は序盤は最下位に低迷するも徐々に盛り返し、4位ながら貯金4でシーズンを終えたヤクルトはこの年、前年高田繁監督の代行を務めた小川淳司監督が正式に就任し、新体制で望むシーズンでした。開幕3連敗でスタートダッシュには失敗したものの、その後は白星が先行します。4月17日から引き分けを挟んで10連勝と波に乗り始め、一気に首位に浮上します。その後も目立った連敗は交流戦中の4連敗だけであるなど好調を維持し続けたヤクルトは独走態勢のまま前半戦を終えます。ところが後半戦に入ると一転して黒星が先行するようになります。8月3日には後に優勝する中日に今シーズン最大の10ゲーム差をつけますが、直後の8月4日からは5連敗を喫します。9月に入ると、CS争いでダンゴ状態の渦中にいた中日が抜け出し、2位に躍り出ます。猛追する中日にじわじわと間を詰められたヤクルトは10月6日の試合に敗れ、ついに首位陥落。日程的に余裕はあったため、再度逆転するチャンスは残されていましたが10日からの首位中日との直接対決で4連敗を喫し万事休す。10月18日の横浜戦に勝利した中日の優勝が決定し、ヤクルトはシーズンを2位で終えることとなりました。

2016年 福岡ソフトバンクホークス

グラフ:Baseball freek

最終成績:2位
83勝54敗6分 勝率.606

後にホークス黄金時代を築き上げる工藤公康監督の2年目のシーズンとなった2016年。シーズン序盤こそ黒星が目立ったものの、チームは4月から徐々に復調します。4月9日から8連勝、5月1日から引き分けを挟み再び8連勝と大型連勝を重ね、首位を独走します。6月3日には両リーグ最速で貯金20に到達し、この頃には3位日本ハムにシーズン最大となる11.5ゲーム差をつけ独走します。この時点ですでに優勝は確実と見られており、プロ野球史上最速マジック点灯も囁かれていたソフトバンクでしたが、ここから状況が大きく変わります。日本ハムは6月19日から球団新記録となる15連勝を記録。1敗を挟み今度は5連勝と勢いに乗りはじめ、連勝中の7月3日にロッテを抜いて2位に浮上。その後再び入れ替わるも7月8日に再び2位に浮上すると首位ソフトバンクを猛追し始めます。そして8月25日、日本ハムは3位ロッテを下し、シーズン初の単独首位に躍り出ます。その後はソフトバンクと熾烈な優勝争いを繰り広げましたが、9月22日のソフトバンクとの直接対決に勝利し、日本ハムにマジック6が点灯。9月28日の対西武戦に勝利した日本ハムの4年ぶり7回目の優勝が決定したのでした。

2019年 福岡ソフトバンクホークス

グラフ:Baseball freek

最終成績:2位
76勝62敗5分 勝率.551

2017年、2018年と圧倒的な強さで2年連続の日本一に輝いたソフトバンクでしたが、前年の2018年はペナントレースで山賊打線を擁する西武ライオンズに力及ばず2位に終わり、悔しいシーズンとなりました。
2019年のソフトバンクは開幕前に明石、和田、岩嵜、石川、サファテといった主力選手が相次いで怪我に見舞われ、シーズンが心配されましたが、川原弘之選手、周東佑京選手などがオープン戦で結果を残すなど明るい話題もあった中で開幕を迎えます。
シーズンが開幕すると、前年リーグ王者の西武を3タテ。続くオリックスとのカードも勝ち越し、引き分けを挟んで開幕5連勝とスタートダッシュに成功します。その後は勝ったり負けたりを繰り返しながら徐々に貯金を増やし、4月終了時点で15勝10敗2分の首位と、上々の立ち上がりでした。5月2日から5連勝、貯金は9に増え、この辺りから首位独走を固め始めます。その後は何度か連敗を繰り返したことで再び首位争いのダンゴ状態にもつれ込みます。ソフトバンク、楽天、日本ハムと日替わりで首位のチームが入れ替わる中、6月23日から9連勝と波に乗り、ソフトバンクが抜け出します。7月9日の西武戦に勝利したことで貯金はシーズン最大の17、この時点で4位の西武とは8.5ゲーム差をつけていました。
ところが翌日10日から6連敗を喫し、その後も何度かの連敗を喫するなど失速。2位日本ハムに0.5ゲーム差まで詰められながらもなんとか首位を保っていました。
一方この頃になると西武が徐々に状態を上げ、2度の5連勝を記録するなどソフトバンクを猛追。8月終了時点でソフトバンクと同率首位にまで並びます。その後は再びソフトバンクが単独首位に立ち、9月12日にはソフトバンクにマジック12が点灯します。9月15日のロッテ戦で西武が勝利し、同日にソフトバンクが日本ハムに敗れたためついに首位陥落。シーズン最終版の9月24日、西武がロッテに勝利し、同日にソフトバンクが楽天に敗れたため西武の2年連続の優勝が決定しました。ペナントこそ敗れたソフトバンクでしたが、CSに入ると強さを見せ、ファイナルステージで西武、日本シリーズでは巨人を破り、3年連続の日本一を成し遂げることとなりました。

2021年 阪神タイガース

グラフ:Baseball freek

最終成績:2位
77勝56敗10分 勝率.579

2016年に就任した金本知憲監督が掲げた「超変革」を継承した矢野燿大監督が2019年に就任し、この年は矢野監督の3年目のシーズンとなりました。前年には2位と健闘したものの、優勝した巨人とは7.5ゲーム差を離される厳しい結果となりました。ドラフトでは現在の主力である佐藤輝明選手、中野拓夢選手などを獲得し、万全の状態で2021年シーズンが幕を開けました。
開幕カードとなったヤクルト戦を3タテ、続く広島とのカードは負け越したものの、次の中日戦から5カード連続勝ち越しと勢いに乗り、4月終了時点で20勝9敗の貯金11を記録します。その後は5割の戦いを演じますが、6月8日からは7連勝で首位を独走。この頃には貯金は最大となる21に達し、2位ヤクルトに7ゲーム差、3位巨人にも8ゲーム差をつけていました。しかし、6月半ばからは黒星が目立つようになり、ヤクルト、巨人に徐々に差を詰められるようになります。この頃に関西のローカル局では「あかん阪神優勝してまう」という阪神優勝を前祝いする特番を放送。しかし阪神ファンからは、このタイミングで放送することに、2008年「Vやねん」と同じように負けフラグになってしまうことを心配する声が上がっていました。6月19日、20日と連敗し、この巨人3連戦を負け越すと、次の中日とのカードは勝ち越したものの、25日からのDeNA戦では痛恨の3タテを食らってしまいます。7月にはシーズン初の月間負け越しを喫し、ついに8月29日、阪神は広島に敗れたことで首位陥落。勝率の関係で一気に3位まで転落します。その後ヤクルト、巨人が落ちたことで再び阪神が単独首位に立ちますが、9月に入ると2位ヤクルトが急激に白星を重ねるようになり、阪神は9月22日の中日戦に敗れ再び首位陥落。それでも阪神は意地を見せ、10月1日から5連勝を記録しヤクルトを猛追しますが、10月8日のヤクルトとの直接対決で敗れ、ヤクルトにマジック11が点灯。そんな中でも阪神は諦めることなく勝利をつないで最終戦、阪神が残り1試合に勝利すれば優勝が決まるというところまで持ち込みます。迎えた最終戦、阪神は中日相手に0-4で敗戦。同日にヤクルトがDeNAに勝利したためヤクルトの6年ぶり8度目の優勝と阪神の16年連続V逸が決定しました。阪神は優勝こそ逃したものの、佐藤、近本、大山、中野選手などが揃って結果を残し、2年後のアレに繋がることとなります。

今回は2000年以降で首位独走から優勝を逃したチームをまとめてみました。今年はパ・リーグにおいてソフトバンクがハイペースで貯金を重ね、7月7日の時点で両リーグ最速で50勝に到達しています。しかし、今回あげたチームのようにここから優勝を逃してしまう可能性もあるので、決して油断はせず、じっと戦況を見守っていきましょう。それでは今回はここまでにします。最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?