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FNCY, Shang-Chi, Little Simz, Baby Keem… | 新譜ピックアップ (2021.09)

こんにちは、リホです。

9月にリリースされた楽曲やアルバムから、気になったものをピックアップしてご紹介します。月次で記事を書いているので、過去分も読んでいただけると嬉しいです。

前月分はこちら。

FNCY - FNCY BY FNCY

G.RINA、鎮座DOPENESS、ZEN-LA-ROCKによるユニットFNCYがセカンドアルバム『FNCY BY FNCY』をリリースしました。80年代や90年代、特にニュー・ジャック・スウィングを感じつつも現代にアップデートされたサウンドが心地よく、今回も3人の掛け合いが癖になるアルバムでした。

特に1曲目「FU-TSU-U(NEW NORMAL)」はタイトルからもコロナの影響を受けた楽曲であることと推察しますが、少し感傷的ではありながらも希望を感じる曲でした。また、11曲目「あなたになりたい」は"ヒップホップ"に向けたラブソング。ヒップホップという音楽自体に向けたメッセージ・ソングは時折楽曲のテーマにされ、国内外で散見されます。アルバムがリリースされた頃、別の記事でも挙げた通り暗いニュースが続いていました。ヒップホップという音楽に対する世間の目が厳しくなっていたこともあって、特に響いたというか、でもやはりこの音楽が好きなのだと、リスナーとして再認識したのでした。

YouTubeで公開されている、YOU THE ROCKとのセッションも必見です。

NIKI,  DJ Snake & 88rising - Shang-Chi and The Legend of The Ten Rings: The Album

マーベル映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のアルバムがリリースされました。映画の評判も然ることながら、アルバムの参加アーティストの豪華さにも注目が集まりました。このアルバムは、ショーン・ミヤシロ率いる気鋭のレーベル、88risingがアジアのアーティストを紹介するというコンセプトで作られたものとのこと。日本からは星野源が参加していることも話題になりました。アルバム全体が、英語圏で活躍するアジア人、アジア系アメリカ人のエンパワーメントになっており、参加アーティストに関しては、映画のコンセプトとも通ずるベストな起用であったと思います。

印象的だったのが、2曲目、DPR LIVE、DPR IAN、peaceによる「Diamonds + And Pearls」。特にDPR LIVEはメロディックな楽曲の印象が強かったので、ロック調の力強いサウンドに驚きました。また、8曲目NIKIによる「Every Summertime」も心が弾むポップソングで、スーパーマーケットを舞台にしたMVも注目です。星野源のアルバム参加についてはラジオで言及がありましたが、敢えて日本語での参加を決意したのは粋だなと思いました。

Little Simz - Sometimes I Might Be Introvert

UKのラッパーLittle Simzによるアルバム『Sometimes I Might Be Introvert』がリリースされました。ときどき私は内向的かもしれない、という意味のタイトルですが、この頭文字を取ると彼女の愛称「SIMBI」になります。

9曲目「Standing Ovation」はオーケストラの壮大さと力強いラップが映える1曲。これまでのキャリアやラッパーとしての表現について感じさせます。15曲目「Point and Kill」や16曲目「Fear No Man」では、ナイジェリアにルーツをもつ彼女ならでは、アフロビーツ的なサウンドが雰囲気を変えます。一方、10曲目「I See You」や18曲目「How Did You Get Here」ではメロディアスで語るような曲調から、"Introvert"な部分も感じました。

いまやUKを代表するラッパーの一人となったLittle Simzは、人種問題など社会的なテーマを取り上げつつ、文学的なリリックやラップスキルの高さが人気のアーティストです。本作では、アーティストとしてのキャリアや、家庭の問題など、27歳の女性としての苦悩が見え隠れしていました。それは、様々なバックグラウンドを持つ人々が行き来するUK、ロンドンという都市の影響もあるのかもしれません。外交的(社会的)な面、内面的な面、両面が感じられるアルバムでした。

Moneybagg Yo, Lil Wayne & Ashanti – Wockesha Remix

MoneyBagg Yoが「Wockesha」のリミックスをシングルリリースしました。この楽曲は今年リリースしたアルバム『A Gangsta's Pain』に収録されていた曲ですが、今回、Lil WayneとAshantiを客演に迎えたリミックスバージョンが公開されました。

アルバムで聴いたときも興奮して鼻息が荒くなったのは記憶に新しいのですが、この楽曲はDeBargeの「Stay With Me」をサンプリングしています。「Stay With Me」はサンプリングネタとしては頻繁に使われており、The Notorious B.I.G.「One More Chance」や、R&BアーティストAshanti「Foolish」で使用されヒットしました。

そして今回のリミックスですが、通常バージョンのMVで出演していたLil WayneとAshantiが参加しています。Ashantiは「Foolish」の使いまわしではなく新しいバースが新鮮で聴いていて嬉しかったです。

Baby Keem - The Melodic Blue

カリフォルニアのラッパーBaby Keemが初のスタジオアルバム『The Melodic Blue』をリリースしました。20歳の彼はKendrick Lamarの会社"pgLang"に所属し、Kendrickとは師弟関係であり実の従兄弟にあたります。

先行リリースされた「family ties」では、ストリートの過酷な状況や家庭、楽曲へ込めた思いなどを語ります。後半はビートが変わりKendrickのヴァースとなり、業界やパンデミック・BLMを経た社会についてのリリックが目立ちました。驚いたのが16曲目の「16」。他の曲とは一転、R&Bサウンドが心地よい、アルバムの締めくくりとなる曲でした。

Baby Keemの高音の声とフローはどことなくKendrickを感じました。とはいえ、彼がKendrickと比べられたり、七光り的に捉えられるのをよく思っていないことはリリックからも明白です(一方のKendrickはKeemのことをかなり可愛がっている様子)。しかしやはり、Kendrickが出てくると存在感が違うな、と思ってしまうのが正直なところでした。まだ20歳のBaby Keem、これからの活躍が楽しみなアーティストの一人です。

その他の注目楽曲 / プレイリスト

その他、9月に気に入った楽曲をまとめています。こうして並べるとかなり豊作だったのでは?と思います。気になるものがあれば聴いてみてください。


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