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冬の花と目が合うとき

もうそろそろ冬ですね。
今日買いものに出たとき、ちらほら冬の花を見かけました。小さかったり、白かったり、鮮やかなピンクだったり、見た目はさまざまですが、みんな一様にしずかな感じがします。

夏の花って、元気ですよね。
目が合うとこんにちはー!って感じがします。こちらもつられてこんにちはー!ってなるというか。なにか弾力のあるボールとかをギュウギュウしてポーンとどこか行ったのを追いかけるような、ケタケタ笑うような、そんなハツラツさがあります。

それに対して冬の花って、目が合うとハッとします。
あ、居たんだ、というか。それは怖いとか、びっくりするという感じではないのですが、なんだか気安く声はかけられないな、ってなります。こんにちはーはなんか違うな、どうも…って会釈程度かな、というか。でも変によそよそしいとか、高貴なお方というのとは、またちょっと違う気がします。
うまく言えないのですが、冬の花を見ると、水に一滴落ちた色水がちいさく渦をつくって消えていくところを、お互い何もせずただじっと見ているような、そんな心地になります。ほぐれて、混ざって、見えなくなる。そのひととおりを眺めたあと、ようやく顔をあげて、なにを言おう、いや別に無理やりなにかを言わなきゃいけない訳じゃないけども、と、そっと相手を見つめるような、そんな静けさが、冬の花と目が合ったときにはあるような気がします。

それでいうと夏の花は、一緒になって色水で遊ぶ感覚に近いのかもしれません。笑ったり、声をかけたり、そういうことがすごく自由でおおらかで、ケラケラ笑って楽しむ感じというか。

どちらがいいとかわるいとかではないし、不思議とどちらにおいても、お互いのなにかしらを通い合わせているような心地よさがあります。でも毎回ちょっと驚くんですよね。夏のはじめには「いやもうあなた元気すぎない?」って若干引くし、冬のはじめには「あっ…なんかすみません…」ってちょっとひるむし。

ここまで書いてハッと、ああそうか、わたしはいま冬のはじまりにいるのか、と気がつきました。冬のはじまり。そうか。寒いもんな。
もう11月だということはちゃんと知っているし、毎日の天気予報でも体感でも寒くなったことは分かっている。でももっとちゃんと、しっとりと染み込むように季節の移ろいを教えてくれるものが、わたしにとっては花なのかもしれません。

もうそろそろ冬ですね。


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