バチ衿大作戦

先日ようやっと片貝木綿を仕上げて、次の仕立てに取り掛かる前に、一旦直しものを片付けていこうと取り組む今日この頃。
八掛にしようと思っている銘仙の着物を解いて洗ったり、広衿になっている普段着をバチ衿に直したり、取れかかっている袖を付け直したり、着物によっては身幅や身丈も大改修したいなあなどなど。仕立て待ちの反物も山積みなら、直し待ちの着物も山積みなのである。

3、4年前にリサイクルで買ったウール着物もそのひとつ。明らかに大島紬(どちらかというと村山大島かな)を意識したカーテン的な素材感で、非常に私好みの色柄をしている。ウールだから洗えて、目立つ何もなく、リサイクルで一番ネックであるサイズ問題もクリアしている掘り出し物なのだが、いかんせん広衿仕立てなのだ。
おそらくこの着物、ちょっとしたよそ行き用だったんじゃなかろうかと思う。例えば子供の参観日とか。

ともかく、私にとってこの広衿の着物は、キレイめなのに洗える上に暖かいという長所を兼ね備えながら、「広衿である」というただ一点において着にくいために活躍の場がなかったのである。
本格的な冬を目前に、数年越しにやっと直しに着手したのであった。

広衿の着物をバチ衿に直す上で、一番ネックになるのが「衿裏を取ろうとして解くと衿ごと取れてしまうという点だと思う。着物を縫う上で、大体の部分は直線が縫えればまあなんとか形にはできるのだが、衿だけは違う。直線に断った布をうまく組み合わせて衿のカーブを作るのだ。綺麗に仕上げるには熟練の技が必要だし、そもそもあの形にするだけでもどうすればいいのか素人にはわかりにくい。
自分で着物を縫ったことはあるけれど、衿の部分ではいつも苦労する。縫う以前に、まち針で止める時点でどうすればシワが出ないかを探りながらやらなければならない。
逆に言えば、衿さえ付いてしまえばあとは本ぐけの嵐が待っているだけだ。いや、これも素人にはしんどい作業ではあるのだけれども。とりあえず時間と手間さえかけて、ひと針ずつ進めればなんとかなる点において、衿付けよりもよっぽど「なんとかなる」工程だ。

そんなわけで、どうしても「衿付けをしたくない」ので、当初の予定では衿裏の生地をぎりぎりで切って、取りきれなかった生地は諦めてそのままくけつけてしまおうと思っていた。できるだけ衿裏の生地を残したくなかったから、縫い糸を切らないぎりぎりを攻めて切り落としたのだ。
するとどうだろう、切り口から布がほつれて、縫い目を傷つけることなく衿裏の生地が全て綺麗に外せるではないか!
バチ衿にしたい着物を直すハードルが相当下がったし、この発見で私のやる気も俄然出てくるというものだ。
ぎりぎりを攻めすぎると時々縫い糸も切ってしまう。しかし、衿が繋がっている状態ならば、切ってしまった部分を縫い直すのも簡単だ。もちろん、表地だけは切らないように、細心の注意を払わねばならないが。

現在、手元には衿裏だけが外れた着物が2枚、直されるのを待っている。一度解いてしまうと、直し終わるまで着ることはできないのだから、今後放置するようなことがないようにしていかねばならない。

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