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プチトマト乱獲事件 奥様困惑

70代男性 C型肝炎症から肝硬変に。その過程で肝性脳症の症状が出てきた患者様。亡くなられた時、奥様とその時の話に花が咲きました。

奥様「主人は喜んでましたけど、あの時は焦りましたねwww」
私「周りの協力があったからできましたけど、本当にねwww」
色々ありましたが、結果的にはいい思いになったお話。
だけど、今やったら始末書ものかもしれない(汗)

いわゆる亭主関白(意味あってるか?)で奥様は旦那様の一歩後ろをついていくような関係性だったと記憶しています。個室で入院されており、
奥様はほぼ毎日昼から夕方にかけてお見舞いに来られていました。

肝性脳症とは、簡単に言いますとたんぱく質食べたら意識がおかしくなります。(ものすごいズボラ説明)
アンモニアがうんたらかんたらと言った説明は専門家に任せましょう!!

この方の場合、外泊で「お寿司食べてきた」「ウナギ食べてきた」と帰ってこられた翌日はほぼ意識障害が発生。
魚やウナギのたんぱく質が要因で脳内にアンモニアどばぁ!
意識障害ドカァン!と低下。運動療法の阻害要因となっておりました。

どんな意識障害かと申しますと、

・ものすごくこだわりが強くなる
・頑固
・こちらの提案を聴いてくれない

など、まあまあ収集がつかなくなりました(笑)
全てのC型肝炎の方がこのような経過をたどられるかは定かではありませんが、いわゆる「70代駄々っ子」が完成される状態でした!
その影響を一番にうけていたのが奥様でした。
奥様はいつも謝られてばかりでしたね・・・たしか。

そんな入院生活も初夏に突入。

当時、病院周囲のお庭には、プチトマトなど野菜が植わっていました。
併設の介護施設職員による栽培で、施設入所の方に食べてもらうために作られていたようです。
※ちゃんと事前に収穫の許可は前もってもらってました。

日頃からADL機能低下予防のために運動支援を行っていた私は、
患者様に運動意欲を保ってもらうために、準備万端の上で
車椅子で庭まで移動し歩行器などを用いて歩行練習を行っていました。

当時は酸素吸入しながらだった・・・かなぁ、ボンベを車椅子の後ろに装着していたように思います。(記憶少し曖昧ですが)
鼻に酸素チューブつけながら庭を運動がてらに散策していました。

その時は奥様も一緒に付き添っていただいておりました。
普段は、景色を堪能しながら歩行練習。
ところが、その日は前日にたんぱく質を多めに摂取しておられたのか、
肝性脳症DAYでした(笑)

患者様「あそこにある、ほら!先生あそこに行って!」

私「え?トマト?」

患者様「そうそう。昔は植えてたから」

奥様「昔は畑に植えてましてね。お父さん、そこに行きたいの?」

患者様「そうや。あれ収穫できるやろ」

奥様「お父さん、あれは他所の人のだから」

患者様「うるさい。先生、あそこにいきましょう」

私「(奥様に)大丈夫ですよ。前もって収穫しても大丈夫なように許可はもらっていますので(2~3個くらいは大丈夫やろう)。お医者さんも野菜には制限をかけておられませんので(むしろ野菜食ってくれと言ってたw)」


心配顔の奥様のことを気にも留めず、患者様は車椅子からおもむろに立ち上がり、垣根をふらふらしながら跨がれプチトマトまで一直線。

酸素チューブが延長限界まで引っ張られようが気にもしないww
やわらかい土の上だろうが、草だろうが気にもされずどんどん中に入る姿にさすがに私もハラハラ。難なくトマトまで到着。

ひとつ取って口の中に。

患者様「旨いなぁ・・・土の香りがする。」

私「よかったですね。取れたて新鮮ですしね。」と、持参の水で洗いながら奥様にもおひとつ。

2人で嬉しそうにされていたのもつかの間、

プチプチプチプチ・・・

奥様「ちょっと、お父さんそれ青い実、あと取りすぎて。」

患者様「持ってかえるんや。うるさいな黙っとれ!」

赤い実、緑の実と種類問わずに乱獲w
さすがにまずいと思い制止しましたが、10個程度はとられたかな。

なんとか患者様を説得し場をおさめ、病室まで帰りました。
(持ち帰ったトマトはその後おいしく食べられた様子)

亡くなられた患者様を思い出しながら少し奥様とその話をした思い出。

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