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本と映画と、すてきないくつか

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今日も心をとらえて離さない本と映画と、それからいくつかのステキなものたち
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記事一覧

想像もできない<現実>と向き合えるのか〜「正欲」

この映画の彼女は、もうガッキーなんかじゃない。女優・新垣結衣なのだ。 ラスト数分の、稲垣…

さとしとさ
1か月前
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蜜柑を巡る、「ない」ことと「ある」ことの物語をふたつほど

みかん…ミカン…蜜柑。 蜜柑がおいしい季節です。 そんな蜜柑がもっと美味しくなる(かもし…

さとしとさ
3か月前
5

味方の敵は敵で、敵の敵は味方で、敵の味方は敵となるとき、ここはどこ?となる

マキタスポーツ&プチ鹿島&サンキュータツオのおっさん3人がどーでもいい(けれど、案外深い…

さとしとさ
4か月前
6

その場でしか「観られない劇」とその場にいたら「観られない劇」が同時に存在したらあ…

気にはなっていたけれどこれまで足を運んだことがなかった、覚王山の揚輝荘。(名古屋) 園内…

さとしとさ
4か月前
5

「ドキュメント72時間」が好きな人におすすめチョン・セラン「フィフティ・ピープル」

NHKの「ドキュメント72時間」が好きで欠かさず見ています。 たまたま同じ場所の、たまたまの3…

さとしとさ
4か月前
7

どうせ世界が終わるなら<それ>を楽しみにすればいい。「太宰かよ!」と思わず叫んで…

宇宙人の襲来? 惑星の衝突? 核戦争の予感? 大規模自然災害? はたまた悪の集団の暗躍? こ…

さとしとさ
4か月前
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踊れないぼくたちはいつだって居場所を探している

結婚式に出席した<踊れないガール>は、祝いの最後に繰り広げられるカチャーシーの引力に逆らえない。 顔をひきつらせ、手首をぐにゃぐにゃさせながら、見えないよう人の後ろに隠れ、踊る。 踊る文化が根付く沖縄で生まれ育ってしまったガールは、それでも踊る。 下手くそだと思われてるんだなと、頭をよぎるが、曲が終わるまで、踊りという名の手足の運動を続ける。 曲が終わり、祝いの席は拍手に包まれ、みなが席につく。 踊れないガールは、背中を小さく丸めながら、人の流れに沿って歩く。 そして、こ

驚くような当たり前のほうがずっとずっと長かった

あれって清少納言だっけ紫式部だっけと、ときおり作者名に迷子になってしまう「源氏物語」だけ…

さとしとさ
5か月前
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こんなときだから〜自粛警察に送る一冊:伊坂幸太郎「ルックスライク(短編集「アイネ…

理不尽なクレームや言いがかりをする人に対して、真正面から批判したり是正を促しても埒が明か…

さとしとさ
6か月前
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「あまちゃん」再放送を見終わり紅白出場シーンを見返した10月のはじまりの日

北野武映画で「あの夏、いちばん静かな海」というのがあります。聾唖カップルの話で結構好きで…

さとしとさ
7か月前
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発狂の日常化へと進むのか。村田沙耶香「生命式」が描くあり得る未来

「正常は発狂の一種。この世で唯一許される発狂を正常と呼ぶ」 まさにこのセリフに貫かれた一…

さとしとさ
7か月前
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三代目市川猿之助(二代目猿翁)の汗を受け止めたあの日々

見上げた暗闇に輪郭を淡くにじませたそれが浮かんでいる。 七色の尾以外、純白に包まれたそれ…

さとしとさ
7か月前
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壮絶なる小説体験の数日間。村上龍「半島を出よ」

北朝鮮コマンド9名が福岡に上陸し、パ・リーグ開幕戦を迎えた福岡ドームを占拠。 金正日独裁体…

さとしとさ
7か月前
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「愛と幻想のファシズム」から30年強、今こそ日本列島を揺さぶる物語を。

どこからか聞こえてくる、読め読めもう一度読み返せ!の声に急き立てられ上下巻1000ページの渦に巻き込まれてしまった、村上龍の「愛と幻想のファシズム」 経済や金融に対する知識がてんでないから、この物語のなかで世界を崩壊させていく「経済」の恐ろしさを半分も理解できていないけれど、その圧倒的で、有無をいわせず突き進んでいく想像力には腰が砕かれます。 1987年のこの作品の前が「テニスボーイの憂鬱」という、テニスとセックスに明け暮れる土地成金の話だし、 その後は「69 sixty