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ワードローブの森の中から(18)「日本風俗史のなかの新しいマスク文化」

 マスクがワードローブのなかの一角を占める時代になったのは、2020年4月からだと思います。新型コロ◯の世界パンデミックがその原因なのは明らかで、私たちの風俗史の年表にはしっかり刻んでおきたいものです。
 それ以前は、季節性インフルエンザの蔓延期(晩秋から翌年春?)か、主に春の花粉症の時期に、白いマスクする人がちらりほらりと目につき、飛行機や電車のなかで白いマスクをするのが一般的だったかと思います。
 マスクの色については、韓国では黒いマスクが売り出されていて、日本で黒いマスク姿の人を見ると、韓国に遊びに行ってきたのかな?という感じでとらえていましたが、その比率はとても低くて、マスクはあくまで白色であるべきという既成概念があったように思います。
 さて、2020年春に第1波があり、薬局の店頭にはマスクを買うための行列ができ、テレビなどではマスク不足を煽っていたかと思います。そして、アベノマスクという代物が各家庭の郵便ポストに届き、新型コロ◯関連の大きな話題(というか、なんだかなぁといった感じ)となったのが昨日のことのようです。マスクの供給が見えなかったこともあり、薬局以外の店舗でもマスクが売られ始めましたが、馬鹿高い価格で売られていました。先行き見えない小規模商店としては苦肉の策だったのでしょうが、それから数年たっても「おの店は、高値でマスクを売っていた店だな」とラベリングされたままです。人の苦しみで商売をしてはいけないものです。
 このころ、私は、手芸チェーン店のユザワヤに行くのを楽しみにしていました。マスクがないなら、行列などせず自分で作れば良いという発想でした。近くのユザワヤに行くと、マスクの作り方という簡易なチラシが無料で配布されていました。安価のハギレを何種類も買い、今でも30枚以上の手製マスクが、ワードローブに眠っています。ちなみに、写真のものはシャレで作ったタイガー・マスクです。
 やがて、中国の工場が本格稼働し始めたのか、中国製の安価なマスクが市場で売り出され始め、Amazonや楽天などでも気軽に購入することが可能とたりました。さらに立体的なデザインの不織布で、色も何種類も選べるようになり、マスクは白色であるべきだ感が一気に払拭されました。この安価な中国製マスクだけでなく、adidas NIKEといったスポーツ・グッズ・メーカー等、業界を超えて多様なマスクが世に現れ、2020年春までの、白色マスクという既成概念は完全に崩壊しました。テレビに映るスポーツ選手たちがadidasやNIKEなどのお洒落なマスク姿も、既成概念崩壊の一躍を担ったのだと思います。
 そして、いま、2022年9月。私のワードローブに、いつも5〜6種類の色目の立体的なデザインの不織布マスクをストックしています。身につける洋服やその日の気分に合わせ、ベージュやカーキや紺などを選んでつけるのが楽しみにもなってきました。
 マスク文化を大きく変えた新型コロ◯が終息したとしても、マスクを選ぶ楽しみは残るのだろうと思われ、2020年春は、私たちの日本の風俗史で、ひとつの大きなファッション・スタイルの変化が始まった時だと書き残しておきたいと思います。良かれ悪しかれ。中嶋雷太

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