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本に愛される人になりたい(43) W.ベンヤミン著「パサージュ論」

 本書は1935年が初出の、フランス、パリのパサージュ、つまりアーケード商店街を、断片的に記述した論考です。ただ、これまでは、書誌学的に検討されたり、社会哲学的に検討されたりして、シンプルにテクストとして読まれ発言されたふしがあまりありません。飯を食うネタとして、学者や知識人が彼の論考について語ってきたように思っています。
 ベンヤミンという哲学者は、たとえば「複製芸術」の論考等、現代社会でのメディアを射る視座などを、私たちに与えてくれましたが、多くの先人たちが、彼が書き残した作品を、既成のスタイルで取り上げてしまい、高尚にあげ奉ってきたかと思います。
 さて、本書は、近代社会の物品への憧憬とは何かを語ったのだろうと推察します。現代では、スマホという世界で、情報にきゃーきゃーとする喜びなのかもしれませんね。テレビで紹介された街中華に何十分も並ぶような感覚かもしれません。
 何年か前にパリのパサージュをふらふら歩きましたが、ベンヤミンが感じたカケラもありませんでした。1930年代のパサージュ、つまりアーケード街は、いまはスマホの世界になったのかもしれません。
 とはいえ、それはそれで馬鹿でも良いとも思います。それが、人間のサガで、近代に発生したというのは、やはり間違いではないかと、つらつら考えています。
 商品の物化は、人間が私欲に走った時代から綿々と続いているずです。現代社会=悪、という図式を横に置き、あるがままを記述してみるべきかと思います。
 こんなことを書くと嫌う方もいるでしょうが、本書を読みつつ、身近にある(バーチャルな)パサージュ(アーケード)を、ゆっくり検証し、断片的に記述してみたいと願っています。中嶋雷太

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