私の好きな映画のシーン(12)「ダイ・ハード1」
真夏にクリスマス・ソングの話で恐縮です。
"Oh, the weather outside is frightful But the fire is so delightful Since we've no place to go Let it snow, let it snow, let it snow"
ヴォーン・モンロー唄う"Let it snow"が、私のクリスマス・ソングのトップ10に入ったのは、1989年2月に日本公開された「ダイ・ハード1」を観てからです。
ロサンゼルス市内にあるセンチュリー・シティに聳えるナカトミ・ビルで繰り広げられる、このアクション映画は、ブルース・ウィリスという個性豊かな俳優が演じるアイリッシュ系アメリカ人の魂が満ち溢れ、あっという間にエンディングとなります。
その最後のシーン。
犯人は亡くなり、ナカトミ・ビルにパトカーや救急車が集まるなか、主人公のジョーン・マクレーンが離婚寸前の妻・ホリーと抱き合います。そのとき、倒れ伏していた犯人グループの一人が銃口を構え……。トラウマで拳銃の引き金を引くことを躊躇していたLAPDの黒人警察官が、勇気を振り絞り相手を倒します。
そして、エンディング。
クリスマスイブの夜に、“Let it snow"が流れてきます。
シンプルなヒーローものですが、人物描写が深く鋭い作品ですが、2時間強を一気に見せるスピード感、そしてワクワク感はただただ脱帽です。さらに、「これでもか」という、このエンディングで、私は「ダイ・ハード」の虜になってしまいました。
話は変わりますが、私がロサンゼルス駐在で最初に住んだのが、このナカトミ・ビルとされたフォックス・ビルの、通り(アベニュー・オブ・ザ・スターズ)を挟んだ真向かいで、日常生活にナカトミ・ビルがありました。そして、12月、通勤の車の中では、もちろん“Let it snow"を流していました。
ジャンル問わず洋邦様々な映画が好きですが、このエンディングに向けて疾走するような「ダイ・ハード」のような映画をいつか作ってみたいと考えています。ただ、この映画にあるカラリとした感触は、ロサンゼルスという土地ならではなのかもしれません。かいた汗が、すぐに蒸発するような、あの感触です。湿度の高いアクション映画ではないものを、目指したいものです。
因みに、ロサンゼルス駐在中、ナカトミ・ビルとされたフォックス・ビルで、20世紀フォックスと打ち合わせをすることが数多くあり、一階の受付からエレベーターへの導線を毎回確認しては、「そうそう、ここで…」と笑みを零していました。中嶋雷太
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