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プレ・プロダクション・ノオト(12)

著作権上の映画著作物は総合芸術、つまり演技や音楽、さまざまな著作物を統合したような著作物だ。ざっくり言うとですが。さて、映画の音楽のお話。物心ついたときには週に何本もの映画をテレビで楽しんでいた。物語の面白さも魅惑的だったが、やはり素晴らしい映画には素晴らしい音楽がつきものだった。つまりサントラというやつで、父母もサントラが好きで、家には何枚もの映画音楽のLPレコードがあった。私の映画原体験には、この映画音楽は欠かせない。例えば『ゴッド・ファーザー』。ニノ・ロータのあの曲が流れるだけで、映画のなかの数々のシーンが蘇ってくる。『荒野の七人』、『ロッキー』などから『八つ墓村』……おそらく何百何千もの映画音楽が私の脳内に収まっていると思う。ところがここ数年。何故か脳内には新たな映画音楽がないような気がしている。音楽でなくとも音でも良い。例えば『ゴッド・ファーザー』。庭のトマト畑でドン・コルレオーネが倒れるシーン。孫の声、シチリア島の乾燥した大地のような土塊に広がる背景音。そうした音の話だが、シーンは蘇るが音が蘇らない場合が、洋邦関わらず最近多々ある。私がエグゼクティブ・プロデューサーとして製作した小編映画『Kay』では、鯨岡監督が様々な音のマジックを取り入れている。深層心理に届くような彼のマジックには身内ではあるが心底驚いた。さて、どのような音なのかは、劇場にて楽しんだ頂ければと願っている。

中嶋雷太 https://note.com/righta

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