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本に愛される人になりたい(76) 「Hawaiian Shirt Design」

 この本に出会ったのは、私がロサンゼルスのウェスト・ハリウッドに住んでいたころでした。自宅近くに大きな古本屋があり、本好きの私は暇があれば顔を出していて、たまたま手に取ったのがこの本でした。
 その当時から開襟シャツが好きで、今現在のワードローブには何十着もの開襟シャツが納まっています。アロハシャツ、キューバシャツ…等々、気に入ったデザインの開襟シャツがあれば揃えています。
 アロハシャツのベースになったのは、ヨーロッパからハワイにやって来た船員たちが着用していたパラカという開襟シャツのようで、日本移民が日本から持ってきた着物を再利用してパラカ風に仕立て直したと言われており、ホノルルにあったムサシヤ・ショーテン・リミテッドという日本人が経営する服飾店が、ホノルル・アドバタイザー紙で「アロハシャツ」という文字がある広告を1935年6月28日に掲出しているので、このころにはアロハシャツというものが一般化していたのかと思います。
 さて、私の書棚には何冊かのアロハシャツ本があるのですが、ここに写真を投稿した「Hawaiian Shirt Design」は1950年代を中心にビンテージものの写真を数多く掲載しており、ページをめくるごとに、その古き良きアロハシャツに魅入ってしまい、自分勝手にそれぞれのアロハシャツを着ていたであろう人物像なども想像し、気づけば数時間経ってしまうこともしばしばです。
 ワイキキあたりを散歩していると、けっこう派手なアロハシャツを着込んだ観光客が目につきますが、現地に住んでいる知人たちが着るアロハシャツは意外と地味で、私の好みも地味なアロハシャツです。
 「Hawaiian Shirt Design」では、結構派手なものも掲載されていて、おそらく派手好きな若者が着用していたのではないかと思われます。1961年に劇場公開された映画「ブルー・ハワイ」の主演であるエルビス・プレスリーのアロハシャツを調べてみると、現在から考えれば、そんなに派手なものではなく、オーソドックスな色と柄ではないかと思われます。
 ま、似合っていれば、それで良いわけで、「Hawaiian Shirt Design」に掲載されたアロハシャツ一枚一枚を通して、それを着こなした人物像を想像するのは、やはり楽しいものです。そして、数十年後、私が遺したアロハシャツから、どのような人物像を人は描くのかと考えると、これはまた面白いものです。
 蘊蓄を記憶して喜ぶ骨董品オタクではない私にとり、「Hawaiian Shirt Design」はちょっとしたタイムマシーンで、時空を遡り1950年代のハワイに身を置く楽しみを与えてくれます。中嶋雷太

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