見出し画像

ワードローブの森の中から(23)「冬のジャケット」

 木枯らし一号の話題が巷に流れてくると、ワードローブに眠っていたジャケットを取り出し、数日部屋干しします。静かに流れる部屋の空気に触れると、湿度を帯び眠っていた羊毛の毛先が少しずつ立ち上がり、息をしはじめます。やがて、遠目にみてもふんわりしたフォルムが現れます。息をはじめた羊毛の細かな毛が、部屋の光を薄く纏っているのが分かります。
 さて、冬のジャケットは、コーデュロイとハリスツィードに限りますが、長年Papasのとロンドンの古着屋で買ったのが双璧として、ワードローブに鎮座しています。何着か鎮座されています。
 20代から30代は、厚手のツイードのパンツを合わせていましたが、40代を過ぎると、コーデュロイ・パンツかデニムを合わせるようになりました。
 ツイードのパンツで合わせるのが定番中の定番だと思いますが、定番を崩したい本能が遅まきながら目覚めたようです。
 さらに、ジャケットの下にはベストを着るようにもなりました。ベストにはまったのはRomeo Gigliのベストに出会ってからで、それ以来、自宅近くの下北沢の古着屋さんをあちこち覗いては「良いのがないかなぁ」と探しているうちに、気づけば10着ほどになりました。最近は分かりませんが、意外と古着のベストは格安で良いものがあります。その下には、以前このnoteでも取り上げたブルックス・ブラザーズのボタンダウンの白シャツで、靴はコールハンとナイキのコラボの革靴です。冬が深まった夜、南青山のバーにでかけるときはバーバリーのケンジントン・ヘリテージ・トレンチコートを羽織ります。冬のはじまりの儀式になっているようです。
 今年もジャケットの部屋干しが終わりました。あとは、木枯らし一号を待つばかりです。中嶋雷太

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?