見出し画像

プロダクション・ノオト(11)

2021年の劇場公開邦画本数は490本でした(一般社団法人日本映画製作者連盟)。21世紀に入り2019年689本が最多でしたが新型コロナ禍により本数は激減したようです。さて、冒頭から劇場公開本数の話をした理由は、映画館というメディアはまだまだ生きていると思うからです。全国に3648のスクリーンがあって、そこに観客の皆さんがチケットを買い劇場用映画を楽しんでいます。オンデマンド・ビジネス発の映画も散見されるようになりましたが、多くの識者が勘違いしていると思うのは「映画」というメディアがあたかも存在していると無意識に思われていることです。劇場用映画が上映される「映画館」というメディアが存在しているのを無視されているようにも見えます。テレビやディスプレイ、スマートフォンなどのメディアがあって、それぞれに異なるビジネス形態があります。劇場用映画はどうでしょう。観客は事前に映画情報を探し、映画館に行き、劇場用映画を楽しみ、映画館の帰途に映画の話をしたりして……さらに、二度三度と他のメディアで見たり、何十年もかけて感動したシーンを思い出し楽しんだりもしています。そのすべてが「映画館」というメディア体験だと思っています。ディズニーランド、観光旅行、身近なグルメなどに似たメディア体験なのかもしれません。この「映画館」というメディア体験に必須なのが、やはり劇場用映画です。一人でも多くの観客に集まってもらい、映画のなかの喜怒哀楽を楽しんでもらい、そして長い時間をかけて何度もその映画を咀嚼し楽しんでもらう。映画を制作し配給するとき、絶えず、「映画館」というメディアを考えていたいと思っています。中嶋雷太(プロデュースした小編映画『Kay』/『終点は海』は4月9日より、下北沢トリウッドにて日本凱旋劇場初公開となります。https://kaytosea.studio.site/)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?