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本に愛される人になりたい(9)「番外・春は菜の花」

 今回の「本に愛される人になりたい」は、番外編として拙書「春は菜の花」をとりあげさせて頂きます。いま、下北沢トリウッドにてアンコール上映中の小編映画『Kay』の原作となった作品です。(7月1日まで上映されています)
 番組プロデューサーとして、立ち上げから勤務したWOWOW在籍時の2018年夏に、兼業として本作をデジタル発行しました。小説ではなく、私が製作したい映画を物語化しようと本格的に思い立ったのは、さらに遡り2010年ごろのことでした。振り返れば十代のころから何作品ものロング・シノプシスを書き溜めてきたのもあり、「どうしたものか…」と考えていたところ、元月刊誌編集長だった旧知の方に相談すると、「雷太さん、雷太さんのは小説ではない。物語だ。大人の為の物語を書けば?」と背中を押してもらい、「とりあえず、デジタル出版すれば?」と追加助言ももらいました。この「大人の為の物語」については別途語らねばなりませんので、ここでは割愛させて頂きます。デジタル出版についての発想は元々ありませんでしたが、よくよく考えると著作権発効を明確にできますし、世界じゅうで読んでもらえるということもあり、2018年夏に、本作品を発行することになりました。
 2018年夏、本作品の出版記念パーティーを催し、そこに顔を出してくれたのが内藤プロデューサーで、先ずは小編を製作しようという話になり、私がエグゼクティブ・プロデューサーとして立ち、鯨岡弘識監督とともに脚本を練り、2019年夏に小編映画『Kay』の撮影となりました。そして編集作業も進んだ2019年12月。M.A.作業(音入れ)をし、2020年春に劇場公開というときに、世の中は完全停止しました。
 ただ、2020年に、海外の映画祭で30以上ものアワードを受賞してくれたのは、一縷の希望の光となりました。
 そして、我慢を重ね、2022年4月、下北沢トリウッドで三週間の劇場公開を無事終え、6月にアンコール上映となり、このnoteを綴っているいまはアンコール上映中で、7月1日までです。その後は、7月16日から名古屋シネマテークでの上映となります。
 映画の宣伝めいて恐縮ですが、一つのオリジナルのロング・シノプシスから、一つの物語が生まれ、さらに一つのオリジナル映画が生まれ、海外の映画祭で数多くのアワードを受賞し、世界パンデミックの影響を大きく受けたものの、東京から名古屋、そして全国へと動きだせたことは、幸せです。
 さて、長々と綴りましたが、本作品「春は菜の花」は、凸凹した人生を生きた男(父・太一)と、三人の別れた妻、そして三人の異母兄弟の物語です。女性目線から忌み嫌われても仕方ない父ですが、そこにこそ、本来あるがままのヒトがいると思っています。
 ヒーローでもダーク・ヒーローでもない主人公の物語に触れた読者の多くは違和感だらけになるはずです。けれど、その違和感の淵を覗くことで、すぐには消えぬ生きる松明が見つけられると思っています。
 2018年夏に書き終え、早くも4年が経過しました。いま、私は読者としてようやく本作品と向き合えるようになっています。善悪二元論を超えた、曖昧性のなかにある物語を紡げたのではと考えています。中嶋雷太(Amazon PODで発売中ですので、ぜひお読みください)

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