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私の好きな映画のシーン(2)

多分だが、映画については斜に構えたくはないなと思っています。学生時代にハリウッド映画が好きだと言うと小馬鹿にされる風潮があって、大学・大学院と六年間、私が映画好きであることを隠していました。京都市中の大学から太秦の実家に戻ると、私は昔からの映画好きキッズとなり、自分で見たい/作りたい映画を夢想しては、ロングシノプシスのようなものを書き殴っていました。数十年経過して、「春は菜の花」などのデジタル出版を始め、小編映画『Kay』の制作を始めましたが、振り返ると学生時代にはスマホもパソコンもなく、インターネットもなく、当然YouTubeといった公表舞台もなかったから、自慰行為に近い夢想でしかありませんでした。さて、今回は『ローマの休日』のラストシーンです。実はずのない恋が破れ、謁見が終わり、グレゴリー・ペック演じるアメリカ人新聞記者ジョー・ブラッドレーが、ポケットに手を入れて謁見場から去りゆくシーンです。大理石の床に刻まれる彼の革靴の音が、謁見場に響き、Finとなります。大量の説明言葉が演技のような現在ですが、グレゴリー・ペックの立ち姿、瞳の動きやふとしたセリフ、そして革靴の足音という演技は忘れがたいものです。そして、監督のウィリアム・ワイラーに惚れ込みました。音楽というよりも、作品すべてに存在する音の設計を初めて理解した瞬間だったのかもしれません。話は変りますが、『ローマの休日』は1954年4月に日本公開されました。私の両親がデートで観たと話していましたが、観客すべてが戦争体験者だったと考えると、私にとっての『ローマの休日』とは異なるものを両親は感じ取っていたのだろうと思います。中嶋雷太

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