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国家単位の行政の教育に対する影響力

 国家単位の行政が教育に与える影響は大きい。義務教育である小、中学校のみならず、幼児教育や高校、大学の無償化の議論などがなされており、立法や行政と切り離して考えることはできない。

 その中でも、幼児教育と専門職の教育は国の規制による供給の制限がなされていることが、大きな問題となる。国際政治学者の三浦瑠麗博士は著書(1)で、保育事業、医者や獣医などの専門職の教育機関ともに国による認可制であり、そのことがスムーズな供給を阻み、既得権益層の利益を守ることにつながると述べている。例えば、児童待機問題は保育士の給料に原因があるのではなく、そもそも国の認可の条件が厳しいため新しく参入することがむずかしく、結果、保育園に行けない児童が多くなるのである。また、獣医学部や医学部を新設するためには多くの政治的労力と時間を払う必要があり、獣医や医師が必要な時にすぐに養成できないという問題がある。

 これらの問題を解決するために、博士は、官僚が制御する部分をできるだけ必要最低限にとどめることが効果的であるとしている。すべてを神の見えざる手(市場原理)に任せる必要はないが、規制を通じて対応するべき問題と市場を通じて対応するべき問題は分けるべきである。保育であれば、新規参入障壁を下げて供給を十分にして市場原理にさらす一方で、国は教育が妥当に行われているかどうか品質管理を行うようにする。専門職も同様に、その資格取得のための教育機関の数を制限せず、必要な場所、人に必要な技能がいきわたるようにする一方で、国が資格審査を執り行う。そのことにより、政治的な労力や時間の削減、そして何より必要な人々に必要なサービスがいきわたることになる。

 一方で、規制をまだ受けていない新しい教育サービスも登場している。オンラインサロンやアプリによる家庭教師と生徒のマッチングサービスなどは、その代表的なものだろう。私見として、このようなサービスは規制をあまり受けていないことから、厳しい市場原理に淘汰され、高品質で比較的安価なものの割合が増えると思う。これらの教育サービスに触れる機会は開かれているため、実質的な教育格差は縮まるのではないかと考えている。しかしながら、規制を受けていないが故に、資格として(あるいはブランドとして)の機能を持つのは難しいだろう。いくら市場原理にさらされても、一定の割合で粗悪なサービスが混じる可能性はあるからだ。そのため、幼児教育や専門職の教育といった確実性が必要な分野には向かないが、それ以外であればどんどん活用していった方がよいと思う。

1.三浦瑠麗 あなたに伝えたい政治の話 p171-191

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