シン・ウルトラマンを見た。
タイトル通りシン・ウルトラマンを見てきたのでその感想を書きます。
ネタバレもあります。
自分は幼少の頃に細切れに初代ウルトラマンを見ていたクチで、いわゆるマニアやフリークと言われる方ほどに語れる知識も愛もありませんし、本編に載せられた様々な情報を深掘りできる知識もないので、あくまでも一観客としての雑多な感想となります。
・総観
全体の感想としては、所々面白く、所々そうでもなく、一部でイライラし、詰まるところ可もなく不可もなく、と言った具合でした。
・ストーリーについて
情報量も多く、正直一度見ただけではハッキリしない部分もあり何とも言えないですが、個人的には2時間にまとめるには少し窮屈な構成だったかなと感じています。
これは仕方のない部分で、創作に当たって変数が多すぎるためとも言えます。例えばシン・ゴジラであれば、
「マッドサイエンティストが何らかの意図で作ったと思われる生命体が野に放たれ、それに対して日本人(そして人類)がどう対処するのか」
という非常にシンプルな目的と筋で構成して作られていたため、余計な枝葉に時間や観客の関心を奪われなかったのですが、本作では
「突如日本に多発する謎の生物達と、政府の対応と政治、各国・各機関との外交や駆け引き、登場人物達の人物描写、交流、ウルトラマンの人類に対する思い入れ構築、そこにやってくる外惑星の知的生物と、それぞれの思惑による駆け引き」
が描かれることになります。映画というのは基本的に2時間前後の枠にいかに話をうまく収めるかという点が重要なので、要素が多くなるとまとめることもそれだけ難しくなってきます。
まあ、分からなくはないです、ゴジラは一作目の映画をベースにして作っていますが、本作は初代ウルトラマンのテレビシリーズ全体を元にして作っています。ファンは当然怪獣や星人やエピソードをいっぱい見たいし、作り手も原作のファンならそりゃ色々出したいでしょう。
ただ自分はそれがために話が四散してしまったように感じました。まあこれは、難しいところです。
・自分ならどうするか?
出来合いの物に対してケチをつけるのは簡単です。ゼロから作り上げていく過程で「思ってたんと違う」的な乖離が生じていくのが創作なので、特に関わる人や金や規模が大きくなるほど難しくなる点を鑑みると、俺ならこうする的な話は後出しにも程がある訳ですが、ケチつけっ放しもどうかと思うので、自分であればどうするかを考えると。
恐らく人間側の政治的な話や人物描写を必要最低限に絞るかな、と思います。ウルトラマンと星人との駆け引きを最大化して、その道具として怪獣を出す。人間関係は政府の意思決定の中心人物とか、ヒロインとか、その辺ぐらいで良いのかな、と。
なので仮面ライダー的な(仮面ライダーまともに見ないですが)少し色調の暗いシリアスでタイトな感じのイメージです。
・映像
CGについてはリアルすぎてもどうかと思うし、安っぽすぎてもガッカリするし、と言うところで丁度良い案配だったのではと思います。
怪獣、星人、兵器の造形も自分は好きです。メフィラスだいぶシュッとしてるけど。
ただ、冒頭の文字責めは、劇場の前の方で見ていた自分には少々辛かったです……。
・音楽
気に障ることがなかったと言うことは良かったと言うことだと思います。
オリジナルの効果音や音楽はやっぱり素晴らしいなと思います。特にゼットンの効果音は普通に日常生活の中で思い出したりしますし、あれを作った人はほんとに凄い。ウルトラマンが回転する際の効果音とかも好きです。
米津玄師の歌も普通に良いです。自分は彼の歌を沢山聴くわけではないので、そのせいか彼の特徴的な歌い方・声・曲調によって大体どの曲も似たような感じに聞こえるわけですが、それでも何かそれぞれの作品にフィットしているように感じるんですね。不思議です。
・個人的に気になった部分
SF的な話としてマルチバースとか平行宇宙とかが出てきました。恐らく本作で言及されているのはインフレーション理論などによって連続的、多発的に発生する別の宇宙の事を指しているのかなと。量子論的な「確率の数だけ枝分かれする宇宙」とか、膨張宇宙における事象の地平線の向こうに広がる宇宙ではなさそうです。
平行宇宙に物理的に干渉することは不可能とされていますが、高次元を通して干渉する、みたいな部分は想像のしがいのある面白いところですね。
・イライラした部分
シン・ゴジラではワクワクの対象だった政治的な話の部分が、本作では少しイライラの対象になってしまいました。基本的に日本政府は右往左往するだけですし、総理は歩くか座るかして内容のほぼ無い話するだけでストーリーの進行にあまり意味をもたらしません。そこは現実の政治を皮肉っている面もあるし、シリアスな展開の中の緩和でもあるけれど、途中から段々不要なカットに見えてきてしまったんです。
シン・ゴジラではスッキリした筋立ての中で政府関係者がガッツリ政治や外交をやるわけですが、先にも述べたようにシン・ウルトラマンでは色々な要素が立て込んでいるので、本当にただ右往左往しているだけです。
だから自分は、この部分は禍特対含めいっそ大幅に削って良かったのかなと思いました。
・とは言え……
ネガティブな意見も書きましたが、楽しめなかったわけではないです。積極的に探っているわけではないですが、目に入ってくる意見は「シン・ウルトラマン良かった」というのが多いですし、肯定的な見方をしている人が多いのかなと。
自分のその時の心身の状態が影響したのか、他人と自分とで何か感じる部分、嗜好が違っていたのかよく分かりませんが。
樋口真嗣監督作品は過去にあまり良い思いをしたことがなかったので、そういう意味でも今回は良かった部類です。
ただまあ、うーん、自分としては中途半端だった、と言う思いに終始します。
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