今日のアウトプット(240909)#非認知能力

おはこんばんちは.

いよいよ今週水曜に一次試験.緊張...


この記事では,非認知(社会情緒的)コンピテンス(スキル,能力)についてまとめます.
・非認知能力とは?
・なぜ,今,非認知能力が注目されているか?
・非認知能力を発達させるには?(特にアタッチメントとの関わり)
が抑えられたらと思います.

いきなり,情緒だの,情動だの,非認知だの,スキルだのコンピテンスだの能力だのいろんなワードが乱立していますが,それだけ明確な定義がしにくいものなのです.それぞれ意味は微妙に異なりますが,今回は「非認知能力」で統一して扱います.

言葉の違い

・スキル(skill):測定可能性,変容可能性,学習可能性を持つ
遠藤(2017)によると
・能力(ability):ある特定測度,課題に対して個人が発揮しうる「最大値」(どれだけできる人なのか」を問われる)
・特性(trait):その個人が日常全般にわたってみせる「典型値」「平均値」(どのような性質の人なのか」が問われる
・コンピテンス(competence):(発達心理学においては)環境に対する適応能力を指す概念.人の潜在能力と,環境に能動的に働きかけて自らの「有能さ」を追求しようとする動機づけを一体として捉える力動的な概念.(「公認心理師・臨床心理士の勉強会」:https://public-psychologist.systems/04-学習及び言語/公認心理師%E3%80%802018-22/#
・情動(emotion):感情の一種で,一過性のもの.快情動と不快情動がある.気分(mood)は中期的にゆるやかに持続する感情.

非認知能力とは

 非認知能力は一言で説明すると知識や思考やIQなどの認知的スキル以外のスキル.もっと詳しく定義すると以下になります.

「非認知的スキル,ソフトスキル,性格スキルなどとしても知られ,目標の達成,他者との協働,感情のコントロールなどに関するスキル」である.

OECD,2015

(a)一貫した思考・感情・行動のパターンに発現し,(b)学校教育またはインフォーマルな学習によって発達させることができ,(c)個人の一生を通じて社会・経済的成果に重要な影響を与えるような個人の能力」と定義することができる

ベネッセ・OECD共同研究レポート,2015

いろいろな要素が含まれていてつかみどころがない気もしますが,ざっとまとめると,OECDがカテゴライズした,「目標の達成」「他者との協働」「情動の制御」で説明できます.ざっくり言うと,自己(自分とうまく付き合う)と社会性(他者とうまく付き合う)に関わるスキルといったところでしょうか.

3つのカテゴリーは具体的にはこんなものを指します.
「目標の達成」:忍耐力,自己抑制,目標への情熱,グリット
「他者との協働」:社交性,敬意,思いやり,協調性
「情動の制御」:自尊心,楽観性,自信,自己肯定感

今,非認知能力がアツい!

 正確には,非認知能力は最近ポッと出たものではなくその基盤というか深く関連したもの自体は昔から(1980年代ごろから社会的スキルと情動的スキルが関連づけられて論じられるようになった)扱われていたのですが,,
なぜ,最近また非認知能力が注目されているのでしょう?

秋田(2019)では,主に2つその理由が挙げられています.
(1)AIの発展による対人能力の需要の高まり.
 AIに代替されることが困難な仕事として,「複雑な社会的関係性が必要となる高次な思考判断を要する仕事」ができる資質能力が求められているから.
他者と協働して新たな知識や価値を創造するためには対人能力が必要となります.また,難しい課題達成のためには,認知的なスキルだけでなく粘り強さなどの社会情動的スキルが重要になります.

(2)社会の多様性の増大
 移民の増加等に伴って,様々な場所において民族的・文化的・言語的な多様性が国際的に見て増大している.

このように時代の変化に伴う社会的要請が非認知能力の注目を高めたと言えます.

非認知能力の発達(アタッチメントの視点から)

では,非認知能力はどのように発達するのでしょうか.今回は,遠藤(2019)をもとにアタッチメントの視点から,「アタッチメントが非認知的な心の発達をどう支え促すか?」に焦点を当ててまとめます.

(1)アタッチメントが自他信頼性(基本的信頼感)を形成に寄与する
 助けて欲しい時に,ちゃんと助けてもらえたという経験 →信頼感
 アタッチメントが,最も根源的なところで自分や他人を信じられる力を形成に通ずるということ.子どもは危機に接し(予期され)恐れや不安の感情を経験したときに,特定の他者から無条件に,一貫して確実に護ってもらうという経験を通して,そうしてくれる他者やそうしてもらえる自分自身に対し,信頼の感覚を獲得することができる.その延長線上で,養育者以外の人全般に対しても同じような信頼感を獲得する.(アタッチメント→内的作業モデル)

(2)アタッチメントは「自律性」の発達に寄与する
 ひとりでいられる能力を育む
 安定したアタッチメントが形成されると,養育者を安全基地として子どもは外界に積極的に出て,自律的な探索活動ができる.
 また,恐れや不安の感情を経験したときに,自ら能動的に泣くなどシグナルを発して,養育者などと近接関係を築くことは,他者の力を引き出し,自らの負の感情を抜け出すことができたという成功体験となる.成功体験を積み重ねると自分は,他者を動かし,状況を変えることができるという自信が持てるようになる.→自己効力感,自己肯定感
 しかし,子どもからのシグナルに対する養育者の敏感性や応答性が低かったら無力感を形成してしまうことも.

(3)アタッチメントは「心の理解能力」「共感性」の発達に寄与する
 養育者等のミラーリングと共感性
 例えば,子どもが何か痛がっている時,自信の痛みのように感じ,痛みの表情を浮かべ「痛かったねぇ」などと子どもの心や身体で起きているであろうことを代弁するというのはよく行われている.このような養育者などによる子どもの感情への共感・同調や映し出し(ミラーリング)は,子どもの自他の心を的確に理解する能力や共感性の発達に寄与する.これが心の理論や自他の心的状態の理解の発達に正の関連性があることも明らかになっている.
 近年,ミラーニューロン(心の理解や共感性の脳内基盤)の発達に養育者などによる子どもの感情の共感・同調,映し出しが深く関与していると仮定する向きもある.

これらから,アタッチメントが,自己と社会性の基底にある心の土台を形成していると言えるでしょう.通常の環境の中で生育している子どもが当たり前に経験するものの中に,非認知能力の基礎となる重要な意味が含まれているということです.


非認知能力を高めるには(一般的に)

先ほどは,アタッチメントの視座を絡めて非認知能力がどのように発達しうるかまとめましたが,もっと一般的に非認知能力がどのように高められるか列挙します.これは,浜野(2019)に基づいたものです.
(1)アタッチメントの形成が重要
(2)幼児期において安定した人間関係の中で,子どもが活動に熱中できるように環境を整え,内発的動機づけや自己効力感を高めることが効果的
(3)学童期以降には,メンタリング,サービスラーニング(教室で学ばれた学問的な知識・技能を社会に活かす!みたいな教育),野外活動,社会感情学習(SEL:主に感情知性を育み実践するためのプロセス)などの介入プログラムが有効.
以上に加え,学校における,特別活動や大人自身がまず非認知能力を高めるといったことも挙げられていました.

引用,参照
・秋田喜代美. (2019). 社会情動的スキルの重視とその育ちを支える幼児期の重要性. これから求められる非認知能力とは?, 8.
・遠藤利彦. (2019). アタッチメント:「非認知」 的な心の発達を支え促すもの. これから求められる非認知能力とは?, 21.
・浜野隆. (2019). 国際比較でみる日本の 「非認知能力」 の課題: PISA2018 「読解力低下」 問題を手がかりに. 日本教材文化研究財団研究紀要/日本教材文化研究財団 編, (49), 42-51.
・遠藤利彦. (2017). 非認知的 (社会情緒的) 能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する調査報告書 (平成 27 年度プロジェクト研究報告書) (Doctoral dissertation, National Institute for Educational Policy Research).

#2024.09.09最終閲覧

余談ですが,私が高校生の頃に始業式かなんかで先生がグリット(やり抜く力)についての話をされていたことを思い出しました.その後TEDとかも見た気がする.

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