見出し画像

お見合いパーティーのスベる演出に立ち向かう

どうやったってスベる

 もう何年も前の話ですが、夏のはじめ頃に、ジャケットにネクタイは不要の、涼しげな格好で参加可能なお見合いパーティーというのに参加したことがありました。「資金も無ければ自信も無い」と思っていた当時の僕にとっては覚悟のいる挑戦でした。

 そこはたしか男女各12名ずつで、最初、4人掛けのテーブルの奥側に女性が横並びで2人、向かいの通路側に男性2人という配置ではじまりました。

 パーティーがはじまる前に、司会者が、

「今回ご参加いただいた皆様へプレゼントです。お手元にある紙袋に、皆様がさらに素敵になれる、あるものが入っております。どうぞ身に着けて下さい!」

 と言い出したんです。

 中身は何が入っていたか。

 女性側は、花の形をしたプラスチックの髪飾り。まあ、これは良いでしょう。

 問題は男性側。なんと、この手のやつ。↓

 なんで俺ら、はじまる前から女性たちの前でスベらなアカンねん!これは一体、運営側は何を考えているのか!?

 かといって、「下らん。」と無視するのも感じが悪いので、我々は仕方なく、とりあえず着用して「はい、こんな感じで。」と言って早々に外しました。

単純な笑い

 しかし、隣にいた、度の強そうなメガネをかけた男性は違いました。

 自分のメガネを外し、ヒゲメガネを着けた瞬間、

「何も見えない…。」

 とつぶやきながらも、お見合いがはじまって隣のテーブルに移動する瞬間まで、ヒゲメガネを着け続けていました。

 立ち上がった瞬間かすかによろめき、

「あっ…。」

 と言って、慌てて自分のメガネに替えていました。見えないわりには忘れとったんかい、と。

 何という適切でベタなリアクション。僕が女性なら、彼の番号を書いていたかもしれません。

 だけど惜しむらくは、「何も見えない…。」と言った時の声が小さすぎて女性たちには聞こえておらず、よろめいた時も向かいの女性たちは女性同士で会話をしていて、彼のことを見ていなかったということです。

 彼は会話は不得手らしく、話はあまり弾んでいないように見えました。

 あの人、もったいないことしたな。お相手の顔も何も見えないというリスクを冒してでも、ヒゲメガネをかけたまま、

「あれ、すみません。メガネの度が合ってなくて…。視力落ちたかな。」

 と終始ボケ続ける気概を示せたなら、このパーティーは彼が支配したかも知れないのに。

 パーティー終了時、司会者は言いました。

「プレゼントはどうぞ、そのままお持ち帰り下さい。」

 人が立ち去っていった会場にはヒゲメガネが散乱していました。