省く、省みる 【重職心得箇条 14条】

こんまりさんの大ベストセラー「人生がときめく片づけの魔法」が出版され、2010年の流行語にノミネートした「断捨離」。

断捨離ブームは根強く残り、ここ数年はさらに進化して「ミニマリスト」という新しい概念も生まれました。

かつては断捨離というと「モノ」にフォーカスされていましたが、徐々に広い範囲(家事・仕事・人間関係など)で使われるようになってきたように感じます。

そこで今回のテーマ、「省く 省みる」。

先日読んだ遠藤功氏著「コロナ後に生き残る会社 食える仕事 稼げる働き方」と重ねて14条を読んでみました。

政事と云へば、拵へ事繕ひ事をする様にのみなるなり。何事も自然の顕れたる儘にて参るを実政と云ふべし。役人の仕組事皆虚政なり。老臣など此風を始むべからず。大抵常事は成るべき丈は簡易にすべし。手数を省く事肝要なり。(重職心得箇条 第十四条)
(訳文)必要なものと不要なものを見分けてシンプルに
政治といえば、でっちあげや言いつくろうことばかりが政治の主な仕事のようになってしまっている。何事も作為を加えず、自然の流れにあわせて、嘘偽りのない真心からの政治を心がけないといけない。役人が考えつくことは、中身がなく現実の役に立たないものばかりである。昔からいて重要な仕事を担っている人は、形だけ取り繕う前例をつくってはいけない。たいていの物事は、なるべくシンプルにするべきである。余計な物を削ることが大切である。

■ コロナショックで明らかになったこと

▷3つの蒸発
移動の蒸発 → 需要の蒸発 → 雇用の蒸発
遠藤氏はこのようなたとえをしていて、日本でも15兆円の消費が喪失すると言われ、失業者は222万人にのぼるという試算も出ているそうです。

▷会社という組織には「不要不急のもの」だらけ
 ・行く必要のない不要な通勤、出張
 ・結論の出ない不要な会議
 ・意味や価値のない不要な業務
 ・だらだらとオフィスに居続けるだけの不要な残業 などなど

▷「レス」の時代に
 ・ペーパレス、はんこレス
 ・通勤レス:会社に行かない
 ・出張レス:意味のない出張はしない
 ・残業レス:不要な残業はしない
 ・対面レス:非対面で仕事を済ませる

(出典:遠藤功氏著「コロナ後に生き残る会社 食える仕事 稼げる働き方

こちらの本を読み、今回のコロナショックで、なくてもできることがたくさん浮き彫りになってきたと改めて感じました。

デジタル化、オンライン化によって不要なものをレス(なくす、減らす)ことが、今後の企業の課題になってくるかと思います。

■ 「省」とは・・・?

この14条のキーワード「省」。
「省」には「省く」と「省みる」、ふたつの意味があります。

▷省く
必要なものと不要なものを見分ける。シンプルに。

▷省みる
吾日に吾が身を三省す(論語より)
曾子曰く、一日に次の3つの事がらについて何度も反省している。
・他人から受けた相談に真心を込めて応じたか。
・友人との約束を違えていないか。
・十分な復習をすることなく、弟子たちに教えを授けていないか。

「手数を省くこと肝要なり」とありますが、ただ排他的にバッサバッサ切っていくのではなく、「省く」「省みる」ふたつの考え方が必要になってきます。

■ 重職(幹部社員)にとっての「手数を省くこと肝要なり」とは・・・?

省く、省みるに加え、部下を啓蒙するという要素も欠かせないと考えます。

▷省く
いかに不要不急なものまみれだったかを認識する
何が必要な業務で、何が不要な業務なのかを仕分けし、不要な業務はやめることを決める。
×無駄な会議をオンラインでやる
×やらなくていいことを効率化しようとする

▷省みる
今までの業務フローや業務を省みる
自分を省みる(自分の言動、部下に対する発言や対応)

▷啓蒙する
コロナ前へ戻りたがる一定数の社員に現実を見させる
いかに激動の世の中であるか、会社が生き残るには、どこでも食えるプロ人材とは...など

コロナ前であればいずれオンライン化できればいいね...と悠長なことを言っていられましたが、本当に今乗り遅れると死活問題にかかわってきます。

企業も仕事も働き方も変革を求められている今、根性だけで乗り切ろう...みたいな考えだと茹でガエル状態になってしまいます。

■ 言志録にあてはめてみると...

1. 省く
31条.実事と閑事 106条.無用の用 その二
不要な仕事を必要と思ってやっているからいつまでたっても忙しい。
やらないことを決めてシンプルに考える。

2.省みる
43条. 昨非と今過
現在の非を改めることが大切であって、過去を悔いても改まるものではない。現在の非を改めてこそ意味がある。

激動の時代であるからこそ、本当に必要なものを見極め、変革しながら突き進むしか生き残る道はないと、改めて感じました。

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