電子ピアノ アップライトピアノ グランドピアノ

ずっと書きたかったことがある。

『電子ピアノとアップライトピアノとグランドピアノについて』。

その違い。比較。どれを選べばいいのか。どのメーカーがいいのか。
ピアノ初心者親子の永遠のテーマである。
でもピアノの先生に聞いてもネットで調べてもなんだかわかったようなわからんようなモヤっとした感じ。

決して安い買い物ではないのに、何が良いのかあまり理解しないまま、勧められたものを買う。
日本じゅうで繰り返される光景ではないだろうか。

だからここで、日本じゅうのこのモヤモヤを晴らすべく、書こうと思う。

前置きとして、私はピアノが弾けない。音楽を語るには底辺の平民だ。
クラシックを知らない大人が、軽い気持ちでピアノ教室のドアをたたき、自分の子供にピアノを習わせてみて初めてぶつかる難問『電子ピアノじゃいけないの?』にぶち当たった、そういうジャンルの人間だ。

多くのピアノの先生が『電子ピアノじゃダメよ』と言う。
でもピアノ教室に通って初めてクラシックに触れるジャンルの人間には、その意味がわからない。

「指が自在に動いてなにか曲を弾けるようになればいいな」
くらいにしか考えないからだ。

「それじゃダメなのよ。電子ピアノじゃ響きがわからないから」

響き、とはなんぞや。
電子ピアノの音色も美しいじゃないか。
しかもグランドピアノタッチで消音機能や自動演奏付。
色々な楽器の音色もビートも鳴らせるぞ。

電子ピアノが家にあるうちは、そう思っていた。

しかしピアノの先生が「お願いだから、中古の一番安いのでいいからアップライトを買って、ホントお願い」とあまりに言うので、渋々と本当に超古くて激安のアップライトピアノを我が家へお迎えした。
7年前のことだ。

買ってみてわかったのは、本体は激安だが搬入費がやたら高いこと。
何百キロもあるので、専門のタスキを使用して2人で運ばねばならないからだ。

調律も1万数千円かかった。
しかもできれば最低1年に1度は調律をやれ、と言う。
電子ピアノのように優れた消音機能はない。消音ペダルを踏むとやや音が曇って小さくなるくらいだった。

「オンボロだしデカイし金かかるなあ」
これが最初の正直な感想だ。

しかし娘はめっちゃ喜んだ。
「ピアノの先生のとこのピアノみたいに色んな音が出る」
と言う。

色んな音?
電子ピアノとどう違うのか。
最初はわからなかった。

しかし娘のレッスンや練習を親として毎日毎日見続け聴き続けていくうちに、変化が起きた。
なんと、自分の耳に新しい回路が出来ていくのを感じたのだ。

電子ピアノももちろん、弱く弾くと小さな音が出て、強く弾くと大きな音が出る。
しかし叩こうが鍵盤の芯の部分を当てるように弾こうが、電子ピアノの仕組みが所詮電気スイッチの入り切りでしかないので、小さいか大きいかの差しか出せない。

ところがアップライトピアノの仕組みはハンマーで鉄線を叩いて音が鳴る仕組みなので基本的に打楽器と同じなのだ。

アフリカンな太鼓を叩いたことがあるだろうか?
あれを思い出して欲しい。
太鼓を床に置いたまま叩くと音が曇る。
膝や脇に抱えて叩くと音が澄み渡る。
太鼓の膜の中心を叩くと良い音が鳴る。
太鼓の膜の端っこを叩くと悪い音になる。

まさにそれと同じ音の違いがあるのだ。

電子ピアノからアップライトピアノに変えると、耳の中に新しい回路がだんだんとできてきて、音の響きがわかるようになる。

特に小指。
きちんと指を立てて指先で弾くのと、指が寝てしまってチョップするように叩いて弾くのとでは響きが全然違う!と耳がわかるようになる。

鍵盤の芯を指先で弾くと非常に澄んだ綺麗な音が鳴る。
反対に、蜘蛛のような手で叩くように弾くと、ピアノ君はそれなりの音しか出してくれない。

そしてアップライトピアノで何年か弾いていくと、今度は耳の回路が、「グランドピアノの音が出せないなあ」という悩みを教えてくれるようになったのだ。

7年前は電子ピアノとアップライトとグランドの違いがわからなかったのに、だ。

アップライトピアノを卒業するタイミングは、自然に耳が教えてくれる。

ピアノを叩くように弾く人と、芯を鳴らせて弾く人の音の違いもだんだんとわかってくる。
すると、コンクールで出場者の演奏チェックをして審査員の結果と照らし合わせていく面白さも出てくる。

そうなるともういつのまにか「電子ピアノでは響きを表現したり練習できないから限界があるなあ」と理解していることに気づく。

その頃には既にヤマハとカワイとスタインウェイとベーゼンドルファーなんていうピアノの音色の違いがちょっとだけだがわかるようになっている。

そうなって初めて、どのピアノを買おうかな♪
という土俵に自分が立っていることがわかるのだ。

新品のアップライトピアノやグランドピアノを買うのは、この土俵入りした時点がベストタイミングだ。
土俵入りした親子は、ピアノやクラシックが人生の友である事を感じている。
もう誰かに聞かなくても、ワクワクとカタログを見たりお店で試弾しまくって、納得いくピアノを買えることだろう。

もしそうはならずに部活や受験などでピアノから遠ざかってしまっていたら、ここで激安ピアノを処分すればいい。新品を買わなくてよかったじゃないか、となる。

我が家の場合は、娘も私もスタインウェイの音が一番好きで、しかしながら母子家庭で1000万のピアノなんてとても買える身分ではないので、同じスタインウェイ社が出すボストンというお安いシリーズの一番小さなグランドピアノを、土下座して頼み込んで去年おババに買ってもらった。
毎月1万円コツコツと果てしない道のりでおババに返済中である。
返済期間10年はゆうにかかるのではないだろうか。
借家の狭いリビングにグランドピアノを占領されて生活しているが、とても幸せなピアノ人生だ。

耳の回路がグランドピアノの豊かな響きを求めるからだと思う。

ふりかえると『響き』がいつのまにかわかるようになっていた。
ピアノに出会えてよかった。
クラシックに出会えてよかった。

そう思う親子が増えますように。


#電子ピアノとアップライトピアノとグランドピアノ
#ピアノの選び方 #ピアノ






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株式会社かごしまんま代表