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水面に揺れる風景

少しの晴れ間が池の水面を煌めかせ旭岳を映し出した。

肌寒い気温の中にも小さな野花が咲いていて、けなげな力強さを受け取りながらトレッキングコースを歩く。

相棒が池の前で立ち止まり「風が強いな」と呟いた。水面のさざなみが旭岳を揺らす。私は並んでそっと手を繋ぐ。
目の前のことで沈んだり浮かれたり。それは水面に映る私だ。

同じ景色を見ているはずでも毎年感じ方や視点が違うことで、自分が以前の自分と少し変化していることに気付く。だから毎年ここの きりりとした涼風にあたりたくなる。

「来年も来ような」と隣から声が聞こえた。
手の温もりとその一言で、明日からの入院生活をきっと乗り越えられる。

風が雲を運び水面の景色を変えていく。流れる風を感じながら私はそっと池を覗き込み、そして山を見上げる。
水面から消えても旭岳は揺るぐことなく私を見ていた。

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