見出し画像

「エースの証明」とは何だろうかー有原航平開幕から3連敗ー金子弌大、吉川光夫との数奇な運命ー

ファイターズ2020 7/3  13試合目 札幌ドーム F×sbh  1対4

初回5番渡邊諒の先制打で1得点。先発有原航平は、球威もコントロールも上々、5回まで無失点に抑えていた。ホークスの開幕投手東浜巨は、調子がいいのか悪いのかよくわからない四球を連発し、塁上には走者がいっぱい。だが、ファイターズは相変わらずチャンスはピンチの繰り返しで一向に追加点が取れない。

5回裏、何度目かのチャンスをしっかり逃してしまった。嫌〜〜な空気が漂ってくる。こうやって与えられた流れを勝手に逃していると野球の神様が相手に回ってしまうんだぞ〜。

案の定、有原航平は、先頭バッターを出しバントで送られ、3番柳田悠岐は、あっさりとタイムリーヒットで、たちまち同点。ここまでは、野球神の采配、流れ的にも相手バッターの実力的にもしょうがねーなーとしても。次の4番バレンティンにさらにいかにもあっさりと勝ち越し2ランを打たれてしまうところに、わたしが有原くんを「わたしたちのエース」と呼び切れない所以がある。

大事なところで踏ん張り切れない。本人も重々わかってるのはわかってますが。頭に血が上って周りが見えなくなり、自分本意の投球をしてしまう。去年はベンチで寄り添う田中賢介さんが、気分転換、頭を冷やす役割を担い、なだめすかしながら1年を過ごし最多勝に導いていたが、もう賢介さんはいない。

そうなのだ。有原航平は、昨年15勝。プロ5年目にして最多勝を獲得。額面上は、彼こそがファイターズのエースであり、だからこそ開幕投手にも選ばれた。結果が出ないことに一番苦しい思いをしてるのは、当人だろうし、勝たせてやれない野手だって、きっと大きに反省してるだろう。

そうして「勝たなければ」「勝たせてあげなくちゃ」と双方で緊張状態になり一向にうまくいかない負け続ける…というパターンもよくあることなのである(…遠い昔、武田勝という左のエースがおってのお…5試合連続で0点に抑えながら味方も0点のままって記録を作ったことがあってのお…)

だけどエースと呼ばれし者には、そんな言い訳は許されないーとエースの立場になった投手は、思い込まされるのかもしれないがー有原くんが真のエースになるために必要なものは、なんだろうか。

自己完結からの解放ーわたしはやっぱり「周りを見るゆとり」だと思うけどね。余裕が欲しい。なにしろ有原キンングダムー国王なわけだしさ。国王の周りにはたくさんの臣下や民がいて王様と一緒に国を作っていくわけでさ。一人で野球やってるんじゃないんだよ。もっと視野を広く、相手チームを含めて、他者の動きや感情に興味関心を持ち、球場中に共感する力を持って、マウンドに立っていて欲しいです(上沢直之には、そういう力があると思います)

今日のこの日のゲーム。1対4のまま有原くんは、8回まで投げ切った。球数は未だ101。勝てないまでもできれば9回投げ切って欲しいところだったが、9回表のマウンドにいたのは金子弌大。数試合失点が続いていたが、二人のバッターを淡々と抑え…たところで、最後にさらに出てきたのは、左腕の吉川光夫。電光の投球で3アウト目を取った。わたしはなんだかとっても不思議な奇妙な気持ちになる。

2014年札幌ドーム開幕戦ーファイターズのエースとしてマウンドいたのは吉川光夫。相手はオリックス・バファローズー、大エースとして君臨し続ける金子弌大だった。二人とも3失点で降板。栄ちゃんが延長サヨナラしたゲーム!

奇しくもその年のドラフト1位で入団することになったのが、有原航平である。その6年後に、同じチームに3人寄って同じ試合で3人が投げるなんて、いったい想像できた人がいただろうか。いやいない(反語)

金子弌大は、ファイターズに来てから、自ら「どこでも投げる。勝ち試合でも負け試合でもなんでも投げる」と言い続けている。かつての大エースぶりを見てきた者にとっては、なんだか痛ましいような気がするけど。いやいやきっと違うんだと、わたしもまた、言い聞かせ続けている。

ちーちゃんは、おそらくは先発投手として経験してきた野球ではない、別の野球を体験したいのだ。まっさらなマウンドから見える景色ではないー見知らぬ世界ーで自分の力を発揮すること(逆の側面から見れば、先発投手としての力に諦めを抱いている。かつて自分のイメージをもう持てないからなのかもしれない)最大の欲望は「チームのために力になれるピースになりたい」ってことではないだろうか。

ー孤高のエースーと呼ばれることに、誉を感じるか、いやいやそんなのつまんないよ。孤高って何よ? 

わたしたちの吉川光夫もまた、その分岐点にいる。あんなに可愛かった真っ赤なほっぺの18歳みつおもいつの間にかプロ14年目。エースと呼ばれることにやはり苦悩しながら迷走しながら。ここまでやってきた。どこまでも見守り続けるのが、わたしたちファンたるものの仕事だろう。

メジャーを目指したいと宣言した有原航平の歩もうとする2020年の道は、思わぬ逆境から出発することになった。でもだから一人じゃないんだからね。エースがエースである意味とは、そのチームがどんなチームであるかを表す。

シーズン最後に、どうなってるのかで決まるのだから。


ファイターズ 5勝7敗1分













この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?