過酷なメットライフの三日間。消耗戦を2勝1敗でしのぐ。息の抜けない勝負は、まだまだ続く。そこで、わたしは、中島卓也の話をしてみたい。

95試合目 2019 7/28 L×F 8対7 メットライフ西武ドーム

テレビの前で想像するだけでも、暑さでもわ〜〜としそうな西武ドーム。3連戦の最後は、9回表4対7の劣勢から近藤健介、土壇場で追いつく3ランホームラン!

試合は延長戦に突入。しかし、ここは山賊ライオンズの本拠地、ビジターチームにとっては、地獄のメットライフドーム。さよならのいや〜〜んな予感が漂う。

10回表のファイターズは、無得点。その裏に登板した宮西尚生、3連投は避けたかったところ。その日、3安打の木村に4本目を打たれてしまう。次のバッターは秋山翔吾。いや〜〜んな予感の振り子は最大値を示し始める。ぴこーんぴこーん。

強い当たりのライナーが二遊間へ飛ぶ。ファーストランナーは、すでに走っている。ショート中島卓也のグラブからボールは弾かれ、外野へ転々と抜けていく。ランナー木村は、そのままホームイン・・さよならさよならさよなら〜〜〜〜。

状況は、正真正銘のさよならタイムリーエラーであり、当の中島卓也も

「俺のせいで負けました。思ったよりボールが来なくて、足が動かなかった。」

と敗戦と責任の弁を述べている。

のだけれど、テレビの前では、秋山くんの打球が飛んだ瞬間に、やべえっと思ったんだよね。弾いた時は、あーっというかなんというか・・やっぱりというか。流れの中に、たまたま中島くんが、いてしまった。

ああいう時もあるんだって、としか言いようがない。

シーズンに入る前、キャンプからオープン戦を見ていて、最も仕上がりがいいのは中島卓也で、「今年の一番星は、卓也!」だって思ってた。実際に、開幕当初は大変に調子が良く、攻守に輝きを見せ、チームを引っ張っていた。それがいつ頃からか、出場機会ががくっというほど減ってしまった。

故障もあったようだけれど、打撃不振が大きな原因のようだった。石井一成や平沼翔太、ヤクルトから移籍してきた谷地亮太、ライバルは何人もいる。でも入れ替わりするショートストップなんて…中島くんは、一番上手だし、ゲームメイクも流れを読む力も一番なのに、どうして使わないのかといぶかっていた。

ファイターズは、北海道移転以来「守り勝つ野球」を掲げて、勝ってきたチームだ。基本的には、変わっていないと思う。でも今年の栗山監督の采配や、チーム構成を見ていると「打ち勝つ」方にも、強く傾いている。

守備には多少の目はつぶっても、打力が期待できるオーダーを組むことが多い。その中で守備に特化しても一流である中島卓也は、結果的に控えに置かれてしまうんだな、と見えていた。

最初から卓也を出して、代打に石井くんを出したとする。終盤の大事なところで、もう守備の控えはいないとなってしまうならば、その逆の方が、勝つ確率は高い。

実際のことは、もちろんわかりません。あくまでもわたしの想像ですけれど。しかし、その守備固め、まさに終盤を勝ち切るために出てきたゲームで、タイムリーエラーは出てしまった。複雑な立場に置かれた選手会長、中島卓也の心境やいかに。

昨年、ライオンズを追っかけていたファイターズ。くしくも同じメットライフドームで、石井一成が、痛恨のタイムリーエラーに、泣いた試合があった。

後日、スポーツ新聞に、中島卓也の発言として、伝えられた。

「あいつのエラーで優勝を逃した。あいつには悪いけれど、それくらい大きなこと途中から出る難しさもわかったと思う。今後に生かしていかなければ」

中島くんは、口下手である。言葉の選び方に問題は、しばしばある。この発言は、あたかも石井一成を非難したとして、相当の物議を醸していた。まあ文字面だけなら仕方のないことですよね。

けれども、わたしは、違う感想を持っていた。長きに渡り、ファイターズのショートストップを務め、鉄壁の守備力を誇る、現在は、なぜかバッティングコーチの金子誠。田中賢介と二遊間を組み、中島卓也も育ててきた。彼は、常々、守りの重要性を訴えるとき、こんな話をしていた。

「一つの守備が投手の人生を変えてしまうこともある、一つの判断ミスがチームの運命を変えてしまうこともある。それくらいの覚悟でやるもんだ」(要約)

ですよね? 熱心なファイターズファンならば、知っているはずだ。

想像でしかないけれど、確信もある。このインタビューのとき、中島くんは、常から金子さんに説かれてきたことを言いたかったんだよ。でもぶっきらぼうにしか言えなかった。基本ぶきっちょな子だよね。中島くん…。

しかし、どうであろうとプロ野球は、結果の世界である。石井一成に向かって放たれた言葉は、一年後に中島卓也に跳ね返ってきた。

それをして「ブーメラン!」とか、それみたことかとバカにするファン(?)の人もいるみたいだけど。間違ってますから。大体、そんなこと言って偉そうにして何の意味があるの?

中島卓也 年度別成績 公式サイト選手名鑑より抜粋

プロ野球選手の9年間は、決して短い年数ではない。ましてやショートストップというポジションは、生半可なことでは続けらない仕事なのだ。その意味は、たった一つのエラーで消えるはずはない。

しかし、同時に。たった一つのエラーが、投手やチームの運命を変える可能性があるように彼自身の運命を変えるような、それくらい大きなプレーだったとしても。

野球はミスを伴うスポーツだ。金子誠だってタイムリーエラーくらい何度もしている。どこでいつ何が起こるか、誰にもわからない。だからこそ精一杯準備をして、想像できうる限りの想定をして、できる限りの努力をする。

中島卓也は、そのプロ野球選手としての行動を、怠ったことは、一度もない。


ファイターズ 50勝41敗4分け   タカが勝ち1.5ゲーム差 に戻る。













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