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次に「你好!」と言えるのは

私たちは中学生か、と自分に突っ込んでいた。

4人のいいオトナが、まるで先生に直談判にきた中学生のように、受付の何の権限も持っていなさそうなお兄さんに詰め寄っている。

「というわけだから、次のレベルを開講してください」「私たち4人全員参加しますから」「前みたいに3週間も4週間も待たせないでね。メール何度送っても返事返ってこないし」「なんならみんなで署名していくわよ」「ルーシー先生は来週からでも良いって言ってるから」

ちなみにルーシーとは、私たちの愛すべき広東語の先生である。彼女だって本業は別にあるはずなのに、本当に教えるのが上手で、私たちは授業の間中ずっとゲラゲラ笑っている。

毎週木曜日1回につき2時間、全部で10週間の広東語のクラスの最後の授業の後、クラスメイト全員で受付の何の権限も持っていなさそうなお兄さんに詰め寄っている。

ロシア人だけど5カ国語を話せて授業中に一番喋っているオレクに、ベトナム人だけどベルリン育ちで高校生のときにオーストラリアに移住してきたカーストン、両親が香港人だけどオーストラリア育ちで広東語が話せないダニエル、そして英語もまだ完璧ではないくせに広東語に浮気している私。

一番若くて24歳、一番年上がたぶん40代、みんなちゃんとした仕事をもっている大のオトナが、クラスではワーワーギャーギャー2時間騒ぎっぱなしの中学生みたいになるし、今だって文化祭の決定に文句を唱えに、職員室に直談判しにいこう!と団結したクラスの代表4名、みたいになっている。

人気のある北京語、韓国語、スペイン語ではなく、広東語というマイナーな言語に行くあたり、それぞれに理由はあれどキャラの濃い4名が集まった、いや必然的に集まってしまったのだろう。

結局、「私たち次のレベルの広東語コースを希望します」という著名をお兄さんに差し出して、「Hope see you guys soon (またすぐ会えると良いね)!」と言い合いながら、ほくほくと家に帰って来た。

さて、クラスの案内はすぐ来るのか。彼らには、またすぐ会えるのか。

クラスの案内が来た暁には、また「你好(広東語ではニーハオではなく、ネイホウ)!」と元気に言いながらクラスに入って行くとしよう。

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