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フェミニズムの4つのステップ

今年は、社会的にも個人的にも、フェミニズムについて考える機会が多くあった。

そんな中、『フェミニスト小説』として話題になった『82年生まれ、キム· ジヨン』を読んで、とある疑問が浮かび上がった。レビューには『まさに私の人生の物語のよう』という共感の嵐。共感を集めたことが疑問なのではなく、『私も同じ経験がある』というMeTooムーブメントの終着点は、共感で終わってしまったら果たしてフェミニズムなのだろうか、という点だ。発言することは大きな勇気ある一歩。ではなぜそんな主張が必要な社会になってしまったのか?どうやって変えられるか?そして何よりも、女性による女性のための運動ではなく、どうやって男性の心にも届けて、1つの社会の中で男女健やかに共存していけるか?

特に妊娠や婦人科系の健康問題は、多くの女性が経験していながら、ソーシャルメディアの時代にもあまりシェアできず、それぞれ孤独に乗り越えながら、新しい命を産むために前に進み続けている。

そのたくましさこそが女性の真の美しさだと痛感し、個人的な体験から歌を作って公開した。

少し感情的になっていて、動画説明欄に『どんなセクハラオヤジも女性の強さのおかげで生まれてきた』みたいなことを書いたのを見て、夫に言われた一言に、ハッとさせられた。

『女性の強さを主張するのはいいが、男性に敵対してはいけない』

忠告の通り、その後、温かい動画コメントの中に1つだけ、『自分の経験を利用して強引な主張をするな』というコメントがあった。もちろん速攻通告して削除したが、夫の言った通り、女性の強さを主張したつもりが、思わぬ所で反感を買ってしまったのだ。

このことや、『キム·ジヨン』を読んで感じたモヤモヤ感に対して、すばらしく的確で見識に満ちた答えをくれたのが、この本だった。

著者はあのビル·ゲイツの妻メリンダさん。彼女は途上国の女性地位向上のため、財団を通して多くの功績を残してきたが、彼女の理念、言葉の一言一言全てにハイライトを引きたいぐらい、共感しっぱなしだった。大富豪の妻に言われてもピンと来ないと思うかもしれないが、彼女は自ら途上国に出向き、貧困や差別と闘うたくましい女性たちから聞いたエピソードを届けてくれる。

私はフェミニズムの専門家でもないけれど、この本を通して個人的に感じた、4つのステップがある。

1. 命の価値の平等は、選択肢の平等

女性の地位向上は、女性の生き方を指導することではない。選択できるチャンスを提供すること。貧困に苦しむ女性の話を聞き続けたメリンダが行き着いた答えは、女性の妊娠に関する選択肢だった。本当の貧困とは、選択肢がないこと。これ以上子供を養えないのに、夫に逆らえない、避妊薬が手に入らない、不衛生な環境で出産したり、女性器を切るという伝統慣習も強要される。。妊娠の時期や数の選択肢は、貧困を改善する最も効果的な方法だったのだ。

この世界に生まれて来た命の価値は、全て平等。

夫ビル·ゲイツがやってきたことも基本的な考えは同じで、ソフトウェアというプラットフォームを提供すること。今では、先進国の誰もが自由自在に利用できるツールになった。それをどう使い、何を選ぶかは、人それぞれ。フェミニズムの発想も同じなのかもしれない。女性にも男性と同等の選択肢やチャンスさえあれば、社会の発展の可能性も広がる。社会の課題は、女性の人生や仕事の選択肢の制限をなくすこと。

2. 壁を作るのではなく、調和する

本に出てくるエピソードは、女性の話だけではない。途上国の支援に貢献している男性の話もあり、物語のヒーロー·ヒロインは男女半々だ。フェミニズムで気をつけるべきことは、男性からの嫌悪感や反感を買わないこと。フェミニズムは男女を隔てるものではなく、調和させるものだから。彼女の言葉を借りるなら、

“(edited) Being a feminist means that women and men should work together to end the biases that still hold women back”
“フェミニストでいるということは、女性を押さえつける偏見をなくすため、男女が力を合わせること。”(私訳)

3. フェミニズムは身近な場所から 

プラカードを持ってデモ行進するより、もっと身近に始められるフェミニスト活動がある。こんなエピソードがあった。娘の学校の送り迎えと財団の活動の両立が厳しくなり、夫に相談したメリンダさん。夫ビルは、『週何度か僕が送り迎えする』と提案してくれた。父と娘の会話の機会も増え、次第に学校では送り迎えするお父さんが増えてきた。他のお母さんに聞くと、『あのビル·ゲイツもやってるんだから』と言う理由で旦那に頼みやすくなったという。

また、女性が仕事や家事全てをする伝統のあるアフリカのとある村で、男女の役割を逆にしてロールプレイしてみるワークショップを行ったところ、家庭での男性の態度が改善され、女性が教育を受けたりビジネスを始める機会が増えたという。

このように、一番身近な女性、お母さん、姉妹、妻、また学校や職場の女性とじっくり対話してみるだけで、視野が広がり、女性が活躍するチャンスにつながる。そうすると、社会全体の発展と環境改善に繋がるのだ。

この本を読んでいると、とにかくゲイツ家の夫婦関係が平等なことに驚かされる。頭脳明晰なビル·ゲイツが、論理的に行き着いた答え、人間にとって最も大切なその結論は、『全ての命の価値は平等』だと言うこと。途上国の衛生問題や医療提供の財団活動、また男女平等の発想も、全てその考えから派生している。

4. みんな自分大好き人間になる

“Lifting up a person's self-image"

女性のエンパワーメントとは、女性の自己イメージを上げ、社会の偏見に縛られず、自由な人生の選択肢を得るチャンスを増やすこと。誰もが自分の命の尊さと価値に誇りを持って生きることができれば、男女問わず誰にでも自然と優しくできるようになるはず。フェミニズムは男女の平等だけでなく、命の平等、さらには自己実現と自信をもたらしてくれるのだ。




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