和音に強くなる!⑤ 【和音の機能】
三和音、七の和音の種類を覚えたところで、今日はそれぞれの和音の機能について復習しておこうと思います。
いよいよ和声の入り口が見えてきました!
和音の機能
和音にはそれぞれ性格、性質があり、特に調性のある音楽の中では和音の進行、役割がおおよそ決まっています。この決まりに則った和声を機能和声と言い、多くの調性音楽の基本になっています。
和声の機能は、次の3つに分けられます。
こちらは丸暗記項目です!
トニック(主機能)Ⅰ、Ⅵ
ドミナント(属機能)Ⅴ
サブドミナント(下属機能)Ⅳ、Ⅱ
ⅢとⅦは最初のうちはほとんど使わないので、とにかくそれ以外のⅠ、Ⅱ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵの5種を覚えてしまいましょう。
それぞれ詳しくみていきます。
①トニック Tonic
その調のホーム的な和音。主音の性格を持ち、安定している。
Ⅰ(主和音)が代表。また同じく主音が含まれており、共通音が2つあるⅥの和音もこの機能を持つ。主音は入っていないが、Ⅰと2つ共通音のあるⅢも時々トニックとして使われることがある。
②ドミナント Dominant
トニックに進もうとする強い性格。属音と導音を含むⅤが代表。Ⅴ₇になると限定進行音が増えて(ⅶ→ⅰへ、ⅳ→ⅲへ)さらに強力になる。
Ⅰの2転とⅤが続くと、これはセットでドミナントになる。(Ⅰであってもトニックにならない)
ⅦやⅢもⅤと共通音があるので、ドミナントになるがあまり使われない。
Ⅲは先ほどのトニックにもなり得るので、使われ方によっていろいろ変化できる中立した和音ですね。
➂サブドミナント Subdominant
トニックやドミナントのような調を示す強い性格は持たないものの、抒情的だったり、開放的な印象を持たせる役割。
Ⅳが代表する和音。これに準じ、やはりⅣと共通音の多いⅡがこの仲間。
和音の繋がり、カデンツ
和音には役割だけでなく、配列にも規則があります。
その和音の機能の並び順をカデンツと言います。
カデンツは、これもまた3種類あり、
丸暗記項目です。
(以下、トニック=T、ドミナント=D、サブドミナント=S)
①TーDーT
②TーSーDーT
➂T-S-T(特別!)
※終止形の記事https://note.com/rie_matsui/n/n2643f0360c09 も一緒に読んでおくと、より理解が深まると思います。
具体的に譜例も見てみましょう。
①TーDーT
シンプルに、ⅠとⅤだけだとお互い強い性格同士(?)はっきり、決然とした印象を持ちます。
Ⅴの後にⅠでなく、Ⅵを使うと(偽終止)また印象が変わります。
(Schubert: Fantasie op.15; Henle)
②TーSーDーT
①のカデンツのDの前に少し抒情的なSをはさむと、いろんな性格が混じりバランスよくきれいにまとまった、という感じでしょうか。
この、②のカデンツにおけるSは、ドミナントの前に置くものとして、「第2ドミナント(D₂)」という呼び方もあります。
この「第2ドミナント的」サブドミナントは、ⅣとⅡを連続して使う場合はⅣを先、Ⅱを後に配置するのが普通です。
(J.S.Bach: Das Wohltemperierte Klavier Teil.1 Praeludium 1 BWV846; Henle)
➂T-S-T(特別!)
「アーメン」でおなじみのⅣ→Ⅰの連結です。
特別!と書いたのは、この場合のサブドミナントはⅡが使えず、Ⅳのみ。
しかも、Ⅳの後はⅥはこれず、Ⅰのみ。
したがって、「ⅠーⅣーⅠ」か「ⅥーⅣーⅠ」のいずれかしかありません。
だから、➂のカデンツでは「特別サブドミナント」、②では「第2ドミナント的サブドミナント」と分けて私は教えています。
(Burgmüller: 25 Etüden 素直な心;ウィーン原典版)
♪♪やってみよう♪♪
以上のことを踏まえて、よく使う「Ⅰ、Ⅱ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ」の和音はどの和音に連結が可能なのか、まとめてみましょう。
Ⅰは他4つの和音全て後続できるので、矢印を4つ書きました。
他の和音もそれぞれ考えてみてくださいね。
解答はこちら。
何だか将棋の駒みたい!!役割、行き先が決まっていて!
これの連なりによって、フレージングが決まり、抑揚が付き、意味を持った文章のようになっていくのですね。
この和音の進行を覚え、慣れたら、ぜひ古典派のソナチネの和声分析をしてみてください。今回出てきた「Ⅰ、Ⅱ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ」ばかり、シンプルな構造がすぐにわかると思います。
主に古典期の曲では規則に忠実です。ここを理解していると、その後ロマン派になると規則から逸脱していく様子も発見できますね。時代や作曲家による違いを見るのはとても楽しいことです!
次回は、やり残した九の和音について。
和音シリーズもそろそろまとめの時期です。
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