サービス業は接客をするだけが仕事なのではない。

今日、サービス業をめぐる動きは低賃金で賄われ、もしかしたらロボットに仕事を奪われるのではないかという不安が少しある。

どんなことであってもおもてなしすることを忘れなければ、現場に出て仕事をする気概を持っていれば大丈夫であるという風に見ている。

ただ、そのためには仕事は接客をしてナンボ、というある種の限定を課して仕事をしてはダメだということをこの何年かで学んだ。

・お客さんの(本当に)言いたいことは何かを言葉の裏から読み取ること。
・お客さんの行動でどこに行きたいかをある程度察して案内すること。
・一連の接客の中で違和感を感じたら、お客さんが何か言いたいことがあるのか少しだけ聞いてみると、案外教えてくれることが多々あること。
・お客さんのなかに同業者や内装・設備関連の仕事についている人がいて、たまにそんな話をされることがある。
・従業員のいざこざや、怒った客の怒声などが店内に響くと他のお客さんはそそくさと帰る傾向にある。
・ひとりだけのお客さんは物静かに過ごす人が多いので、どちらかというと空いている時間を選ぶ傾向にある。

・・・・・・などなど、いくつかあげてみた。

ただ、これはお客さんがいる時の心と体の動きを記したものなので、じゃあお客さんがいないときは仕事をしないかと言ったらもちろん、する。

お客さんがいる時もいない時も、ある部屋の状態を整える仕事があるので最低限その部屋に入らなければならないし、備品などを補充する仕事がある。
汚れたものを取り換えて綺麗な状態に持っていかなければいけないし、大がかりな掃除じゃなくても細かい掃除をしておく必要がある。

さらに、お客さんに店を最大限利用してもらうためのPRも案外欠かせなくて、わたしがこのようにパソコンをできる人なので、「筆まめ」というソフトでデザインしたポスターもいくつか作る。
(はがき専用ではなく、A3サイズのチラシも作れる優れもの)

さらに、周辺のお店と連携まではいかないものの、個人でそのお店に入って何を売っているのか少しだけ買ったり、それをおすすめしたりすることもある。お客さんに聞かれなくても、自分が気になるから行ってみる。
「ここはどんなお店」なのか、少しは掴んでおくことも必要と思うからやっている。


だからといって、全ての接客業に当てはまる訳では無く、また周辺環境も違うので個々のお店によって条件も違うのだろう。
それはそれでPRの仕方や、接客の作法なども違うことはよくある。

画一的な枠組みの中で接客業を語るより、その店によって最適な接客というものがあるのだから、それはそれでいいのではないか。


各個人が働くお店ではどの商品がどの価格で売っているのかによって接客が変わる。
ビジネスホテルとラグジュアリーホテルの朝食の価格の違いは、朝食の内容とその調理にかかる時間と、接客のやり方の違いになって表れる。
ビジネスホテルはほとんどセルフ方式であり、席も自分で決めて盛り付けた皿も自分の感性でテーブルに置いていく。トーストが欲しかったら自分で食パンやバターロールなどを簡易オーブンで焼く必要がある。
だけど、ラグジュアリーホテルではお客の手を煩わさないように、あらかじめトーストなども焼き色が付いた状態で出されるし、時間がたって粗熱が取れたウインナーではなく熱々の状態になって出てくるし、むしろ朝食会場に姿を現したお客を席まで誘導するところからすでに違う。
(いくつかのビジネスホテルとラグジュアリーホテルとの比較。ひとつのホテルでこのような接客を全てされたわけではありません)

こういったことは諸々のお店で違いがはっきり分かれている。
お客さんの居心地のいいように内装と外装、商品を一番よく魅せられる工夫、(飲食店では)食器やテーブルの色とか形、接客は個々によって違うのだから、自分が思う「このお店の価値とは何か」に合わせて、いろいろ変化を出していったらいいんじゃないかな。

随所に施された工夫というのは、わりと一年か数年で変わるものでもあるけれど、核となる「重要な価値」は不変な事が多い。
コーヒーの豆や焙煎方法が違えばお客の層が変わるし、そこで働く人が変わればその人を慕っていたお客さんがいなくなる。前は居心地がよかったけれど内装が変わったことでちょっとした不満になったりする。
家具の配置なんかも見慣れた光景であるほど、変わったときの違和感はあるけど、その家具を買い替えたわけではなければ構わない。
むしろ、飽きさせない工夫ともとれる。

そんな風にして、「そのお店の不変的な価値」をスタッフがそれぞれ持っていればお店はどんどんおもしろくなるし、そうでなければ飽きられてしまう。
だから、スタッフがあれこれ考えて変えていっても、お客さんも少しずつなら新鮮な気持ちで利用できるものだと考えている。


「守らなければならないもの」と「変えなければならないもの」の境をはっきりしておけば、スタッフの働き方はどんどん面白くなると思って、今日のnoteは終わりにします。

じゃあね~。



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