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リディラバ井上が、データドリブンで「地域の未来」について考えたので、ちょっとみんなに聞いてほしい話。

どうもどうもどうも、リディラバ井上です。

唐突ですが、自慢します!!
先日、「十日町市の「観光」を考えるワークショップ」というものを、新潟県の十日町市で実施しました。
十日町市を「観光」を通じて市役所の観光ビジョン策定に向けた蹴り出しのワークショップを市役所や観光協会の方々、地域の事業者の方々などと一緒に実施したのですが、わたくし井上、やっと「データドリブン」の意味が分かったがします!!!

上記、何言ってるかよくわからないと思うので、順を追って説明させてくださいませ。

まず、今回のワークショップ、内閣府の「RESASを活用した新しい政策立案ワークショップの開発」ということで実施してます。皆さん、内閣府が設置・運営している「RESAS」というシステムご存じですか? 誰もが利用できるオープンデータのwebサイト・システムで、いろ~~~んなデータが入っていて、地域のことなんかを調べることができます。

トップページは、こんな感じ。なんだろう。官公庁のサイトらしからぬ、カッコよさです。

で、なぜ内閣府がRESASを運営しているかというと(以下井上の憶測含む)、自治体行政でも、ここ最近はデータに基づく政策決定ということが重要視されていて、翻ると、これまで自治体行政においては、データに基づく意思決定は、それほど中核的な位置を占めていなかった。行政施策・予算に対する、データに基づく結果の振り返りも、それほどはできていなかった。けど、いよいよ少子高齢化、結果としての人口減少、過疎化といったことが、地域地域で起きる中で、データに基づいて、適切に行政施策を運営、検証していく必要が出てきている。

そんな中で、内閣府はRESASというシステムを立上げ、全国様々な自治体が、RESASを活用した、データドリブンな行政施策の立案、運営をできるようにサポートをしている、という状況なのだと思います。

けど、一方で、ご覧の通り、RESASはかなり作り込まれた、たくさんのヒントがあるシステムではあるんですけど、RESASのことを知る機会であったり、どう活用すればいいのかを知る機会であったりがまだまだ足りなくて、全国の自治体で十分には活用されていない。この課題を乗り越えるために、RESASを活用した、自治体施策の立案のユースケースを作り、発信したい、ということで、内閣府のビッグデータチーム、宇野さんや松井さんと一緒に、リディラバとして事業に取り組んでいる、と。

説明、続けます。

では、RESASを作って、どこで、何を考えるのか。今回舞台となっているのが、新潟県十日町市です。十日町市とは、リディラバとしても、あるいは僕個人としても、すごく縁が深くて、僕が最初に十日町市を訪れたのは、2018年の経産省「未来の教室」事業。社会人向けのリカレント教育の新たな型を作ろうと、経産省の皆さんとご一緒させていただいた事業で、事業の詳報はここでは割愛しますが、そこから一気に十日町とは親密(?)になりまして。2018年から今に至るまでで15回くらいは地域に訪れています。そんな中で、地域で3年に1回開催される「大地の芸術祭」を運営するNPOの皆さんであったり、市役所の皆さんであったり、地域の人と、地域の未来をどうしたらいいのか、一緒に考えてきました。
今回の事業の件が出た時、十日町市役所の剛さんに試しに話をしてみると、「市として、地域の強み・弱みをしっかり分析し、観光振興ビジョンのような、5年後10年後も古びない観光における軸を作っていきたいと考えている」とのお返事。「いや、やるしかないでしょ」ということで、内閣府RESAS×十日町市「観光ビジョン策定」の邂逅が相成ったという次第です。

おや、ここまでで1400字。
説明、続けます。

「観光」というテーマが決まり、RESASを始めとするデータを活用しながら、市の現状理想課題の分析を行い、ビジョンの検討を進めていく。

大枠が決まった時、僕らとして思っていたことであり、同じく剛さんを始めとする市役所の皆さんが思ったことは、「市内の、行政以外の色んな人を巻き込んでいきたい」ということ。
行政計画、戦略、ビジョン、巷にたくさんありますが、多くは文章を作ることが途中から目的になってしまって、誰も実現に向けた当事者意識を持てないものになっている。もう、そういうの、本当にいいから、とみんなが思っていて、今回のプロセスには、観光の実際を担っていくまちの事業者の皆さんにも一番最初から入ってもらって、オール十日町で進めていこうと。
結果として、7月31日に行われ第2回ワークショップには、市役所、観光協会、商工会議所などに加えて、まちの観光を担っていく事業者の皆さんにも、あえて金曜9時~12時という業務時間に集まってもらい、みんなが「仕事」として、観光ビジョンの策定にむけたワークショップに取組みました。

で、いざ、ワークショップ。
担当の梅原は、東京都庁から今年転職してきたメンバー。都庁ではオープンデータの活用を始めとするICT関連の企画立案を担当していた人間で、行政×データの取組みには、並々ならぬ想いを持ってたわけです。
結果として、まず、会場にオープン30分前に到着しました。「あれ、早くついちゃった?」ということで、30分外のベンチで待ちぼうけ。

最後の内容確認ということで、ワークショップで使うスライドを見直していたわけですが、この段階でも、「データを使ったビジョンの検討。しかも、市役所の人だけではなく、様々な人が一緒になっての検討。本当のところ、どうなるんだ? 参照データを基にした30分のディスカッション、時間、持つのか?」というのは、確信はなかった、正直。
「いや、これはもうやりつつ、考える。でいくしかないな」と相談しつつ、開場&市役所から5名、まちの事業者から8名。合計13名で9時からワークショップを始めました。

最初は、みんなでの自己紹介からの、まちの大枠についてのデータでの確認。そんな中でなぜ観光が重要か、についてのリディラバなりの提示。

からの個人ワーク。梅原さんが市役所の方々と一緒になって作ったデータ集を見ながら、ポジティブな驚きには赤ペン、ネガティブな驚きには黄色のペンで、参加者ひとりひとりが、沈思黙考しながら線を引いていく。

からの、それらのデータをもとに、チームでの共有。30分。

杞憂ってこういう時に使うんでしょうね。
「30分、時間は持つのか」という心配は全く外れていて、むしろ全く、時間が足りなかった。

「十日町ってイベントの数多いと思っていたけど、これだけの数があるんだね」
「観光への期待。10代が突出して高い。この若い子たちの想いを、取組みに繋げられないかな」
「地域資源の活用。70%。地域の人に、地域資源を活用したいという想いはありながらも、観光を産業として重視する人は8%。地域資源の活用をしたい、という地域の人の想いと、活用先としての観光がリンクしてない?」
「イベント。こうやってカレンダーで見てみてると、本当にたくさんの種類があるね。この多様性が十日町の特色?」
「地域にはたくさんの観光関連の団体があるね。団体が横連携、協力しながらやっていけたら大きな力になりそう」
「交通の便の悪さというのはやっぱり気にされてるね。それは予想通りなんだけど、「」ってなんだろう。」

出るわ、出るわ。僕はテーブルファシリテーターとして話に入っていたのだが、普段、本気で観光に取り組んでいる人たちだから、「データ」というコミュニケーションの基盤ができたら、それぞれが「データ」を出発点に、普段感じていることや予想外の発見が、どんどん言葉になって、30分はあっという間だった。

観光におけるステークホルダーを整理し、それぞれについてのポジネガをデータドリブンで拾い出した後、その後は、まちの強み弱みを考え、取り組みの方向性を検討。3時間のワークショップは、大げさではなくて、なんか本当にあっという間に終わった。

「十日町ってイベントが本当に多いから、その時にちょくちょく考えたり、話すことはあっても、こうやって、自分の会社以外の人と、きちんと考えたり、話したりしたのは初めて。すごく、面白かった」

まちの事業者の方に大変に有難い感想をいただきながら、いくつか考えていた。

まず、「データ」とは何か。データドリブンというと、数値化された統計データ、というのを考えていたし、上述した通り、こんなデータやこんなデータを見ながら、話は大いに盛り上がっていた。

けど、一方で、「改めてこうやってみると、やっぱりすごいたくさんのイベントやってるね」とか「二次交通の課題はよく言われてるけど、こうやってみると、バス会社も結構あるんだね」「こうやってみると、観光に関連する団体、たくさんあるね。もっと密に連携出来たら、すごくよさそう」

という感じで「こうやってみると」「改めて見ると」という会話から気付きに繋がる場面も多々あった。散逸した情報を整理し、特定テーマの全体感を可視化するもの。ここで言えば、こんな表もまた、「データドリブン」の大切な構成要素なんだな、ということを実感した。僕自身、15回くらい十日町に来ているし、事業では十日町のことを自分なりに考えてきたつもりだったが、「こうやってみると」ということからの気付きがあって、一参加者として「データドリブン」で地域の未来を考えること、にとてもワクワクしておりました。

最初の気付きは、
「データドリブン」で言われるところの「データ」のイメージの広がり。
次の気付きは、
「データがあるからこそのコミュニケーションの円滑さと深さ。結果としての短時間でのラポール形成と未来志向の協働」
とでも言うのか。「初めまして」と名刺交換をして、同じテーブルについて、話始めた人たちが、びっくりするくらいの速さで、楽しそうに相互理解を深めつつ、愚痴っぽくなるのではなく未来志向で話ができるのだ。無論、データだけを渡せばそうなるのではなく、ワークショップにおける全体設計が「相互理解、未来志向」の一助になっている部分はあると思うのだが、「データ」があることで、相互理解が早くなり、未来志向が確かなものになる、という感覚がすごくあったのだな。これまで、リディラバに入ってワークショップなどの場の設計を色々な局面でしてきたのだが、この「相互理解、未来志向」への手ごたえの確かさは、今回のワークショップは特筆すべきものがあったと思う。同じ会社、同じ立場ではない、つまり共通の言語が異なる人たちが一堂に会しての話。議論のレイヤーを揃え、実りのある時間にするにはすご~~く設計が難しい場面なのだが、「データ」という共通言語があり、自分が普段感じていたことをデータに基づき話せると、ディスカッションが「迷子」になりにくくて、「共有言語としてのデータの有用性」をこんなにもクリアに体感したのは、今回のワークショップが初めてだった。

「正直、時間足りなかったですね。30分あってデータに基づくディスカッション。僕らのチームは、まだデータ集の半分でした。もっと話したい、という感じを参加者の方たちからも受けましたね」

ワークショップ後の振返り、市役所の人からそんな言葉が聞かれた。設計を担当した自分たちからすると間違いなく誤算、なのだが、すごく嬉しい誤算だった。観光ビジョンの策定は令和3年度にかけて実施していく内容で、今回のワークショップはその蹴り出し。8月、9月と会を重ねていく。

これからの地方を見た時に、行政だけでやれること、民間だけでやれることの垣根を越えて、行政と民間が協働し、まちの「現在」と「未来」にコミットしていくこと。それが、本当に求められているし、まちの「現在」と「未来」にコミットできること、はそのプロセスに参加しているひとりひとりにとって、とても意義を感じられるものになる、あるいはその可能性があるんじゃないかと、僕は本当に考えている。

とした時にだ、どうやって協働を生み出していくのか。
共通言語としての、RESASを始めとする「データ」を活用した「データドリブン」での議論。本当に小難しく考える必要はなくて、まちの今をデータ使って、みんなで眺められるようにする。そしたら、想いを持った人たちにとって、その場は、自分の想いをデータが裏付けてくれた喜びを得られる機会だったり、「プロ」であると思っていた自分でも気づいてなった「データ」からのまちの学びが得られる機会だったりして、会話の中では、「データ」が潤滑油になって、同じく想いを持った人と出会いなおし、一緒にやっていけたら楽しそうだね、と思ってもらえる。

そんな可能性を感じた。

最後に。

観光文脈において、こうしたワークショップをやったとしても、誰も聞いたことがないような、真新しいアイデアが出てくる可能性は低いのかもしれないと思っている。

そしてまた、そういったいわゆるイノベーションが地域に必要か、と問われると、必要ないかなとも思っている。

現に、そこに、あるんだよなぁ。資本主義に最適化する形で、人、情報、産業を集積させた「都市の営み」とは異なる、「地域の営み」が。そしてそれがまた、とても魅力的なのだ。その総体の一部を、ひとりひとりの人が自覚的に担い、総体を編集し適切に外に伝え、地域に人がやってきて、地域のファンになって、地域にはお金が循環するし、もうなんなら、そのファンも一緒になって、「地域の営み」を未来に継承していく。そういうプロジェクトの一員になる、地域に住んでる人も住んでない人も。

そういった、一連のプロセスを通じて、「観光」をアップデートしていく。その辺のことをやりたいと思っています。

お、気付いたら5000字超えてる。
流石に、この辺で。

では。

追伸
十日町市で使ったデータ集とか興味ある人はメールください。
全然送りますんでw
t.inoue@ridilover.jp

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