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バイクを買い替える②
GTS300を見るためにディーラーへ行った日は快晴だった。
よく晴れた日は色んな物が良く見える。
良く見えるというのはディテールまで見えるという意味じゃなく、良いものに見えてしまうという意味だ。
それは僕の中のほんの少しの能天気な部分が活性化するからだと思う。
思えば家も店も車も、晴れた日に決めたような気がする。慎重であるならば「はじまりはいつも雨」くらいじゃないと本当はいけないんだろう。
ベスパのディーラーは、やはり外車のそれらしく洒落て清潔だった。ガソリンとオイルと排ガスが混ざった匂いの「バイク屋」との違いに、緊張し汗が出た。できるだけ平静を装って目当てのGTS300 SUPER SPORTを見せてもらう。
国産のビッグスクーターよりは明らかに小さく、PCXやNmaxよりは少し大きい気がした。タイヤが12インチであることで、全体にコンパクトで扱いやすそうに見える。モンキーやグロムに似たようなフレンドリーさを感じた。
またがってみるとシートは高い。足の着き方にもよるけど400ccクラスのネイキッドよりも足付きは良くない気がする。ただ車重は軽いし重心はずっと低いので、グラッと傾いてしまっても簡単に持ち直すことができる。
メットインが小さい、とのことで見せてもらうが必要十分な容積。スクーターに慣れた人はフルフェイスのヘルメットが入らなければ不満なのかもしれないけれど、普通のバイクからの移行組としては、ヘルメットが入らなくても、手持ちの荷物がきちんと収納できるのはありがたい。
財布、ケータイはもちろん、雨が降りそうなら合羽、山へ行くなら防寒着、時にはカメラ、たまにツーリングマップル、万が一のパンク修理キット等、細かいことを一切気にせず適当に入れて出掛けられるのは素晴らしい。
「これは良い...」
車格やデザイン、ユーティリティーに関しては、すっかり気に入ってしまった。
最後の問題はやはりATであること。シフトチェンジが無いという事がどういう事なのか、経験がないので今一つイメージできない。ATであることが理由で嫌になる、又は飽きる可能性があるかも?という心配は残った。
ひとまず、その場で決める事はせず、一度頭を冷やして良く考えることにした。
実はZ650RSも気になっていたので、翌週、念のため見に行った。軽量で、大排気量ではないところが「良いかも」と思っていたけれど、実物はどことなく族車っぽい感じ。妙にスポーツ感があって、例えるなら『ジャージを着た若侍』だった。忍者ではない。忍者はもっとさりげなくないと。
走行性能は高そうだけど、生憎、今の僕の生活圏にワインディングロードはないし...。この排気量もミッションもひとまず必要なさそう、という結論に至った。※僕の2輪ライフは18の時にカワサキのバイクで始まったので、カワサキは好きだけど、その分だけ期待してしまうものがある。
そうして僕の気持ちはGTS300にガッツリと傾いていった。
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