犬を看取る

先日姉のところの14歳の女の子犬が永眠したのですが、私はそこまでお世話してたわけではありません。
そもそもこの子は動物愛護センターで保護されており、姉一家がそこからもらってきた犬でした。
当時で生後半年ほどだったそうですが度を越して臆病で、最後まで一匹だけ入っていた小屋から出てこず、小屋をひっくりかえしてやっと逆さまに落ちてきたそうで、譲渡会場の笑いを誘っていたそうですが姉は「かわいそうに」と思ったそうです。

その子は甲斐犬の血が入っていたそうで、柄は猫でいったらサビ柄みたいな感じで、前頭部に角みたいな突起がある、ちょっと不思議な犬でした。
極端に憶病だったのもあり、孤独を好み、昼の間は庭で過ごし、夜は一人でおとなしく玄関にいる子でした。
かつてうちにいた柴の雑種の雄犬がクンクンワンワンギャンギャン言ってた事を思うとなんてお利口さんな子だと思いつつ、寂しくないのかなとちょっと思ったりしていました。

私はその子にトラウマを与えてしまっていたので、かなり長い間、顔を合わせるとガタガタ震えだし尻尾が股間に隠れてしまっていたのですが、虐待したわけではもちろんありません。
何があったのかというと、その子が来て2・3年の時、姉一家が正月に家族旅行をするというので年末から三が日、その子を預かったのです。
普段から外と玄関で過ごし、あまり人は関係ないのかな、大丈夫かな、と思っていたのですが、うちに来ると様子の違いに気づきびくびくと過ごし、外のほうが慣れているだろうからと庭に繋いだら、うまいことロープごと脱走してしまったのです。
元旦の朝10時くらいの事でした。
犬いない、逃げた!!というので元旦の朝10時からそこらへんを探し回り、まさかと思ってうちから徒歩で15分くらいの姉の家に行ってみると、なんとその子が帰っていたのですね…。
うちには何度か散歩で来ていたので道を覚えていたのかもしれませんが、預かったときは車だったのでよく覚えてて無事に帰ってきていたなあと、まずは見つかってホッとしました。
普段から日中は庭にいてその日は暖かい日で天気も良かったので、庭に入れて暗くなるまで過ごさせることにしました。
帰りはさすがに車で迎えに行きましたが、乗ってくれなくて大変でした。

そんな子が三日間我が家にいてストレスを感じないわけがなく、最初の日こそ夜だけうちで過ごしたのですが翌日からはそういうわけにもいかず、散歩に行けば強制的に姉の家に行き、帰ろうとしても家の前から動かず、やむを得ず無理やり引っ張って帰った私は、その子の大好きなおうちから無理やり嫌なよそのおうちに連れていく存在だと認識されてしまったのです。
正月三が日まるで休めなかったうえに犬に嫌われて、超やるせなかったです。犬もおなかを壊したりしたので、結果から言うと姉の家に置いて私が出し入れと餌やりだけしたほうが良かっただろうと思いますが、まさしく結果論だしどっちにしても私は大変です。

そんなトラウマも抱えつつ、ずっと庭にいたおかげで道行く人々に認知され、犬小屋に書かれた名前を呼ばれて、姉のところでも把握しきれないほどの人にかわいがってもらっていたそうです。そのおかげか臆病なのも徐々にましになってきたそうです。
私もようやくつい最近撫でても震えなくなったと思ったら認知症になり、結局ほぼ普通のお付き合いができないままお別れしてしまいました。

しかし、そんな私への慈悲だったのでしょうか。
亡くなる二日前の11日、私は姉に頼まれてその子の付き添いに半日ほどを一緒に過ごしていたのです。
認知症の夜鳴きがすごかった中、その日はおとなしく、しかし餌をほとんど食べてなかったので、留守を心配して姉に頼まれていたのです。
最初は静かに寝ていましたが、しばらくするとクンクンと小さな声で鳴き始めました。顔を撫でていると指を持っていかれそうになり(食いつかれそうになった)自分も認知症の犬の介護経験はあるので、食べ物と間違えたのだと思い、何か食べたいのかもしれないとジャーキーを与えてみたら鬼のように食いつきました。もう少し柔らかいものをと思ったのですが、もう少し柔らかいものは小さく確実に指ごといかれるので、大き目で安全な位置で手を離せるジャーキーしか選択肢がなかったのです。
顎と歯は丈夫で、ものすごい力で咀嚼して飲み込んで、なんや食べるやんと安心し、起き上がるような気配を見せたので胴輪を持って立たせると水をガブガブ飲んで、そのあとはぐっすりと寝てしまいました。
ちょっと心配になるくらい安らかでしたが、寝息は落ち着いており、心配ないと判断したので今から帰るという姉の連絡を受けて私は家に帰りました。

そして13日、亡くなる直前はやはり食べなかったうちの犬が、当時唯一口にしたヤギミルクの粉末を手に入れて姉の家に行ってみると、犬の容体は急変していました。
結果的に私は、その子の看取りまで行うことになってしまいました。
最後の最後に怖かった記憶を思い出させて寿命を縮めてしまったのかもしれないとも思いますが、最後だけでも看取らせてくれたのかなと、そんな風に思って自分を慰めています。

ちなみに、その子は12月で15歳だと聞いていたのですが、よく考えたらうちの犬が亡くなったのは15年前の12月でした。ちょっと顔が似ているね、性格は全然違うけどと冗談めかして笑っていましたが、本当に毛皮を着替えてきてくれていたのかなあと思います。うちも姉のところも子犬から飼うのはもう無理ですが、もう一回着替えて来てくれるかも、どこかで会えるかもねと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?