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バンドマンがステージ上で40歳を迎えた話 (中編)


 前回からの続き

ギタリストが一曲一曲転換時間ゼロで次々代わっていく

"ギタリスト回転寿司"

を思いついた僕はすぐにイシバシ楽器の倉持さんに電話した。

「アンプとキャビ、そしてワイヤレスを人数分用意できる事。ギタリスト達が流れをしっかり身体に覚えさせる事が出来たら理論上は可能」


と言われた僕は方々の友人に連絡して、機材の手配を始めた。

実際にACBにいって巻尺でステージ上手部分の寸法を測ったりもした。

薄々勘付いていたけど4台なんて全然不可能だった。

無理じゃね?



ギタリストの登場退場のスペースも考えると、かなりコンパクトで、かつRIDDLEのサウンドを出せる機材が必要だった。

それらを買う予算は無いので、たくさんのバンドマンに連絡して、貸してくれないかと交渉した。



それと同時に新曲作りも始まっていた。
俊輔が制作していたのだが、アキラが背中を押してくれた事もあり、アキラの持ち味を存分に活かしたアレンジにしたいと言う意向があった。

つまりそれは、現在のRIDDLEはアキラのドラムありきって事の証明であり、それはサポートメンバーの範疇を超えるって事だった。

サポート始めてから約2年。そしてここ一年はほぼアキラのドラムでライブをしていた僕らは、ずっと脳内にあった言葉を遂に吐き出した。


掛け持ちでも構わないから、RIDDLEのメンバーに、3代目の正式ドラマーになってくれないか。


アキラの返事は

「俺以外に誰がいるんですか」

だった。



それと「俺が叩くRIDDLEが一番カッコいいんです」と言った。


onafes2023 photo by クマキノリコ




いや、それお前自分では観た事ねえだろ。


とは思ったが、この泥舟に自分から乗り込もうとするアキラの笑顔に勇気を貰った。

新曲作りもかなりギリギリの進行で、頭からケムリが出そうだったが何とか無事に終わった。
レコーディングでリードギターを弾く人間が居ない事に気がついた時は絶望したが、


僕と俊輔で手分けして弾き切った。
無茶苦茶な進行を快諾してくれたエンジニアの小田内にも感謝したい。


そしてこの間にサポートギターミヤとの初ライブもあった。


ONAFES2023 photo by クマキノリコ



怒涛も怒涛の日々だった。
朝5時に起きて仕事を終えて新幹線で三島に行きミヤと2人でスタジオに入り、始発で仕事に行き終わってから松戸でアキラ俊輔と新曲作りのスタジオ。みたいな感じだった。

三島のスタジオ。機材の5割が不調。



レコーディングが終わったら今度はバギオや関村、フエンとの練習があった。
それぞれ忙しく一堂に集まれる暇が無いので、20〜23時までバギオ。24〜26時まで関村。みたいな感じでスタジオに入った。

最初のスタジオではバギオがビックリするぐらい弾けなかった。



同時進行でMVの制作と物販の制作にも追われていた。


九月入ってからのRIDDLE3人はずっとレッドブルが手放せなかった。 


少し時間が戻るが、ワンマンをギタリスト祭りにしようって決まった時に僕は「なんか、サポートの皆とは別に一曲だけ弾いてくれるスペシャルゲストとか居てもいいんじゃないか?」とまた悪い癖が出た。


こんな機会だからこそ逆に出来る事で楽しみたい!20周年の場で隣でギター弾いて欲しいやつ。誰かいるかな?て考えた。

正直滅茶苦茶沢山居たんだけど…流石に収集が着かなくなるって事で、ここは20年以上走り続けている仲間に弾いて欲しいなと思った。


telephonesの石毛
BIGMAMAの柿沼



2人の返事は直ぐだった。「自分なんかで良ければやらせて欲しい」


僕は「この2人に声掛けて良かった」と思いながらも

「サンキュ!でもめんどくさいからギターとか機材とか持ってこないでね!あるもので演って!」

と滅茶苦茶な事を言っていた。


友達に「お前腐れ縁とは言え武道館やってるアーティストを楽屋にトイレも空調も無いライブハウスに手ぶらで呼びつけてギター弾いてって酷く無い?」てガチで説教された。




前日の夜。前売りチケット販売が終了したタイミングで「あと2人ギタリスト追加します」と発表した時のお客さんはどんな気持ちだったんだろう。何考えてんだコイツって思ったかな。

機材は持ってくるな。でも子供時代の写真は寄越せという暴挙




誕生日を迎えた瞬間はスタジオにいた。

「俺明日自分のフルセット持ち込みます!!」と衝撃的に鼻息荒いアキラと、方々からようやく借りた大量のギターアンプを前に



「コレマジでどうやって積めばいいの…」て途方に暮れていたタイミングで僕たちは

40になっていた。


皆疲れすぎていて、アキラですら「おめでとう」の一言も言ってくれなかった。


前日は良く眠れなかった。
この日の為に詰め込んだとてつも無い情報量が頭にグルグルしていた。
そして、イメージした事が本当に上手くいくのか、ギタリストの入れ替えが失敗したら…もし機材トラブルが起きたら…物販届くかな…て考えてたら全然眠れなかった。


当日新宿ACBに到着した僕らを待っていたのは

本番 120分。
リハーサル 140分。


と書いてあるだけの簡素なタイムテーブル。


※以下の写真は全て photo by さとみんでお送りします



自分で作ったものなのに「リハ140分て…」てゲンナリした。

ギタリスト全員がワイヤレスユニットを装着して、倉持さん含め入念に打ち合わせした。

寝てない顔をしている


何度も落ちるフラッグ
かつてのメンバーとローディー ガチ説教
サポートのみんなもギタリスト回転寿司に不安です。


照明も入念にチェックします。



この曲はこうやって終わるから、このカウントで飛び出してきて!タイミングどうかな?照明は??

BPM200超えのカウントで飛び出すなんて無理だよ!とリハーサルでは皆何度も転びそうになっていた。

やべえ。時間がねえ



そして皆ギターもアンプも違うから中音が全然安定しねえな!

結局3台のキャビとヘッド。4台のワイヤレスシステムを使用して、何とか無理やり上手側に詰め込んだ。


あ!石毛と柿沼来た!ちょっとリハーサルしようか?!
あ!物販届いた!準備しなきゃ!!
え!あと20分でオープン??!

左はローディーをしてくれた島根の翔平くんです



結局想定したリハーサルの時間を大幅に過ぎて、時間切れで終わった笑

機材トラブルもあったりなんだりで、メンバースタッフ全員が滅茶苦茶不安のままオープンした。

そしてワンマンなのに楽屋が狭い狭い。 
一息付きたいのになんでこんな事になったんだ…と思ったけど、全部自分が蒔いた種でしかなかった。

皆直前まで練習練習



前夜スタジオ4時間 リハーサル2時間歌った僕の喉は本番2時間持つのか。

少し喉を休めたくても遊びに来たバンドマンがひっきりなしに楽屋を訪れては話しかけてくる

着々とスタート時間が迫る中

自分の誕生日なのに座れもしない楽屋で僕は「もうなるようにしかならねえな」と開き直っていた。




ああ、ダメだ。前後編で行こうと思ったけど諦めます。

次回最終回。ライブ本編の話です

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