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二月の山歩◆藤河内渓谷観音滝(2018/2/12)

 冬の中でも二月が好きだ。それは山を始める前、梅の月だと知ったときからだと思う。寒い日々が常になり慣れてきた頃、ふと薫る庭先の色。暖かな日差しと、鳥の囀りが空から降りそそぐ午後。寒さが続くのも、あとほんの少し。里ではそんな気配がしている。

 山はどうかというと、まだ雪と氷の世界。といっても九州の山なので雪国とは訳がちがうけれど、三月の気まぐれの雪に比べれば儚さもなく、寒々しく凛々しい冬山の雰囲気を味わえるのがいい。

 観音という名の滝はあちらこちらにあるが、藤河内渓谷の観音滝は冬にこそ、その名の姿を現す。高さ七十七米の明るい花崗岩を落ちる流れは、周りの飛沫が白く凍りつくと後光を放つ観音菩薩のようだと思う。

 実際に観音様に見えるかどうかはともかく、赤みがかった花崗岩に白い氷がつく様は美しい。時折轟音をたてて崩れ落ちる氷塊は何やら野蛮で、ただの岩と水の流れに慈悲を見つけ出そうとする人の愚かさを笑っているようにも、春が乱暴に冬を追い立てているようにも、思えた。

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