鬱と診断されてから

とにかく、寝る。

寝るしかできない。


病院から帰宅して、家族に説明して、
そこからは薬を飲んでひたすら寝る。

枕元にはバスタオルを常設して、
ひたすら泣いて寝てを繰り返した。


もっと上手く立ち回れたんじゃないか?
本当はこうだったんじゃないか?
自分がダメだったんだ。


そうやって、ひたすら自分を責めて
悔しくて泣くだけだった。

そこから2ヶ月ほどは、ひたすら
パジャマのまま。素っぴんで過ごした。

365日あって、363日は化粧をしてたのに。
それくらい身だしなみはちゃんとできるのに。

ヘルニアが悪化しても病院に行くためには
必ず化粧をしていたくらいなのに。

なのに、何もできなくなった。

心配なのか猫たちが私の近くに居て、
泣くたびに顔を舐めにくるようになった。

普段あまり人を舐めない子たちなのに、
ずっと顔の近くにいる。

時々「大丈夫だよ」と言わんばかりに
大きなゴロゴロ音を私に聞かせながら、
胸元や顔の周りから離れなくなった。


その頃には、味覚がなくなった。

そもそも食べる気力もないのだけれど、
食べなきゃとは思っていたので半ば
無理やり食事は摂っていた。

でも、味はしない。

匂いもわからないし、無味無臭の何かを
ずっと口に入れているようで気分が悪くて
ほとんど食べ進められない。

そして、また寝る。


眠りが浅いと言うよりは、起きている
今が現実なのか夢なのかがわからない。
フワフワっとした時間が過ぎる。

時折心配するような連絡が入るけれど、
申し訳ないと思いながら返事はしない。

体温の調節も上手くできないらしく、
まだ暑さが残る時期だったのに毛布を
出してくるまっていた。

不安からなのかもしれない。
何かにくるまっていないと落ち着かない。


本当は全部を止めて、ただ生きてるだけの
状態にしたいと思っていたけれど。

「お母さん」であることには変わりないので
朝がくれば洗濯物は干すし、ご飯も作る。

品数が減ることや、味がおかしいことに
家族は何も言わなかったけれど。

夫は家事ができるから任せても良かったの
だろうけど、そうすると本当に自分の
存在する意義がわからなくなりそうだった。

10分で終わる洗濯干しに2時間かかり、
30分で終わる食事の準備に3時間かけ、
ただひたすら毎日を生きて過ごすこと
だけにした。

出来映えがどうとか関係なく。
自分でできる生存確認のような意味合いで。

その合間にも、勝手に涙がでてくるので
いつも風呂上がりのようなスタイルに。

パジャマで肩からバスタオルをかけ、
寝るかウロウロするかだけ。

そんな生活が続いた。


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