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スゥイングのいるミュージカルを応援しよう

久々にテレビを見ました!
noteにも、コメントにも何度か書いておりますが、私、テレビの「番組」はほぼ見ません。
そもそも、私の部屋のテレビは、テレビ端子を繋いでおりません。
Amazonスティックと、DVDプレーヤーを繋いであるだけ。
地上波は見られないのです。

ごくたまに、大きめな地震が来た時など、なにか特別な理由がある時は、別の部屋にある地上波が見られるテレビをつけるのですが、今日は久々に地上波を見られるテレビをつけました。

理由は、某音楽番組が、ミュージカル特集だったから。

この秋、話題のミュージカル作品が3作品揃い踏みで、楽曲を披露すると聞いたら、見たくなるのが人情というものです。

しかも、しかもです。

『エリザベート』カンパニーからは、東京公演ではお目にかかれない芳雄様がご出演!
見ないわけにはまいりませんわね。

と言いつつ。

実は、私、宣伝兼ねたこの手のテレビ番組があまり好きじゃない。

まず、尺の問題。
今回も、『ヘアスプレー』『エリザベート』は、メドレーでしたが、曲のいいとこどりのつもりなんでしょうが、ミュージカルの曲って、セリフの一部だし、シーンの重要な構成要素だし、それをつまんでショートバージョンで見せられても、いきなり空気感はなかなか作れないものです。

『ヘアスプレー』は、オープニングとエンディングのいわゆる「全員ナンバー」を披露したので、お祭り騒ぎなノリで押し切れたけど、『エリザベート』は、可愛そうでしたね。
テレビの番宣の限界なんだよなぁ。

でも、死神役芳雄様の人間じゃない感は、ちらりと見え隠れしていましたね。
あー、やはり福岡行くべきか悩む。

一曲のみの披露だった『キンキー・ブーツ』は、主役の小池徹平さんが欠席の中で、ローラのナンバーのみの披露。
一曲なのに、こちらもショートバージョンだったから、本来なら小池徹平さんも入って歌う曲が用意されていたんだろうなぁ。
あの曲か、あの曲か。。。妄想が膨らみます。返す返すも残念です。
あの衣装は番組用で、劇中のものではないという説明でしたけど、なぜ、あえて?
しかも、『Land of Lola』のイメージじゃないですよね。
番宣のビジュアル見た時、てっきり『What a woman』を歌うのかなと思ってました。
珍しい選曲だなぁ。。って。

もしかすると、再演に合わせて、衣装も変更になったのかな。
それで、お披露目できないとか。
歌詞も一部変更になってたし、またまた妄想が膨らみます。

とにもかくにも、どの作品も、チケットの入手が大変困難な作品ばかり。無事に幕が開いて、最後まで駆け抜けられますようにと、祈るばかりです。

さて、相変わらず前置きが長いスタイルですが。。。

最近の日本ミュージカル回の潮流として、私が注目しているのは、スゥイングの存在。
スゥイングとは、複数の役の代役としてアサインされる俳優さんで、ベテランアンサブルの俳優さんが担当される事が多いです。
ある意味で、名誉あるポジションだと思いますし、実際、人気はプリンシパルキャストの俳優さんに敵わずとも、実力では別次元という方もたくさんいます。

ブロードウェイでは、アンサンブルの俳優さんが、メインキャストの代役にアサインされている事はよくありまして、それは、情報としても公開されているのが当たり前です。

主役の代役ともなれば、その実力は推して知るべしで、シングルキャストで回す旅公演などでは、メインキャストには、ほとんど代役がついています。
コストをかけずに、沢山の人に作品を届ける知恵として、仕組みが発展してきたのでしょう。

それを複数の役でこなすスゥイングとは、俳優さんにとっては、主役以上の経験かもしれません。

そんなわけで、ブロードウェイなどでは、よく知られたスゥイングですが、日本ではなかなか導入がされてきませんでした。
日本のミュージカルマーケットは、個々の俳優さんのファンに牽引されて発展してきたというのが、ひとつの理由かなと思います。

作品の良さより、役者の人気で良し悪しの評価がされる世界では、代役で上演するくらいなら休演を選択するカルチャーだったのです。

それに風穴をあけたのが、劇団四季。
はじめから複数の俳優さんをひとつの役にアサインして、シャッフルキャストで回す。
やがて、レミゼなど、グランドミュージカルの公演でも、ダブルどころか、トリプルキャスト、クワトロキャストが当たり前になっていき、熱心なファンの方たちは、全キャストを全クリするという「作品のファン」が育ちつつあるのが、今の日本の状況かなと思います。

代役では受け入れられないけれど、初めからキャスティングされているプリンシパルキャストなら、マーケットも好意的。
うまいソリューションだったのですが。。。

コストがかかるんです。

第一線で活躍する俳優さんは数が限られる中、大勢を長期間ブッキングする事になるわけですから、制作側としては、できれば少ないメインキャストで回したいのが本音だと思います。

全クリしたくなるような顔ぶれを、あっちのミュージカルでも、こっちのミュージカルでも集めるって、大変じゃないですか。

さらに、だ。

昨今の劇場を取り巻く状況の中で、休演のリスク回避の意味でも、ひとつの役により多くの俳優さんをキャスティングする傾向が高まってきたように感じます。
カンパニーが巨大化しているのです。
ますますコストがかかる。
それでいて、休演による損失のリスクも下がるどころか上がってしまう。いろいろ辛い。

ロングランで稼げる作品ならともかく、全部の作品でそれをやるのはなかなかビジネス的に難しい。

そこで、注目されるようになったのがスゥイングなのかなと。

プリンシパルキャストを務める俳優さんほど有名じゃないかもだけど、いざとなったら、この俳優さんが演じることもありますよ!

と観客に事前にさりげなーく断っておく。
それがスゥイング。

今回、『キンキー・ブーツ』にも、『エリザベート』にもスゥイングの俳優さんがアサインされ、キャストとしてお名前が公開されています。
しかも、なにげに、みなさん芸達者さん揃いなんです。

これは、本当に素晴らしい事です。
なにが素晴らしいかって、

『作品として人が呼べる』

というカンパニーの自信の表れだと思うのです。

『ヘアスプレー』は、とても素晴らしい作品です。大好きです。
英語で見るとスラングバリバリで、ちょっとアレですが、日本では、そこまで下品にならないでしょう。
でも、日本初演。
話題性は十分ですが、認知度という点で「作品で人が呼べる」域ではないと思います。

その点で、『エリザベート』と『キンキー・ブーツ』は、もうその域に達しているのだなぁと。
『エリザベート』は、宝塚の初演からかれこれ20年以上の上演実績がある名作ですが、『キンキー・ブーツ』は、まだ初演から数年で、3回目。

ミュージカルの素晴らしさをもっともっと多くの人に伝えたいと願っていた春馬君。
春馬君が愛した『キンキー・ブーツ』が、異例の短期間に、『作品として愛されるミュージカル』の仲間入りをしましたよ、と伝えたいなぁ。

今回の再演では、心がザワザワする春馬君のファンの方も多いと思います。
たしかに、春馬君はステージにはいないかもしれない。
でも、春馬君は、日本の『キンキー・ブーツ』の歴史を作った1人だったという事実は変わらないし、その実績があっての、今年のカンパニーなのです。
それをスゥイングの存在が示しています。

どうかどうか、休演する事なく、1人でも多くの観客に、あの高揚感と作品のメッセージが届きますように。
春馬君もきっと、どこかで見守っているはずですから。

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