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【雑文】舞台の映像化の話〜アートとして、ビジネスとして〜

Rickyです。

週末、ミュージカル『NINE』をライブ配信で観ました。

ミュージカルNINE公式Webサイト

秋になり、日本では劇場もだんだん本格稼働体制になって、観たい作品が目白押しの中、本来なら好きなジャンルの作品なのに、優先順位をつけたら、諸般の事情でなぜか上位に来なかった『NINE』。
公演直前に公開された公開稽古の映像を観て、びっくりしました。

城田優さん、こんな声出せる人だったっけ?(失礼!)

独特な抜け方をする高音と、バリトン歌手のように響く低音、どちらも迫力満点。
好き嫌いはあるかもしれないけど、ミュージカル俳優さんとしては、個性的でよきよき😊

一瞬、観たい衝動に駆られましたが、お財布事情とスケジュール事情により、断念か。。。とがっかりしていたら、ライブ配信の知らせ!
1回線あたり4000円って!
家族4人で観たら、ひとり1000円。
学生演劇かっ!🤣

万が一、定点カメラからの「ださださ資料映像」みたいな映像でも、4000円なら、ま、いっか!と観る事にしました。
ありがたや。

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コロナ騒動によって、様々な舞台が映像で観られるようになりました。「生の舞台を映像で観られる!」、すごく現代風な、新しい試みかと思いがちですが、思い起こせば、録画された舞台をテレビが放送するというのは昔からありました。
歌舞伎、能、狂言、宝塚…子供の頃の一時期、劇場が近くにない地方都市に住んでいた私は、よくテレビで舞台作品に触れていました。
ただ、音が悪かったり、カメラワークが単調だったり、作品としては、「舞台をそのまま撮影している」以上でも以下でもないのが普通だった気がします。

そんな中、画期的だったのは、2014年に制作された『ビリー・エリオット ミュージカルライブ リトル・ダンサー』。
ウエストエンドで上演された『ビリーエリオット』を撮影して映画化した作品で、ミュージカル『ビリーエリオット』が観られない国では、大きな話題となりました。
日本では、一部のマニアの間では大盛り上がりでしたが、ぶっちゃけヒットとは程遠い状況でした。宣伝活動もほとんどされてなかった印象です。それでも、映画版の公開から数年後に、ジャパンキャストでの上演が実現したし、さらに今年は再演も実現。映画版が日本のミュージカル界に与えたインパクトは、少なからずあったと思います。

この作品は、舞台の良さと映画の良さの、まさにいいところ取りで、映画でないと楽しめない「舞台真上からのアングルのピルエット」とか、あっと驚く画角からの映像盛りだくさんで、舞台を観ていない人はもちろん、舞台を観たことある方こそが、さらに楽しめる作品でした。

舞台作品の実写化(RENTやレミゼなど)、映画作品の舞台化(ライオンキングやニュージーズなど)とは一線を画して、舞台で上演されたものをそのまま映像化するという、まさに新ジャンルだなぁと、当時ワクワクしたものです。


ウエストエンドやブロードウェイミュージカルの中には、日本のカンパニーが上演権を持っていても許可が降りない作品や、日本のエンタメのレベルが上演基準を満たさないと判断されて、上演できない作品が少なからずあると聞きます。また、作者の意向で『英語圏』以外での上演、他言語に翻訳しての上演不可とか、作品の文化的背景にからんで、他国での上演が許可されないとかいう話も聞きます。

観たきゃ、観に来い!

と言われればそれまでですが。。。

だけど、英語圏しばりってなんだよ!と思うわけです。「英語圏カテゴリーの人」は世界中にいます。

舞台を映像化した作品が新ジャンルの表現の形として認知されていけば、そう言った作品を家に居ながらにして観られる、とか、いろんな可能性が出てくると期待しているのは私だけではないはず。世界的に、劇場に人が集められない昨今の状況を見ても、このジャンルの可能性はビジネス的にもありでしょう!と思うのです。

今年前半、次々と公演が中止され、劇場がクローズする中、舞台作品の映像化の試みは一気に加速しました。舞台作品って、資料用として、なんらかの形で映像として残していることがわりと当たり前。だからそういう映像を使って色々なコンテンツが作られました。

ただ「作品」として世に出す前提じゃないから、映像の質、アングル、音声のミキシング等々、そのまま映像化して出すには、いろいろ問題もあるんだろうと思います。でも、やってみた価値はあったと思います。

例えば、この夏、ディズニー+で、ブロードウエイで話題沸騰のミュージカル『ハミルトン』の舞台映像が公開になりました。このミュージカルはブロードウェイで大人気の作品。チケットの入手は「ハーバードに受かるより困難」と言われる伝説のミュージカルです。NYまで行ったところで、そう簡単に観られない。それがテレビで観られる幸せ。ありがとうディズニー♡

で、ウハウハしながら見たんです。で、いろいろ映像化の難しさを痛感したわけです。例えば、とある役のソロの部分で、抜きのアップの映像になるんですが、演じている俳優さん、めっちゃつばが飛ぶ。見た目にも決して美しくない映像が大画面にどアップで、数分間流れるわけです。
なんか、他にやりようがなかったのか、と途方にくれました。

音楽があるシーンとないシーンの音声の調整もいまいちで、つど音量を調節しながら観ました。スイッチングも追いついていないところがちょいちょい。

生配信でなく、録画なんだから、もう少しどうにかできたはず。100歩譲って、無料ならしかたないかもしれないけど、有料チャンネルでそれはどうなの…と思わずにはいられませんでした。

もちろん、「配信で観られてよかった!」という気持ちの方が強かったのは事実です。長年観たいと思っていた作品だったし。でも、「もう少しなんとかしてくれよ」と思ったし、ディズニークオリティのコンテンツとは思えなかった。

なので、そういうのは過去の話にしてほしいのです。これから上演される舞台は、是非、配信を前提とした撮影をして残したらいい。先日、東京公演ののこりすべての日程で中止が決定した『RENT』の例を見ても、私、キャストでもスタッフでもないけど、すごく悔しいのです。チケットを買って楽しみにしてたのに観られなかった方はもちろん、地方に住んでいて観たくても観られない方や、病気、育児や介護で観に行きたくても劇場に足を運べない方は日本中にたくさんいる。劇場が閉まって、生じる機会損失を、そういうマーケットが少しでも埋められたら、win-winじゃないですか!

いや、場合によっては、そういうマーケットは意外と大きいのかも。インターネット回線を使った配信なら、マーケットは世界中なんだし。

世界的な傾向として、舞台で活躍していた俳優さんが、最近はドラマや映画に活躍の場を移しています。人気俳優さんなら、生活のためそれもありでしょう。でも、生の舞台が好きな層は、舞台が観られないからと言って、映画には行きません。「舞台」を観たいんだから!

でも、舞台の映像化なら、観ます!

ただし、クオリティが重要。

舞台をただ映しただけではだめなのです。舞台を生で見るよりも、より観客が満足するような付加価値がないとだめ。『ビリーエリオット』における、真上からのピルエットのような。

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翻って、『NINE』はどうだったか。

まず、「ライブ配信」がひとつのキーワードかなと思います。生だとわかっていれば、多少のハプニングはつきものですし。例えば、コロナ演出の関係で、コーラスなどはすべて録音なのですが、やはりソロで生歌の部分と、録音の部分のつながりがぎくしゃくしていました。多分、配信で見るほうが劇場で見るより、きっと気になります。そこは技術的に改善の余地あり。
観る側の集中力を削がれるので、是非早く解決してくれるといいなあと願います。劇場での上演でも同じ問題が起こっているし。

抜きの映像と全体の映像のスイッチングは、個人的にはまずまずうまく行っていたと思います。

でも、舞台上で起こってるいる事の中で、自分の観たい部分とディレクターさんの映したい部分が違う、ということは起こります。そこは見る側が許容しろよ、と映像クリエーターサイドは思うでしょうけれど、舞台ファンはそれを好みません。そこで、メインキャストについては、個別にカメラがついて、追いたい役だけを見続けることができたりすると、舞台ファンとしてはうれしいかも。イメージとしてはずっと推しだけをオペラグラスで追うような感じ、でしょうか。

あと、『NINE』のケースでは有料でアーカイブなしでした。これは今後の在り方として、ありだと思います。

というか、有料はもう必須です。コロナが始まったばかりの頃、期間限定とはいえ、無料で様々なコンテンツが公開されました。私もいろいろありがたく観させて頂きました。けど、あれはあかん。やっちゃあかんです。ちゃんと料金は徴収しましょう。たくさんのその道のプロが携わって作った作品なんだし、料金を払う事こそが、作品を作ってくれた方々へのリスペクトの証です。

アーカイブなし、はいろんな考えがあると思います。個人的には、ライブ配信の機会がもう少し多ければ(『NINE』は同じ週末2日間で2回)、アーカイブはなしでいいし、DVD化(ダウンロードも含め)がいいと思います。上記と同じ理由で、ちゃんとしかるべき料金を徴収すべきと思うからです。

ただし、映像のクオリティはもう少し追求すべきかな。そのためにも、ゲネくらいのタイミングで、それようにちゃんと撮影するようにしたらいいと思います。音声などをちゃんと調節して、映像作品として世に出してほしい。

そうすると、生で観て感動した人たちも、またきっと見る。舞台で見逃してしまったディテールを答え合わせしたいじゃないですか。私なら、観ます!劇場での観劇のチケットには、最近リピーターチケットがあります。一度観た人が、もう一度観たいときに割引になるチケットです。
それと同じで、劇場で観た人が配信を観るなら、少し割引にしたら、ついつい買っちゃうと思う。

私なら、買います!(笑)

観劇後、頭熱くなってる時って、金銭感覚おかしくなって、ロゴ入りグッズとか買っちゃうじゃないですか。でも、グッズより配信のチケットの方がいい!

今のところは私の妄想だけど、きっと偉い人はもうこんなのとっくに考えてるよね。

そこそこの規模の公演では、ぜひぜひ定番になってほしいです。

というわけで『NINE』の感想はまた後日。

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