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【音楽遍歴】2005年に行ったライブ②


はじめに

2004年はいわゆる2大洋楽フェスが始まってから、初めてフェスに行きませんでしたが、この年は全日ではないものの、Fuji Rock FestivalとSummer Sonicに行き、大阪でも開催されたElectraglideにも行きました。それ以外では、2003年のフェスでパフォーマンスして以来の初単独ライブとなったInterpolLemon Jelly、まさかの初来日となったThe Delgadosの単独公演などを見に行きました。特に、The Delgadosはまさかの来日だったのと、この後で解散(最近、再結成の動きがありますが)してしまったので、本当に貴重なライブになりました。

今回はそんな中から、極上メロディ奏でるグラスゴーの裏番長The Delgados、変幻自在のぷにぷに人肌ダンスミュージックLemon Jelly、クール&グルーヴィな新人バンドBloc Partyの3本のライブに関する出来事について書きたいと思います。

ライブ情報

  1. Interpol(2005年1月26日@心斎橋クラブクアトロ)

  2. The Chemical Brothers(2005年2月9日@Zepp Osaka)

  3. Manic Street Preachers(2005年2月12日@Zepp Osaka)

  4. The Delgados(2005年2月15日@心斎橋クラブクアトロ)

  5. Lemon Jelly(2005年3月29日@Big Cat)

  6. Bloc Party(2005年5月6日@心斎橋クラブクアトロ)

  7. Fuji Rock Festival '05(2005年7月30-31日@苗場スキー場)

  8. Summer Sonic '05(2005年8月13日@Open Air Stadium)

  9. Super Furry Animals(2005年10月20日@心斎橋クラブクアトロ)

  10. Doves(2005年10月28日@Big Cat)

  11. Electraglide(2005年11月26-27日@ATC Hall)

出来事もろもろ

The Delgados

The Delgadosが来日?客入るのか?」と思いつつ心斎橋クラブクアトロに向かうと、お世辞にも大盛況という訳には行かなかったけれど、テーブルが出たままの状況で7割くらいは埋まっていたので一安心。定刻を少し過ぎた頃に、オープニングアクトのAutour de Lucieが登場。フランス人の男女2人組で、女性がボーカルとギター、男性がキーボードというシンプルな構成。物憂げなメロディとボソボソ歌うフランス語の組み合わせは癒やしにはなりそうだけど、平板的過ぎてインパクトは小さい。終盤に演奏した英語の曲でちょっと盛り上がったけれど、オーディエンスの温度を上げ切れないまま約30分の持ち時間終了。

20分程のセットチェンジの後、サポート2人を含む6人が登場。Alun WoodwardPaul Savageは繊細そうで、Emma Pollockは小柄で可愛らしく、Stewart Hendersonは無駄にデカイ。そして、初来日公演は"I Fought The Angels"でスタート。メンバーもオーディエンスも腹を探り合っているような緊張感があり、身体を揺らしながらも音楽に聴き入っているオーディエンスが多数。続く"Is This All This I Came For"では、Alun WoodwardEmma Pollockのツートップのボーカルが良い感じで、ソロはもちろん、ハーモニーもバッチリ。新作がポップだったので、ライブも軽めかと思いきや、ギターを激しく掻き鳴らすシーンも多く、オルタナティブ色も垣間見えます。

静かめの反応が変わったのは、日本酒をラッパ飲みしたStewart Hendersonがメモを見ながら、「こんばんは。私は日本語を話せません」と日本語で話したとき。このウケに気を良くしたのか、その後は曲の間には酒を煽りつつ雑談。「今日はカラオケバーに行って、Queenを歌うんだ」とか「バンドを初めてから10年で初めての日本だ。今日来てくれた人ありがとう」といった他愛ない内容だけど、徐々に打ち解けた雰囲気が拡がりはじめます。"Everybody Comes Down"ではメンバーからの要求ではありましたが拍手も起こり、ポカポカした春のようなメロディがと微妙に暖まったフロアの温度が良い感じ。その後は、演奏しては雑談し、雑談しては酒をラッパ飲みし、演奏の途中にはタバコを吸うというサイクルで進んだ本編1時間10分、アンコール10分間は本当にアッという間に過ぎて行きました。

キュートさと激しさの間でクルクルと曲の表情を変える"Accused of Stealing"、ストリングスとギターで骨太に変身した"The Arcane Model"などの本編も素晴らしかったですが、前年に亡くなったJohn Peelについて話した後に始まった深い悲しみから抜け出す力強さを持った"Pull The Wires from The Wall"から"No Danger"のアンコールの流れは別格。特に、"No Danger"は消え入りそうなストリングスの音から始まり、優しく暖かいメロディを繊細なボーカルがなぞりながら昂揚感を高めていき、ノイジーなギターやハイハットを多用したリズム、キーボードにストリングスが絡まりながらSpiritualized並みのサイケデリアを産みだして大団円。

Belle & Sebastianの繊細なアンサンブル、Franz Ferdinandのポップな爆発力、Mogwaiの強力な破壊力という異音楽空間を変幻自在に動き回る様子は、まさに「グラスゴーの裏番長」。ライブ終了後にStewart Hendersonが酒瓶を片手にフロアへ下りて来て、入口横で見にサイン会が始まるなど、ライブ途中で生じたアットホームさがライブが終わった後も続いていて、ほっこりした気分になりました。

Lemon Jelly

前日の東京公演が機材トラブルで2時間遅れで始まったらしいので、キャンセルになっていないか心配しながらBig Catへ。キャンセルにはなっていなかったので、後方のPAブース横で開演を待っていると、19時少し過ぎにPAブースに2人のヒゲ男が登場。「Good Evening Osaka!」と叫んだかと思うと、「これからみんなでゲームをしましょう。勝った人には大阪のライブ用に作ったスペシャルミックスCDを差し上げます。最後の3枚なので、是非ゲットしてね(意訳)」とのこと。幾つかのヒントにマッチする会場内に潜んでいるスタッフを見つけるというゲームだったけど、人探しの得意な人が多かったのか、一瞬で終了(笑)

19:30頃にフロアの照明が落とされ、Fred DeakinNick Franglenが満面の、「ニコニコ」っていう音が聞こえてきそうなくらいの笑顔で登場してライブスタート。1曲目は"'64~'95"の"Come Down on Me"。シンプルなリズムトラックが淡々と繰り返される中、少しずつウワモノが重ねられ、低めの音温度を保ったままロック的なノリへと展開する曲はCDよりもライブ向き。人肌の温もりを感じさせる"In The Bath"を挟んだ後に早くも"Spacewalk"。ダンスミュージックへのアコースティック楽器の導入という方法論自体にもはや新規性はないものの、キュートでカラフルなオブリガードは彼らの真骨頂。愛らしさをドーピングした"His Majesty King Raam"では更にアコースティックへ重心を移し、飾り音符を多用したエレピの間奏が極上のアダルトオリエンティッドなダンスミュージックを奏でます。

"Don't Stop Me Now"と"Only Time"では夢見心地だった気持ちが現実へと引き戻されますが、"Make Things Right"や"Ramblin' Man"で再びリラックスモードへと回帰。Lemon Jellyの音楽はプルプル揺れるゼリーを通して覗いた世界のように、目まぐるしく変化する面白さに溢れていて、固定観念に囚われずに美味しいところをツマミ食いするフットワークの軽さも抜群。

フィニッシュブローが弱いという印象が一変したのは"Nice Weather for Ducks"。可愛らしいなオカズ的フレーズを連発するギターダンスミュージックでフロアの熱気を急上昇し始めたと思ったところで"Soft"を挟んでみたり、フロア指向へアップグレードした"Stay with You"へと流れてみたりと流れの中で仕留める変幻自在さ。そして、「これで終わりだろうなあ」とお腹いっぱいになったところで、「今夜はあと1曲やるね」というMCと共に始まったのは"The Staunton Lick"。カントリー色の濃いアレンジは、それまでのフォーキーな人肌ダンスポップとも一線を画していて、彼らの守備範囲の広さを思い知らせてくれる内容でした。

演奏を終えると、「ジャア、マタネッ!」と流暢な日本語を操り、拍手をしながらこれまた満面の笑みでステージから去って行きました。The Chemical Brothersのように強迫観念的デジタルビートに共振した結果でも、Underworldのようにストイックに内面へ蓄積したエネルギーを一気に放出した結果でもなく、自然発生的にフロアに沸き起こったユルユルのダンスと幸福感。「もの凄いものを見た」という感覚ではありませんが、「メチャクチャ楽しかった」と思える時間でした。

Bloc Party

この日はThe Rakesがオープニングアクト。18時ジャストイン始まった彼らのライブは、プリミティブで生命力に溢れていて、The Libertinesのような狂気一歩手前のテンションの高さも相まってインパクトは小さくなかったものの、ちょっとメロディが平坦的なこともあって、印象の持続性は弱め。ポストパンク~ニューウェーブ的なその他大勢から抜け出すには、あと一押し何かが欲しいところ。

20分ほどのセットチェンジを挟んで、19時少し前にBloc Partyのメンバーが登場して、"Like Eating Glass"でライブがスタート。曲が始まった瞬間に、前方でジャンプが自然発生的に沸き起こり、ライブが進むに連れて、アドレナリン流出弁のリミッターは吹き飛ばさる人が増えて行き、興奮度は完全に青天井の状態。

ただ、僕はアルバムを聴いたときに受けた衝撃を感じることができず、そんなフロアの歓喜と狂気の喧噪にシンクロできずに後ろで冷静に聴いていました。その理由は、饒舌で屈強なリズムセクションという彼らが持つ一つの強みは表現されていたものの、音の間に効果的に隙間を作る緻密なアレンジというもう一つの強みが失われていたことで、片肺飛行の不完全燃焼感を強く感じました。難解なリズムを正確に刻むリズムトラックにボーカルとギターが絡むことで表現されていた「冷たいグルーヴ」はなく、「肉感的なグルーヴ」が台頭するよくある普通のライブ。

そんなモヤモヤはその後も続き、アルバムの曲のスピードとボリュームを単純に拡大したパフォーマンスは、アルバムに満ちていた独特の世界観を熱狂の中に落としてしまったような印象。もちろん、ライブならではの力強さが良い方向に作用した曲もあって、悪いライブという訳ではなかったものの、「その他大勢」のバンドが決して真似することができない「冷たいグルーヴ」でフロアを満たして、その上で熱狂することをを見たかったというのは過ぎた期待だったのでしょうか。

セットリストはコチラ

おわりに

今回は前回に続いて、2005年に行ったライブの内、上半期に行った3本のライブについて書きました。Lemon Jellyはフジロックフェスティバルで見たものの、初単独ライブ、The Delgadosは奇跡の初来日、そしてLemon JellyThe Delgadosはこの後活動を休止することになるので、本当に貴重な場面に立ち会うことができてラッキーでした。

次回は、ColdplayBeckMercury RevFatboy SlimNew OrderSigur Rósらの豪華なアーティストが出演したフジロックフェスティバルについて書いてみたいと思います。


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