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【感想】 Memento Mori(Depeche Mode)

はじめに

Depeche Modeがニューアルバムをリリースしました。あまりレビュー的な記事は書かないつもりでしたが、中学生の頃から40年間聴き続けている特別なバンドということもあり、感想をメモっておこうと思います。

アルバムリリースまでの動き

2022年5月26日、朝起きてInstagramを何気なく見ていると、Depeche ModeのオフィシャルアカウントからAndy Fletcherが亡くなったとのメッセージが投稿されていました。Andy FletcherDepeche Modeの創設メンバーの1人で、音楽面での直接的な貢献は大きくはないものの、バンドが40年間活動を継続できているという点に対する貢献は絶大でした。

そんなAndy Fletcherが亡くなりました。

「ああ、これでDepeche Modeは解散しちゃうのかなあ」と思っている中、8月にしばらく更新のなかったInstagramにレコーディングスタジオの写真が投稿され、9月末に10月にプレスカンファレンスが行われるというアナウンスがあり、プレスカンファレンスでは2023年3月にニューアルバムのリリースとワールドツアーがキックオフされるという発表がありました。

プレスカンファレンスでは新曲("Ghosts Again")の一部が流れたものの、それから新しい情報がリークされることはなく、2023年2月9日にシングル"Ghosts Again"がリリースされ、そして3月24日にアルバム"Memento Mori"がリリースされました。

天使の羽で"Memento Mori"を表現したアートワークも素晴らしい

感想

"Memento Mori"はDave GahanMartin Goreのデュオになって初めてとなる6年ぶり15枚目のスタジオアルバムです。プロデュースはSimian Mobile DiscoJames Ford、ミキシングとエンジニアリングはMarta Salogniが担当し、彼らはクロージングトラック"Speak to Me"にもクレジットされています。また、Martin Goreが手がけた曲の内、4曲がPsychedelic FursRichard Butlerとの共作になっています。

事前に公開されていたのが”Ghosts Again"と"My Cosmos Is Mine"という対極的な2曲だったので、アルバムがどんな感じになっているか期待と不安が半々でしたが、結論としては、この2曲をエンドポイントとして、明と暗のバランスを巧みに取っている楽曲が揃っていて、自己満足に陥らずに彼らの世界観を表現した内容に仕上がっています。

(サウンド的に)明の"Ghosts Again"

(サウンド的に)暗の"My Cosmos Is Mine"

息が詰まりそうなほどに重い"My Cosmos Is Mine"で先行きの不安を煽りつつ、80年代的なシンセサイザーの音を使って、メジャーコードとマイナーコードの間を自在に浮遊する不思議な音感の"Wagging Tongue"、さらに煌びやかな音色で装飾を施した2020年代のエレクトロアンセム"Ghosts Again"と展開する序盤からメリハリが充分に利いていて、アルバム全体への期待が高まります。

その後は、Martin Goreがボーカルを取った現実と夢の間のような雰囲気が漂うエレクトロムーディーポップ"Soul with Me"、レトロ感が漂うメロディとアレンジをバックに歌うDave Gahanの低音ボーカルが魅力的な"Caroline's Monkey"と、変化球を交えながらも"My Favorite Stranger"のような直球も織り交ぜながら進んでいきます。

緩んだ空気が再び引き締まったのは"People Are Good"以降。ここから"Never Let Me Go"までは近年陰を潜めていたエレクトロポップバンドとしての楽曲を繰り出していて、しかも最新バージョンにアップデートされているのも頼もしい限り。そして、クロージングトラックの"Speak to Me"では、光と影をヒンヤリと、しかし情感タップリに歌い上げ、アルバム全体をサマライズ。ここから再び漆黒の"My Cosmos Is Mine"にシームレスに無限ループできます。

思い入れのあるバンドなのと、Andy Fletcherの死という出来事によって、評価が多少上振れしている気もしますが、この数作ずっと感じていた「コレじゃないんだよな感」が払拭されたのは確か。斬新なサウンドの提案までは至っていないものの、これまでの彼らの楽曲には見られなかった新機軸もあり、過去の遺産と円熟味だけで乗り切った作品とは一線を画しています。

おわりに

最後に来日してから30年以上が経っていますが、2024年春頃には久々となるアジア&オーストラリアツアーを計画しているとか。彼らも既に60歳を過ぎているので、大々的なワールドツアーはこのツアーを最後になるかも知れません。ひょっとしたら彼らもそんな風に考えていて、長らく回っていない国にも行こうとしているのかも…とか考えてしまいます。

3月23日から始まったツアーは、人生の全ての瞬間がフラッシュバックしてきそうなセットリストなので、今回こそ来日してくれないものかと願っています。

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