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フジロック'23 day1 備忘録

念願だったフジロックに初めて参加しました。めっちゃ楽しかった!!ということで忘れないように…とここに残しておきます。高校生の時に「20〇〇 フジロック 感想」と検索してフジロックについてのブログを見つけてよく読んでいたのだけど、それに連なりたくて今文章を書いています。

前段(行くにあたって)

フジロックの存在を初めて意識したのは2016年、聞いていたラジオからCMが流れてきた時でした。「ヘッドライナーはレッチリ、ベック、シガーロス!!」少しずつ洋楽に興味を持ち始めた私にとって(シガーロスは知らなかったけど…)そのCMはいたく魅力的に聞こえました。実際にラインナップを見たら知らないアーティストばっかりで驚いたことも覚えています。今見返すとスクエアプッシャー、ウィルコ、バトルス、トータス、Exprosion In the Sky、The Album Leaf…と自分の趣味にどストレートなメンツで驚きます。その後、フジロックの昔のラインナップを元にいろんなアーティストを掘るなどしたので、フジロックのラインナップのドメスティックさは自分の音楽趣味の形成に大きすぎる影響を与えたと思う。

2020年、無事に大学に合格した私はヘッドライナー:The Strokesの名前を見て初めてチケットを購入しました。華の大学生活。夢のフジロック。ナンバーガールやモノアイズという中高時代を彩ったアーティストも出演するということでかなりワクワクしていたのですが、コロナウイルスの影響で開催は断念、というかフェスどころか学校にも通えないという始末でした。ただ、過去のフジロックの名演奏配信をTwitterで実況するのは結構楽しかったし、一抹の寂しさはあれどインドアな私には結構合っているな、とも。そんなこんなで2021年、2022年も結局チケットを買わず、2023年、渋谷のスクリーンにヘッドライナー発表を見に行った友人からストロークスの出演決定の知らせを受け、

行きたい!!!!!!!!!!!!

チケットを買いました。

会場まで

フジロックの会場まで当初はバスツアーで行こうとしていたんですが、新幹線を調べてみるとめちゃくちゃ安くて、片道7000円かからない。そうすると1日参加で食事とか含め多く見積もっても4万円で済む。早く知っていれば良かった。


会場

朝早く到着したので、会場内を散策。苗場プリンスを左手に駐車場を抜け、サーカスやフードコーナーやらが並んでいて、山の中に新しい村が出来ている雰囲気。超ピースフル。「あの」ゲートを抜けるとサウンドチェックの音が鳴っていて、橋を抜けるとオアシスやらレッドマーキーの看板が見える。1番グッときたのはグリーンステージに足を踏み入れた時で、茂みを抜けるとパッと視界が開けてYouTubeで何回も見たあのステージが視界に入った。

まだ時間が余ってたのでボードウォークを通って散策がてらFIELD OF HEAVENへ。この道がまたザ・フジロックって意匠が満載で、サマーオブラブ/ヒッピーカルチャー的なフラッグ、ロックの伝説になった方々を悼む看板、小屋の中のフリーピアノ、森の木々の隙間からは苗場の山々が望める。完璧なロケーション。ここで1番フジロックに来たな!!という感慨に耽っていた。

ただ、意気揚々とmaya ongakuのライブに向かっていたはずだったんですがmaya ongakuが出演するステージはまさかの苗場プリンスの奥で、断念。

ライブアクト

FEVER333 GREEN STAGE

それこそFEVER 333はフジロックがきっかけで知ったアーティストで、いつかの澤部MCのフジロックスペシャルで知った記憶がある。ただ当時からバンドメンバーは変わっていて、ボーカル、ギター、ベース、ドラムの編成、同期音源も使ったパフォーマンス。見た印象としてはRage Against The Maschine、KORN、Linkin Parkといったミクスチャー/エモラップの延長線上のヘヴィネス、という感覚。何よりも観客を巻き込む力に優れていて、盛り上がる箇所を適切に示すドラムとその肢体の動きとともに観客をブチ上げるドスの効いたベース、というリズム隊の力で開始早々グリーンステージでモッシュが起こりまくっていました。途中のMCで自身もふたりの子供の親であること、次世代へより良い空間を作っていく意味、そこに相応しいのがフジロックという場だ、と宣言し、アジテートしたボーカル・ジェイソンの観客への献身ぶりに目頭が熱くなった。途中で演奏されたblur「Song 2」のカバーが盛り上がりの一つのピークで、これから日本を訪れるバンドへの敬意なのか、ただ好きな曲なのかイマイチ判別できないが、原曲のギターベースドラムの三点セットで作られた最高峰のパーティーチューンにジェイソンのラップが小気味よく載っかるアレンジに誘われてモッシュピットに突っ込んでしまった。


Alexander 23 RED MUQUEE

ほぼ前情報なし、数曲聞いてめっちゃいい感じのインディーポップという印象だけ持って行ったAlexander 23。まずレッドマーキーという場の音響面でのアドバンテージをビシビシと感じた。西武ドームみたいに屋根と隙間があるから自然の開放感とライブハウスの密閉された厚い音を同時に味わうことができるし、何より日差しが無いから過ごしやすい。Alexander 23のプレイはベッドルームポップと80'sダンスポップを掛け合わせてモダンにアップデートしたような演奏で、The 1975以降だな〜と心地よく聞いていた。こちらもカバー曲がライブを引き締めていて、Tears for Fears「Everyone wants to Rule the World」のほぼ完コピには彼らのルーツをはっきりさせつつ、大味ないい意味での開き直り、そこから来るキュートさを印象付ける役割があった。


君島大空 合奏形態 FIELD OF HEAVEN

運よくインターネットの知り合いの方と会って君島大空のライブへ。こういったフェスでレアな海外アクトを差し置いて国内アクトを見るのが個人的に好きで、アウェイだからこそ気合の入った演奏や見たことのない一面を窺えると思う。何より私が君島大空を知ったきっかけは2019年のROOKIE A GO-GOにおける「遠視のコントラルト」のライブ映像であり、その思い出がアップデートされる絶好の機会だと期待していた。

初めて「合奏形態」を見て以来、今回のフジのライブが3回目だったのだが、間違いなくその中で最も完成度もパンキッシュさも実験精神もあらゆるパラメーターが満タンに近い状態でのライブだった。2020年、初めてライブを観た際は君島大空にスーパープレイヤー3人がサポートで入ってるすげーバンド、という演奏だった。今回は君島大空の脳内世界を拡張するための肢体としてバンドメンバーが存在する、という趣で、ベースやギター以外のシーケンサー、シンセサイザー、ルーパーを用いてオウテカやOvalに近いIDMを思わせるパートから変拍子を駆使したマスロック的演奏、そして彼のルーツであるハードロック/メタルのリフの応酬へ流れ込みつつ時にはオートチューンとピアノのみの独奏になる…などまさに脳内世界を覗いているようなライブだった。Don CaballeroとJames brakeの悪魔合体。山々をバッグに鳴らされるラストの「遠視のコントラルト」の解放感!!圧倒的でした。


IDLES GREEN STAGE 

何を勘違いしていたが、FOALSを見れる!!と思ってたんだけどIDLESだった。なんなんだ。でもかっこよかった。「肉弾戦」という言葉があるが、まさにその通りで、ギターのリフやドラムの一音一音が骨に響くし、ボーカルが有り余ったエナジーを解放するようにステージを縦横無尽に駆け回っていた。バスドラが雷鳴に聞こえた。と思ったら本当に雷鳴で雨が降ってきた。ちょっとだけ涼しかったが、でも暑い。お腹も空いたし途中で切り上げてオアシスへ。


Yves Tumor RED MUQUEE

すごい。事件だった。パンクやグラムロックといったジャンル、デヴィッドボウイやKISS、PILといったアーティストを豪快に飲み込み、異様な形で排出していくようなステージ。ジャンル混合、ざっくばらんな引用音楽は決して珍しくないが、Yves Tumorが優れている点はデスクトップでの構築に留まらず、圧倒的フィジカルで全てを咀嚼し肉体性に還元し、換骨奪胎を果たしている点にある。これはこのジャンルの要素だな…と頭では理解できる要素を並べていても全てを観客に曝け出し、受け止められないほどに解放するステージングの爆発力で体が勝手に反応していく。全員がドン引きしながらYvesが発するギラギラに引き寄せられていく。なんだったんだ。個人的にはもっと異形というか、ロックスター的近寄りがたさがあるのかなと思っていたが、それがいい意味で裏切られた。


eastern youth RED MUQUEE

eastern youth。かなり好きなバンドなんですが、結局初めて見たのはフジロックになった。曲がどう、とかではなく1番最初に吉野寿が鳴らした音に全てが詰まっていた。ハムバッカーとJC-120のハイが強調された音が吉野の噛み締めるようなコードストロークと共にザラっと響き、アルペジオでは日本の「エモ」とはなんたるかを体に叩きつけられたようで、今のANORAK!やくだらない一日が活躍するエモシーンの豊穣さの本当の始まりはこの音だったんだなと確信した。セトリもかなり良くて、「夜明けの歌」、「街の底」、「踵鳴る」、「青すぎる空」と静と動のバランス、絶唱、「街の底 人間たち 生きている」みたいな時折意識すると耳に入る日本語の鋭さ、といった私が思う「eastern youth」らしさを形作るような要素を短い時間ながら感じられてよかった。ベースの村岡さんがゴッリゴリで想像以上だった。半分ぐらいで切り上げたのをちょっと後悔している。「ソンゲントジユウ」を聞きたかったが、日本にいれば見れるでしょう。


Yo la Tengo FIELD OF HEAVEN

移動時間を考えて見るか見ないか最後まで迷ったヨラテンゴ、見た。夕方から夜にかけてのFIELD OF HEAVENは自然と人間の営みが最も美しく融合したような雰囲気があって、いろんな人がその場所自体に惹かれる理由がよくわかった。周りに海外の方が沢山いて「Yo!!!」「La tengo!!!!!!!!!!!」と叫びながら待機する時間さえ愛おしく、この場自体に愛着を持ち始めた自分がいた。自分は楽しいことがあると「終わってしまうこと」に対してすごい臆病になり、いつも楽しいことが始まる少し前のワクワクを留めておきたくなるタイプの人間なんですが、まさにそのセンチメンタルが浮かんで見えるような空間だった。新作はギターロック~ノイズアンビエントの間のバランスが物凄く自分好みな作品で、その新作からかなり多めに選曲されていた。フレーズよりも音自体に機微がこもっている繊細な音とそれを塗りつぶすノイズギターを数分ごとに繰り返すような序盤はまさにトリップというか、Yo La tengoにしか出せないシグネイチャーサウンドなのだと思う。また生で聞くとvelvet undergroundチルドレンとしての要素がかなり強いことが驚きで、メロディーとポエトリーリーディングの間で彷徨うようなボーカルはルーリード直系という佇まい。ただ「Big day Coming」も「Stockholm Syndrome」も聞かずにGREEN STAGEへ向かってしまったので単独公演にはなんとか行きたいです。

The Strokes GREEN STAGE

夕暮れ時のダニエルシーザーを最後だけちょろっと見て(歌が上手すぎる)、ストロークスへ。待機時間に周囲のお客さんが「自分とストロークス」みたいな話を延々としていて、私も「初めて借りた洋楽のアルバムが『Morning Glory』『Californication』『Is This It』だったんですよ~」と切り出して話に交わりたかった。ほぼ定刻通りに照明が落ち、「The Strokes」とあの80年代の映画のタイトルみたいなロゴがスクリーンに映し出された瞬間が感慨に耽るという意味ではピークで、その後はテンポ良く進むライブにを身を任せた。「The New Abnormal」を中心として新旧織り混ぜた前半、「Is this It」の曲を惜しげもなく披露する後半。時折ジュリアンの調子は危うかったが、所々のシャウトや声を張り上げる所はドンピシャにチューニングを合わせていたし、ちょっと気分屋な雰囲気は私の思うジュリアンカサブランカ像そのまんまでニヤニヤしてしまった。だからファンは甘いんだよと言われても言い返せない。
 元々大好きだった「Bad Dicisions」のパッと視界が開けるようなギターリフをフジロックという空間で聴けたこと、「The Adults are Talking」でギターリフを重ねる度に静かにメラメラと熱量が上がっていく様、「Juice Box」みたいな暴れそうな曲でも平熱を保つバンド全体のスタイリッシュさ…とひたすらベストモーメントが続くようなライブの中でも「Is this it」の曲が持つ魔力は失われていなかった。「これがそれ?」ってタイトルから分かるように、「Is this it」というアルバムの曲はバンドで作る音楽の正解をスッと叩き出していたのだと思う。もちろんギターロックの歴史の流れにあるけれど、どこまでもソリッドに削ぎ落とされたサウンドは熟練する隙もないほどに発売時点で完成されていた。勿論今回のフジロックでも過度なアレンジはなく、彼らがラフに演奏するだけで初めて聴いた時の「これじゃん!これしかないじゃん!」という感動が甦ってきた。完成されたバンドが完成された曲を完璧に演奏しつつ、その中でジュリアンの人間味がスパイスになりこの日だけのライブとして立ち上がる。本編ラストからアンコールにかけての「Reptilia」「Hard to Explain」「Last Nite」はバンドでコピーしたということもあって、リフもメロディーもドラムのフィルもベースラインも全部体が覚えていてストロークスと自分と苗場が一体化したような気さえした。約80分、一瞬だったけど、これまで人生で見たライブの中でもトップ3に入るようなライブでした。


PLANET GROOVE 深夜帯

1日目に限らず、今年のフジロック深夜帯のブッキングはとても冴え渡っていたように思います。新作アルバムの評価が高かったovermono、直前にBrainfeederとの契約を発表した長谷川白紙、コーチェラを経由したきゃりーぱみゅぱみゅ。また、vegyn、TSHAに関してはDJセットではなくライブセットで登場するなどお昼帯からの接続を感じさせる。ヘッドライナーが終わった後の体を冷ますようにクラブライクなこの空間へ誘導できる導線はフジロックの醍醐味なのかもしれない。

大学の後輩と連絡を取り、少しご飯を食べた後にIkeda Ryojiを見た。手元のシーケンサーやシンセサイザーを使って即興でノイズを作り出しているのだろうが、白黒の映像がドラッギーに切り替わるVJとシンクロしており、その仕組みの不可解さが人智を超えたパフォーマンスに見えた原因だったのだろうか。観客を置いていくノイズ/ドローン/グリッチサウンドの名手というイメージだったが意外にも踊らせるアレンジが組み込まれていて、ノイズが素直に四つ打ちのバスドラのように鳴らされる瞬間もありストロークスで熱った体が夜の少し蒸し暑い苗場へ馴らされているような感覚。

vegyn。フランクオーシャンへのトラックの提供で名前を知っていた。フジロックと同日に発売されたトラヴィススコットのアルバムにも参加していた。音源ではチル系のローファイエレクトロニカというイメージを持っていた。もちろんそういったヒーリング的な側面を感じる瞬間はあったが、IDMやドラムンベースと接続するような攻撃的なリズムマシンのビートとシンセの軽やかなタッチで鳴らされる爽やかなメロディー、という電子音楽の歴史で綿々と用いられた組み合わせで真正面から踊れるサウンドを作り出していた。ひたすら好きな音で好きなリズムとメロディーが構築されていく様をビール片手に眺める時間は何物にも変え難い。

overmono。裏ベストアクト、というか観測範囲の盛り上がりとしては最高潮だった。深夜テンションだ。最強のひな壇芸人、裏回しである。ステージも絢爛豪華な雛壇みたいだったし。東野、アンタッチャブル柴田、ケンコバ、overmono。主役が観客だということを理解し、そのテンションを上げることへ徹底的に狙いを定めつつ、適度な裏切りやトリッキーな瞬間を設けながらも最終的にダンスへと昇華させる。程よいチャラさと音のデカさは正義である。EDMのようにシンガロングを煽るのでもなく、ミニマムテクノのようにストイックでもなく、完璧な塩梅でのダンスミュージック。私の負けだ。

EY∃ x COSMIC LAB。もうほとんど記憶になくて、RED MAQUEEの後ろの木陰でぼーっとしながら聴いていたけど、めっちゃ音がデカかったし太鼓の達人コアみたいな曲があってゲラゲラ笑ってた。

雪ささの湯

苗場スキー場から歩いて雪ささの湯という24時間営業の温泉へ行きました。施設自体は東京のモダンな銭湯に慣れすぎて少し古い気がしましたが、泉質が完璧すぎて肌がツルツルになった。

帰路

苗場ー越後湯沢が30分、新幹線1時間、東京から自宅まで45分と気付いたら家についていました。


総括

行く前にSMASHの日高さんの「不便さも楽しんでこそのフジロック」という言葉に少しビビりながら向かったんですが、杞憂でした。雨に降られなかったことはラッキーだったとして、交通面、導線、居心地のよさ、制御と自由のバランス、お客さんの楽しみ方共に肌に合っていて大満足のまま家に着きました。学生生活最後の年にこの場所の魅力を知れて、新たな生活する上でのモチベーションを見つけることが出来て本当に良かったです。


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