第24話 李一族は中国人? それとも韓国人、朝鮮人?

読者のみなさまが興味をお持ちかどうかわかりませんが、ここで一度、ぜひ李一族について紹介させていただきたいと思います。

はじめに、李一族の祖先が、いわゆる土着の日本人(大和民族)でないことを知っている人間は、ごく少数です。一族のほとんど全員が日本人名を使っているため、この「ごく少数」に留まっています。一族のうちで一部の人間は日本人名を使っていませんが、それは国際結婚をした場合に限られています。そのため一族の人間は、わざわざ親しい人間と、それも「祖先が日本人でないこと」を話しても問題のない会話の空気や話題にならない限り、李一族の祖先の出身地の話を出しません。

ここで厄介なのが、この「ごく少数」の人間から必ず尋ねられる、以下の質問です。

「李一族って、中国人? それとも韓国人とか、朝鮮人?」

厄介である理由、それは、祖先の出身地に関して正確に言うと、
「そのどれでもない」
が答えだからです。苗字が「李」であるにもかかわらず、です。

話しやすいこともあり、一族の人間は上記の質問に対して、ほぼ全て以下のような回答をしています。

「来日前は、中国にいた」

これで李一族は中国人となり、無事に上記の「ごく少数」の人たちに問題なく理解してもらえます。

ですが、本題は、ここから。以下、Q&A方式で話を進めます。


Q1: 李一族の祖先は、どこの出身?
A1:少なくとも、辿れる限り昔の祖先まで遡ると、ロシア中部のとある民族にまで辿り着く。時代で言うと、10~11世紀、キリル文字の誕生から間もない頃。そのため正確に言うと、祖先はロシア人というのが、正しい答えとなる。これも、別に不思議なことではない。ロシア連邦は多民族国家であり、アジア人もたくさん住んでいる。このことを考えると、祖先をロシアに持つアジア人が存在することは、自然なことと言える。


Q2: 李一族の祖先は、どんな人たち?
A2: 詳細は不明。しかしロシアのとある民族として共同体を形成しており、そこで農業や狩猟採集、貿易などを営んで生活していた様子。大小どの共同体にも当てはまるが、当時はその共同体内で身分制度があったという話。カッコ内の言葉は、李一族の記録に残されていた文字をアルファベットに変換したもの。
一番上の階級が、「王(Koroll)」。
次に来る階級が、「王族(Korolevskaya Semya)」。
その次の階級が、「貴族(Dvoryanstovor)」。
最下層、かつ大多数の属していた階級が、「市民(Grazhedanine)」。

上記の身分制度の中で、最大権力者は「王」であり、辿れる限り一番昔の王は、「Vladimus」という名前だった。一族の記録には、この「Vladimus」の時代に記録の作成が始まったという記載がある。同時期に、李一族は他の民族と抗争、あるいは融合を活発に行い始めた。そのようにして李一族は大きくなり、様々な文化や風俗を取り込んでいった。


Q3: 李一族は、いつから『李』になったか?
A3: 残された記録によると、15~16世紀頃、日本の室町時代まで遡る。当時一族は明と交易し、中華社会に入り込んだ。このときに、一族は「李」という姓を使い始めた。これ以降、一族の中で他の民族、例えば女真族(現在の満州民族)や朝鮮民族との混血化が進むこととなる。
時代は流れ、明朝末期。李一族の混血化は進んだものの、一族と婚姻した民族はほとんどが漢民族以外。加えて、満州民族が台頭していたこともあり、一族は明を捨て、清の側についた。これが好機となり、李一族は清朝政府の要職に就くこととなった。


Q4: いつ、どうして李一族は来日したか?
A4: 以前アップした、「コトリバコ」の正体に記載の通り、18世紀後半から19世紀前半に一族は来日し、日本社会に入ったと伝えられている。当時の清朝も、上記の明朝と同様に弱体化していたため、一族は新天地を探していた。そこで一族が狙いを定めたのが、日本。かつて壬申・丁酉の倭乱(文禄の役・慶長の役)で、戦争に慣れていなかった朝鮮半島の全土を日本が侵略したことを記録していた一族は、日本に関する調査を開始した。壬申・丁酉の倭乱で日本は最終的に敗退したものの、江戸時代にはヨーロッパ文化とある程度の接触があったおかげもあり(例: 科学技術の伝来)、ある程度の国力を有していたことが判明。
「交易を通じて日本が利益を上げれば、一族が上手く日本社会に入れる」
そう考えた李一族は、いくつかの「手土産」を用意し、来日するに至った。その「手土産」の1つが、第7話で紹介した「族滅器」と思われる。


Q5: 李一族は主に中国語を使っていた?
A5: 来日直前は、中国語。ただし、清にいた時期の李一族は複数の言語を使っていた。大きく分けると、以下の通り。
・満州語と中国語を使っていた一族
・朝鮮語と中国語を使っていた一族
・ロシア語と中国語を使っていた一族
・その他の言語と中国語を使っていた一族(例-その他の言語: モンゴル系の言語、アイヌ語、チベット系の言語)
中華社会に入る前は、キリル文字、もしくは自民族の文字を使って記録を作成していた。こちらの「自民族の文字」に関しては、現在読める者は、ごく少数。


Q6: 李一族がかつて使っていた「自民族の言語」は、どんな言語?
A6: 説明困難。聞いた話を総合すると、一番近いのは、英語、ドイツ語、北欧系の言語。このため「自民族の言語」は、ゲルマン語系と思われる。


Q7: ちなみに、李一族はどんな宗教を信仰しているの?
A7: 無宗教。ただし、来日以前のある時期に自民族の宗教を信仰していたことがある。しかしその自民族の宗教自体も、中華社会に入ってからはあまり熱心には信仰しなくなった。その理由として、迫害を回避することがあったと、一族の記録には記されている。


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