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手紙やメールに添えられた小さなことばに

一人暮らしの叔父が亡くなった時、残された家の片付けに行きました。ふとリビングのテーブルに置いてあった数通の年賀状が目に入りました。何気なく手に取ってめくっていると手書きの文面が目に留まりました。

「お元気ですか? 今年も健やかな一年でありますように」

何でもないひとことで、よくある新年の挨拶です。

叔父は闘病中でした。余命を宣告される中で治療を続けていましたが、暮れに病状が急変し、年始に緊急入院してそのまま病院で亡くなりました。元日は家にいたのでおそらく年賀状には目を通していたと思います。そのあとテーブルに置いたまま入院することになったのでしょう。

病状が悪化する中で叔父は自らの死を覚悟していたようです。12月の初旬に私が訪ねた時にも「年を越すのは無理だと思う」と言っていました。それでも何とか年明けまで持ち堪えました。

年賀状の文面はごく一般的なものです。差し出した人も年始の挨拶として素直な気持ちで書いたのでしょう。叔父の病気のことは知らなかったはずです。その人に非はありません。私も年賀状で同じように書くことはあります。でも年始にその年賀状を読んだ叔父はどのような気持ちだっただろうと考えてしまいました。健やかな一年など自分にはないことを叔父は知っていたと思うからです。

年賀状に限らず手紙やメールに添える小さなことばでも受け取る人にとっては残酷なことばになることもあるということを頭の片隅に置いておきたいと思います。



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