21 学級通信はこんな気持ちで書いています
朝、出席を確認しに教室に向かいます。「親分」(学年主任のM先生は職員室ではそう呼ばれています)と一緒に階段を上ります。2階の教室からコーくんの甲高い声が聞こえてきます。「やめてよー」というカナちゃんの声も聞こえます。「プリント早く出して!」と言っているのは宿題を集めるタエちゃんでしょうか。
階段の途中まで行ったところでチャイムが鳴り始めました。バタバタという音が聞こえます。廊下にいた生徒が教室に駆け込む音です。2階に上がるとまだ廊下に生徒の姿が見えます。「チャイム鳴ったぞ。早く教室入れ!」どすの利いた「親分」の低音が響きます。「早く教室に入りなさい」私も言います。教師になって何度となく繰り返していることばです。ふと、何年も前のことを思い出しました。「早く教室に入りなさい」と言ったつもりで「早くお風呂に入りなさい」と言ってしまったのです。わが子がまだ小さかったころのことです。もちろん生徒には大笑いされてしまいました。
教室に着きます。「おはよう!」と言いながらドアを開けます。学級委員が前に出て前日の会議の連絡をしています。野球部のヤス君は着替えの真っ最中です。朝練に参加していたのです。トモくんとユーくんも着替えています。二人はサッカー部です。バスケ部のヨーコは道具をロッカーにしまい終えたところ。放送委員のクニくんが朝の校内放送を終えて戻ってきました。
私が教卓の前に立つと日直が号令をかけます。「おはようございます」と言って教室を見回します。「欠席の人はいないかな?」「あれっ、アキの席が空いてる。お休みかな?」と思ったら後ろのドアがガラッと開いてアキが入ってきました。2分遅刻です。昨日早退したエリちゃんも今日は元気に登校しています。足を怪我をしているミヤくんも元気そうです。よしよし!テルちゃんは真剣に何か書いています。みっちへの手紙かな? 絵を描いているのはケンタ。誰かの似顔絵のようです。あらっ、サクラダさんが怒ったを顔をしています。隣のユーくんがまた余計なことを言ったのでしょう。そうやってみんなが元気に登校していることを確認します。
中学校は教科担任制。担任がクラスの生徒と過ごす時間は小学校に比べると圧倒的に少ないです。朝と帰りの学活も連絡事項を伝えているうちに終わってしまいます。休み時間も短いでし、放課後は会議が多く、生徒も部活で忙しいです。ゆっくり話す時間はほとんどありません。話したいことは山ほどあるし、聞きたいこともいっぱいあるのですが。そこで始めたのが学級通信です。生徒や保護者に伝えたいこと、私から見た生徒の様子、知ってもらいたいことや考えてもらいたいことなど様々なことを素直に書いています。支障のない範囲で個人名も出しています。
筆者は私なので私個人の考えがそこかしこに現れます。ひとりよがりに陥っていることや間違っているいことも少なくないと思います。でも正直に書いています。「間違っていると思ったら遠慮なく言ってね」生徒にはそう伝えていますし、同感だと感じたらそれも伝えてほしいと言っています。意見や感想も大歓迎。反論ももちろん歓迎します。学級通信がコミュニケーションの手段になればこれほどうれしいことはありませんし、そうしたいと思っていました。
学級通信を書いていると一人一人の生徒の顔が浮かんできます。クラスの出来事も浮かんできます。私にとっては大事なリフレクションの時間です。だから書き続けられたのだと思います。
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