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29 親子の考えが違う:三者面談を前に保護者に伝えたいこと 

近隣の中学校の前を通りかかったら男子生徒と母親らしき女性が並んで正門を入っていきました。「三者面談かな?」と思いました。暮れのこの時期は多くの中学校で三者面談が行われ、進路に向けた相談がなされます。私も何年も前のことを思い出しました。

2学期末のテストが終わりほっと一息つく生徒たち。でも中学3年生は大変です。これから大変な「冬」を越さなければ彼らの「春」は訪れないからです。受験生にとっての春とはそんなイメージではないでしょうか。生徒たちは複雑な気持ちだと思います。テストの結果が進路に大きく影響するからです。採点された答案は間を置かずに返却されます。先生たちも進路相談に向けて成績を早めに出さねばなりません。たいていはテスト終了後2日か3日でほとんどが返されます。生徒たちはそれなりに(いろいろなな解釈が可能な便利なことば!)頑張ったと思いますが結果はいろいろです。受け取った答案用紙を見て「うあー!」とか「ギャー!」などと叫んでいる生徒がいました。「お母さんに怒られちゃう!」と言う女子生徒もいました。

私は、そのあと行われる三者面談に向けて親子でしっかり話し合ってほしいと学級通信で保護者にお願いしました。生徒はほぼ全員が進学希望です。保護者もそれを当たり前に思っているようです。最近は進学以外の道を希望する生徒はほとんどいません。もちろんゼロではありませんが。私が保護者にお願いするのは、たとえ進学を希望するのだとしても「なぜ進学したいのか」「なぜその学校を選ぶのか」「何のためにその学校に行くのか」「その学校で何をしたいのか」さらに「将来はどんな道を歩みたいのか」と人生の長いスパンを思い描きながら親子でしっかり話し合ってほしいということです。そんなこと今ここで話したってしょうがないと思う人がいるかもしれません。でも必要ないと思ってもとにかく話してほしかったのです。口にしてほしかったのです。話をすることで生徒と保護者の考えのずれが減るでしょうし、目先の進路ではなくこの先の長い人生を考えた進路設計に思いが向くのではないかと思ったからです。そして三者面談の日には親子共に納得した進路希望を提示してほしいとお願いしました。

そのようなお願いをするのには、生徒と面談をしている中で気になることがあったからです。私は2学期の中間テストが終わったあたりから生徒たちと面談をしてきました。生徒が希望すれば何度でも面談します。その都度「家の人とよく相談してきてね」と言うのですが、次の面談で確認すると「家の人とは話していない」と言う生徒が少なくありませんでした。理由を聞くと「何となく言い出しにくい」とか「けんかになってしまう」「親は私の意見を聞いてくれない」などと言います。中には「親は頑張れば大丈夫と言うけれど私はもう限界です」と言って涙ぐむ生徒もいました。

私は生徒たちに合否の可能性については率直に伝えていました。もちろん入試はまだ先ですし、試験の結果はやってみなければわかりません。でも当時の入試制度では入試の結果を待たなくてもある程度の予想はつきました。合否の割合はかなりはっきりしていました。だからそれを伝えた上で進路を考えてほしいと言いました。中には可能性がほとんどない進路先に固執する生徒もいますし、それが保護者の希望であることもあります。私ももちろん励ますことは多いですが、現実は現実としてしっかり受け止めてもらう必要もあります。希望通りに行かないこともあり、「やればできる」が非現実的であることも少なくありません。そんな難しい自分の進路のことですから保護者と話しにくいという生徒の気持ちはよくわかります。だから保護者には生徒に寄り添って話しをしてほしいと思いました。進路先の決定には保護者の同意が必要です。それゆえ保護者の考えも確認しながら生徒とは面談していました。

成績が出そろったら三者面談が始まります。その前に必要な生徒には再度面談を行い、三者面談は志望校を「確認する」場と考えています。本人、保護者、教師のだれもが納得し、「頑張れ!」と本人の肩を押してあげる場にしたいと思っています。間違っても親子で意見がかみ合わず、担任の前でもめるような事態にならないことを願いながら私は師走の中で三者面談の準備を進めました。

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