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「交流分析、ゲシュタルト療法、そして再決断療法」を受講して   2022/5/22 室城隆之先生

2022年5月22日(日)13;00~16:00 関東支部研修会「交流分析、ゲシュタルト療法、そして再決断療法」の理論講座が開催されました。

 講師は、江戸川大学教授 室城隆之先生です。室城先生は、「日本TA協会会長」「日本ゲシュタルト療法学会前理事長」であり、ご自分の生き方にも「交流分析とゲシュタルト療法」を取り入れ、心理師・再決断療法士としても「再決断療法」を深めていらっしゃいます。

 今回も、先生の穏やかな語り口から講座が始まりました。

 再決断療法とは、今は大人になっているクライエントが、小さな子どもの時にした『早期決断』を、ワークの中で「子ども」の自我状態にあるときに、やり直す(再決断)ものです。
 これを、「再決断療法」が誕生した背景(エリック・バーンとフリッツ・パールズ、そして創始者であるロバート・グールディングの関係性)や再決断療法の基礎理論の説明、さらに実践(デモストレーション・ワーク)をとおして具体的に教えてくださいました。

 ここからは、私が理解した内容を室城先生の資料を元に簡単にお伝えします。

1.基礎理論
(1)交流分析
・4つの主要理論(自我状態モデル、やりとり分析、ゲーム分析、脚本分析)と5つの基本概念(ストローク、時間の構造化、人生の立場、値引き、ラケット)の中から、「自我状態モデル(構造分析)」と「脚本分析」を中心に説明がありました。

・私たちは「瞬時」に過去の体験を繰り返します(「親」の自我状態、「子ども」の自我状態)が、それが「今、ここ」に不適切な場合は心の悩みや問題の原因になります。これが構造上の病理となり「成人」の自我状態の「汚染」を起こします。この「汚染解除」(「成人」の自我状態の機能回復)がTAの目標の一つです。

・脚本は、まだ親(大人)の助けなしには生きていけない存在である子ども(幼児)が、親との関わりの中で生き延びるために身に着けた感情、思考、行動のパターンです。

・脚本形成プロセスでは、親からの「言語的・非言語的メッセージ」がC2の中のA1→P1 →C1→A1という流れで入り「早期決断」をします。この脚本は「自分を守るために身に着けたパターン」なので、不都合があってもそれ以外は不安なので繰り返すのです。

(2)ゲシュタルト療法
・ロバート・グールディングは、頭で理解していても「脚本を形成した時の身体感覚や感情体験を解決しなければ変化はしない」事に気づきました。そこで、ゲシュタルト療法によって身体感覚や感情体験を扱うと変化に繋がると考えました。

・ゲシュタルト療法の哲学とTAの哲学は共通している部分が多く、「あるがままの現実存在としての人間」とそのような人間同士のかかわりを重視します。

・ゲシュタルト療法の基礎理論に「図」と「地」があります。その時の自分にとって意味のあるものは「図」となり、それ以外のものは「地」となります。この「図」は気づいて欲求が満たされたときに「地」となり、また別のものが「図」となります(気づきのサイクル=自己調整機能)。

・しかし、「小さい子どもは、家族に育ててもらえなければ生きていけない→家族やその時の人間関係が「図」となる→欲求があっても怒られるから言わない・感じないようにする(「地」に押し込める)→自然な気づきのサイクルが回らない。

・抑圧された欲求は「未完結(未完了)」となり、心や身体に影響を与え、葛藤や病理を生みます。パールズはこれを「凍りついた炎」と呼びました。

・「気づきの3領域」には①外層の気づき(現実世界)②内層の気づき(身体)③中間層の気づき(思考)があります。中間層の気づきは「今、ここ」ではなく、頭の中の作業です。そのため、中間層にとどまると内界と外界のコンタクトを妨げることになり、本当の欲求を完了できず、未完了な事柄ができます。

・ゲシュタルトでは「実存は本質に先立つ」=「今、ここの体験こそが現実である」→自分が今、感じている体験以外に真実はないとし「今、ここ」での気づきを重視します。

・クライエントの問題は、過去に「完結」していない欲求や感情体験へのとらわれから起きるものと考え、気づき、コンタクトにより人格の統合へ向かうことを援助します。

(3)再決断療法
①契約「今、ここで、何を変えたいか」
クライエント自身が、自分の中に力があることを実感する。

②問題となる場面を再現する
可能であれば、少しずつ遡り、幼児期の場面へと導く。

③再決断への準備
早期決断の際の状況を理解し、その時点では賢いやりかただったが、それが現実の問題を引き起こしていることを確認し、変えたいと望めば、再決断ワークに入る。

④ワークをする
子どもの頃に言えなかったことを、今ここで実行することを援助する。

保護的な状況を創り出し、FCを活性化し、健康なFC+Aで再決断する。
変化をキャッチし、ストロークする。

⑤アンカリング(新しい決断を強化する計画)

現実の問題に戻って、これまで行き詰まりを感じていた場面で、どう行動するかを語る。

2.デモストレーション・ワーク
※通常は「集団療法」として、グループワークの形で行われます。今回は個人ワークでした。

〈個人的に感じたこと〉
・幼いころのご自分の心(感情)を具体的に、そして率直に表現されていました。

・どんなに寂しくて、心細かったんだろうと想像し、心が痛くなりました。そして、怒りを押し込めていくプロセスをリアルに一緒に体験させていただきました。

・エンプティチェアを使って、行き来しながら、その頃に本当に言いたかったことを言葉に出来たとき、私も肩の力が抜けてスッキリしました。未完了が完結したように感じました。

・最後に、今の自分を応援する言葉が自然に出てきて、本当に素晴らしいと思いました。

3,本日の感想
私は、心理師として日々学校や就労支援施設などでいろいろな方々のお話をお聴きしています。心が辛い、生きづらいと感じている方は、多くが自分の本当の感情を押し込めたり、諦めたり、現実から離れたりしていると感じます。けれども、「本当はどうしたい…」が見えてきたとき、表情が明るくなり、エネルギーがわいてくるのを目の当たりにします。

再決断療法は、TAの理論とゲシュタルトの感性で「本当の自分と出会うことができる」ところが素晴らしいと感じています。今日も先生の温かさが、さらに勇気をくださいました。

室城先生、ワークのクライエントをしてくださった方、そして研修部会の皆様、参加された皆様、貴重なお時間を共有させていただき、本当にありがとうございました。

(交流分析士インストラクター 土井 敦子)

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