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「人格適応論の深耕」を受講して2021/11/13.14 鈴木佳子先生

今回、鈴木佳子先生の「人格適応論の深耕」特別セミナーに参加させていただきました。

セミナーの冒頭、本講座直前の11/4に日本における交流分析の第一人者でいらっしゃる繁田千恵先生がお亡くなりになった旨、鈴木先生からお知らせがあり、参加者全員にて感謝の気持ちを込めて黙祷を捧げました。鈴木先生はじめ、参加者の皆様,それぞれの想いで繁田先生との想い出に触れていました。私自身は7~8年前、日本産業カウンセラー協会主催の講座にて繁田先生の講義に参加する機会があり、その溢れ出る存在感と厳しくも優しいお人柄に触れる機会をいただきました。その講座が実は「人格適応論」だったのです。その後、2年前に関東支部主催の鈴木先生による「人格適応論、中級編」に参加し、実践のための具体的手法を教えていただきました。以上のとおり、私の人格適応論との出会いと深耕は、繁田千恵先生と鈴木佳子先生、お二人によるもので、そういう意味でも感慨深いセミナーとなりました。謹んで繁田千恵先生のご冥福を心よりお祈りいたします。

以下、本講座の内容と感想を述べさせていただきます。

今回の講座は通常の講座とは異なり、講義に入る前に人格適応論に関して参加者それぞれの疑問点や知りたいことをすべて鈴木先生に伝え、その上で鈴木先生が講義の組み立てを考え、講義の進行中に参加者全員の疑問点や知りたいことに触れていただくという新しいスタイルで実施されました。全体の構成としては以下の3つのパートに分けて進行されました。

1. 人生脚本と人格適応論の目的・効果
 交流分析の目指す自律性の獲得(脚本の書き換え)、人格適応論の意義・目的と活用の効果について、鈴木先生の臨床体験に基づく    考え方や見方を交えて解説いただきました。

2. 鈴木先生の論文の解説と検討
 実際にあった一つの悲劇的な事件を題材に、その事件に対する鈴木先生の想いと社会全体に対する問題提起が述べられた論文でした。その事件の仮説検証としてラケット・システムと人格適応論を活用し、どのような見立てが可能だったか、またどのようなアプローチ、介入が必要であったのか、鈴木先生の臨床家としてのこの事件に対する複雑な想いも交えて具体的に丁寧に解説いただきました。特に命に係わるケースにおける介入の必要性と現実の困難さについては深く考えさせられる内容のものでした。

3. 人生の立場(他人との壁、自己意識の壁)
 人格適応論における人生の立場の理論に他人との壁、自己意識の壁と2重の壁があり、立場ごとにその2重の壁がどのような状態になっ ているのか、丁寧に解説いただきました。

 上記の3つのパートの中で、参加者全員の疑問点や詳しく知りたいことを鈴木先生が惜しみなく丁寧に説明してくださいました。特に2日目においては、さらにそこから鈴木先生と参加者とのセッションがはじまり、さまざまな考えや想いが場に溢れ出してきました。その内容は「人格適応論の深耕」に留まらず、「交流分析の深耕」あるいは「臨床家としての深耕」と言っても過言ではない「親密」なセミナーであったと断言できます。もちろん人格適応論の詳しい知識として得たものも多々ありますが、それ以上にこの「親密」な意見交換すべてがセミナーで得た体験的気づきであり、しばらくの間、この体験をじっくり味わってみたいと思っています。

そして、これからも人格適応論を私なりに実生活で実践し、その中で今回の気づきによって、どのような見立てとアプローチに変化があるのか検証していきたいと思っています。特に個性としてどのように他者を理解し、どのようにその人と接していくことができるのか、①6つのタイプのどれかに当て込むではなく、エゴグラムのように強弱が変化するタイプとして捉えてみること、②各タイプの肯定的側面にも目を向け、自分の肯定的側面を生かすこと、さらに自分自身にない他者の特性を取り入れてみること、③根っこにあるタイプを理解し、それがどのタイプであったとしても生きていく上でその人にとっては必要だった適応スタイルであったことを忘れず、その適応スタイルを大切に尊重すること、④自他共にオンリーワンの人生であることを尊重し、そのうえで未来に向けて「今ここ」自分はどのようにその人と関わっていきたいのかを深く考えること、そしてあらためてではありますが、⑤命の尊さを忘れず、もっと柔軟に、もっと深く人格適応論を活用していきます。「私は好きに生きればいい、他人は変えられない、他人も好きに生きればいい」、その上で「私はその人とどのように関わっていくのか」、鈴木先生の信条を私も実践の中で大切にしていきたいと強く感じました。

このように思えたのも、鈴木先生の明るく優しいお人柄と情熱に溢れた丁寧な講義だったからだと思います。鈴木先生の「臨床家」として、「交流分析士」としての存在そのものがセミナーの場にあったからこそ素直に取り入れたいと思えたのだと。また参加者の方も経験豊かなベテランの方から私のようなビギナーまで幅広く、臨床家だけでなく、さまざまな分野で活躍なさっている方がいらっしゃったことから貴重な意見交換ができたことも大きかったと思います。

セミナーの最後の感想では、「また、鈴木先生とこのようなセミナーでお会いしたい」と強く熱望する意見が多々ありましたが、是非とも来年もこのようなセミナーを実施していただけるよう主催スタッフの皆様にお願い申し上げます。

 最後になりましたが、このようなセミナーにチャレンジしてくださった鈴木先生はじめ主催スタッフの皆様に深く感謝いたします
(交流分析士インストラクター 上村健一郎)

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