音楽につつまれる午後のこと

友達の弾くピアノを聴くのが好きだった。好きな子が、自分の楽しいことをしている瞬間を見るのが好きだった。
オーケストラを聴きたいわけじゃない、ただ上手い人のピアノを聴きたいわけじゃない。
自分にだけ向けて弾いてくれるのがうれしい、誰にも見せないその姿を自分に魅せてくれることがすき。

大きなホールで演奏を聴きたいんじゃない、煌びやかな衣装を来て演奏するのを見たいんじゃない。
ただ午後に、ただ音楽室で、ありふれたような時間にピアノの練習をするあなたが好き。

途中でとまりながらも、優しく鍵盤を叩くその指が好き。その時間、その音につつまれていたいだけ。

ピアノが奏でるミルクのような音色は、やさしい世界をつくりなおした。

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