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文字通り「ノータリン」になった話part3

医「〇〇さん、起きてくださ~い。」
そう聞こえて目が覚めた。
医「これから記憶や視覚を司る部分を少しずつ削っていくので、目の前に出されたカードに描かれている絵や色を答えていって下さいね~。」
私「はーい(簡単すぎるわw)」
医「これは何に見えますか~?」
私「これは・・・アレです。・・・えっと、何だっけ?」
医「少し削りすぎたので戻しますね。」
私(え、もど、えっ?)
医「これは何色で書かれた字か分かりますか~?」
私「(キッパリと)灰色です。」
医「赤ですね~。もう少し戻します~。」
私(え?)

記憶が戻ったり、言葉が出なくなったり、モノトーンにしか見えなくなったりでパニくったけど、その時はその感情すらも湧かなくなっていた。
手足は痺れまくってるし、頭の中を弄くられてるような気もする(実際弄くられてる)し、頭部は固定具で全く動かない。

悔しくて泣きそうな中で、ふと聞こえてきたのは私の持ってきたCD。
やっぱりBlues Brothersは最高だな・・・ん?
そのCDは裏面が汚れていたのか音が飛びまくっていた!
本当に執刀医さんたちに申し訳ない気持ちでいっぱいになったが、言語脳が弄くられていたからか「音楽止めてください」とも言えなかった・・・。

それからも寝たり起きたりを繰り返し、手術が終わったのは真夜中。
(数時間で終わるんじゃ・・・?)
何が原因だったか忘れたけど、なんと13時間を超える長時間の手術で、その病院でも記録に残る程だと執刀医さんが言っていた。

夜中なのに、術後に妻が心配そう声をかけてくれたのを覚えている。
後から妻に聞いたら、私に必要ものを買いつつ、待合室でずっと待っていてくれたんだとか。
本当に感謝しかない。

薄れゆく意識の中で(やっとゆっくり寝られる・・・)
って思うでしょ?

ベッドのままMRIに担ぎ込まれ、分厚い包帯でグルグル巻きにされた頭を無理やり機械に固定され、塞ぐことのできない耳元での爆音は本当に耐え切れずに思わず身をよじってしまい、「動かないで!」と怒られ、涙を堪え、歯を食いしばりながら何とか耐えた。

その後、集中治療室で四肢をベッドに繋がれ、寝ることもできずに朝が来るのを待った。
予定ではそのまま集中治療室から解放されるはずだったが、
担当医の一言「もう1日ここにいようか。」で地獄は一日延長した。

翌日、集中治療室から解放された。
「これからは幸せな時間を生きよう。これ以上、辛い経験はもう無い!」

(そんなふうに考えていた時期が俺にもありました)


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