友達100人いる女

古くからの知り合いに非常に友人が多い人がいる。
何故敢えて「知り合い」と書いたかというと
私側は彼女と会うとこっちから聞かずとも一方的に近況を含め自分の話を延々とするので彼女の事はよく知っている。
しかし私が話し始めると露骨につまらなそうな顔をするのでほとんど話さない なので彼女は私の事をほぼ知らないと思う。
子供の頃からの付き合いにもかかわらず私の家族構成すら知らないと思う。
それは友達だとは到底思えないからだ。

あるとき私は彼女の結婚パーティに別の友人にほぼ無理やり誘われて余興でバンド演奏をやった。
それはまぁ仕方ないとして私がその時に気になったのが
出席者が200人以上(凄い!)
そして会費が1万円 
会場はとあるパーティールームのような簡素な所
飲食は軽食に毛が生えたようなカラオケボックスで出るようなクオリティの立食形式のバイキング。
おそらく料理は全員に行き渡らなかったであろう。開始早々に食べ物がなくなり私はといえば余興の準備で忙しく口にできたものはコップ一杯のお冷のみ。
余興で使う音響機材等は全て我々の持ち込み。
こういった業界のことは分からないが、どう見積もっても会場費含め数十万円といった所か。
前述したように結婚パーティなので当日の昼間に彼女は別で披露宴もやっている。
なので私が出席したのはいわゆる二次会である。
要するに彼女たち夫婦はこの二次会で相当な金額の利益をあげているのだ。
挙句のはてには「こんなに沢山の人に祝福してもらえて私は幸せです!」
と涙ながらに語る(笑)
しかもつられて泣く者まで出る始末。
「自分の結婚にカコつけて友人から金巻きあげているのにそれを見て感動して泣けるなんてもはやカルト宗教だな、どうかしてるぜコイツら・・・。」
ことわっておくが彼女はタレントやアイドルではない。
自分の夢探しと称し職を転々とし、仕事が見つからない間は実家の事業の手伝いをしてそれなりの給料と住むところを与えてもらっている只の一般人である。
しかし彼女は決して美人とは言えないが人懐っこい笑顔でお人好しを取り込む特殊能力で大人数を集め結婚という一大興行を成功させたのだ。

その薄っぺらい感動のセレモニーを背に私は何人かで友人の車に機材を積み込み3次会の出席を遠慮させていただいた後、電車で帰路についた。

家に着き妻に「案の定疲れた顔してるねwお疲れ様」と労いの言葉をかけてもらい、晩御飯を食べていないので妻が
食べた晩御飯の残り物を食べながら妻に「自分の他にもしらけた気分で帰った人とかいるのかな?」と聞くと「あんたが気にすることではない!早く忘れろ!」と言われ「そうできるように努力するよ」と返し、奇妙な一日を終えた。

後日その彼女から連絡があり「余興をしてくれた皆にお礼がしたい!集まろう」との事で、気は進まないが一人だけいかないのも何だし卑しくもお礼の品が何だろうと欲がでてしまい集合場所の某居酒屋に行った。
彼女から「ホントに感動した!私は素晴らしい友達に恵まれた!」などの言葉をもらいお礼の品を受け取った。
お礼の品はというと、彼女が絵が得意な友人に描いてもらったというメモ用紙に色鉛筆で描かれた我々余興軍団の似顔絵だった・・・。
素人丸出しの微妙な似顔絵・・・甘かった・・・こんな人間どうやったって敵わない!
まぁこっちは彼女にしてみれば1/200の存在なんだもんな・・・。
似顔絵・・・上等な戦利品じゃないか。

ちなみに居酒屋の会計は割り勘だったことはいうまでもない。




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