美女と野獣夫婦の馴れ初めから離婚まで

タイトルは私の両親のことである。

出会った頃二人は、同じ雑居ビルの違う飲食店で働いていた。

母が重たいビール瓶のケースを一人で持ち上げて運んでいたのを見て、「力持ちだな〜」と父は
思ったそうだ。母は美人で痩せていたので、よほどインパクトがあったのだろう。

母からは父の第一印象を聞いたことがない。

そこからどうやって近づいたのかも聞いたことがないが、とにかく、父が母のアパートに転がり込んで同棲を開始したのだった。

母は中卒だったが、父は高卒だった。公立高校を卒業するにも奨学金を借りていて、母が代わりに返済していたのだそうだ。なぜなのかは不思議なのだが、父は母のアパートに転がり込んで、生活費もろくに渡さなかったのだと母は言う。浮気をしたり、色々遊ぶのに自分の給料を使っていた。よく追い出さなかったものだ。

母に「あんな(私にそっくりな)ブ男のどこが良かったの?」と訊いたことがあったのだが、母は黙って苦虫を噛み潰した顔をしただけであった。

そんな酷い状況下の中で、妊娠してしまった。そして結婚するしかなくなってしまった。

籍を入れて、お腹を隠して結婚式を挙げた。結婚式の費用も母が出したらしい。そこまでして母は結婚式をしたかったのか。しかし、私が生まれる前に、既に父は浮気相手の部屋から帰ってこなくなっていた。

私が生まれてからは、私達親子が住んでいるアパートの窓に、浮気相手が石を投げ込んできのだという。それでさすがの母も離婚せざるを得なくなった。

離婚調停は難航した。父が私の親権を主張してゴネたからだ。馬鹿じゃないかと思う。

大人になった私に父は言った。「調停室でお前が泣いてたよ。覚えてないか?」 
父よ、あなた達が離婚した時、私は1歳にもなってなかったのですよ。覚えているわけ無いでしょう?
「俺、自分がいつの間に結婚して、いつの間に子供が生まれて、いつの間に離婚したのか覚えてない」とも言っていた。全くその通りだったのだな。


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