74 矛盾にぶつかったら解脱するべきという概念がわかる

 お釈迦さまはあえて矛盾を入れてあげるんです。あえて矛盾を入れるのだと知っているから、命令調で「やるなかれ」とは言わないんです。ただ、「やってはならないんだよ」と戒めることで、本人にちょっと自由を与えてあげているんです。たとえ個人で肉・魚を食べないということにしたとしても、ジャガイモやキャベツを食べているでしょうに。お米を食べているでしょうに。それも結局、生きているものでしょう。石は食べられないし、砂は食べられない。とにかく栄養になるものはぜんぶ、なんらかの形で命なんです。魚を捕って食べたら、それは自然破壊でしょう。ジャガイモがせっかく自分で芋を作ったのは自分のためであって、人間はそれを奪っているんでしょう。だから自然を守るといっても、そちらにはまたすごく極限的な矛盾があるんですね。べつに個人個人がわざと悪いことをしているわけではありません。これははめられているんです。だから「輪廻」という単語を使っていますよ。「輪廻にはめられているんだ」と。すべての生命は輪廻という刑務所に閉じ込められているんです。われわれは刑務所で拷問されて、あちこちやられて、それで怒ってやり返したりする。そういう繰り返しにはめられているのだから、自然を正当化するのでも、命を賛嘆するのでもなく、とにかく輪廻を脱出しなさいよと。
『一瞬で心を磨くブッダの教え』第2章 仏教の教えを理解する《仏教》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【ブッダの歩き方 立松和平氏との共著 (2006年) p226】

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